深刻化する地球温暖化により、世界的に温室効果ガスの排出量の大幅な削減が求められている。日本は2030年度の温室効果ガス排出量を46%(2013年度比)削減することを目指し、中でも家庭部門については66%削減することを目安と設定している。(環境省「地球温暖化対策計画」より)。戸建住宅のCO2排出量の内訳をみてみると、約66%(※1)が電気の使用によるものとなっている。クリーンなエネルギーを賢く使い、可能な限りCO2を出さない暮らしをすることは、地球に暮らす人類全体の課題といえるだろう。日々の暮らしにも持続可能性への配慮が求められる時代——。
セキスイハイムでは、「家ができるまで」、「実際に住んでいる間」、そして「住み終えた後」までのすべての段階で、住まいにおける環境課題に挑み、独自の循環型の仕組みを構築している。住むことで地球環境問題の解決に貢献できるセキスイハイムの「環境に良い家」の答えは、最大の特長である「工場生産」を生かした循環型モデルに凝縮されていた。
※1:
※2:再生可能エネルギー指定の非化石証書の使用による実質再生可能エネルギーを含む。
数ある住宅メーカーのなかで、セキスイハイムの家づくりを特徴づけるのはなんといっても「ユニット工法」といえるだろう。建物をいくつかの「ユニット(箱)」に分け、ユニットごとに工場で大半を生産してから建築現場で組み上げる建築手法だ。
考案されたのは、1960年代。日本は戦後の経済成長に伴い都市部が急激に拡大しており、人口が流入して住宅需要が高まる一方、資材や職人不足が大きな課題となっていた。
「もっと早くできて、かつ安全で安心な住宅をつくれないだろうか——」。ユニット工法は、時代の要請を見抜き、ニーズに合わせて常に進化を続けようとするセキスイハイムの基本姿勢から、当時東京大学大学院で“部品化住宅論”を研究していた大野勝彦氏とともに開発された。
工場内で工程ごとに専門の機械と技術を用い、作業員の目と手でチェックされる住宅の各部は、緻密で品質にバラつきが少なく、設計性能通りに作ることができる。さらに屋外の現場で天候に左右されることが少ないため、資材の歪みや劣化などのリスクを減らし、高品質な家をつくることができるのが、ユニット工法のメリットだ。効率よく生産ができるため、廃材が少ない点も資源不足が叫ばれている現代で魅力といえる。
積水化学 住宅カンパニー 技術・CS統括部 技術部長 岡本雄一郎さん
技術・CS統括部の岡本雄一郎さんは、「セキスイハイムの開発当初から、生産部門においても工場の機械や技術はずっと進化しており、生産効率なども上がっていますが、“設計性能通りの家を、より効率的につくる”という基本的な考え方は、現在にも脈々と受け継がれていると感じています。建築現場へのユニット輸送においても効率的に行えるよう工夫しています。社会に求められるCO2排出量低減や働き方改革にも対応しやすい仕組みです」と話す。
家には数多くの部材が使われると言われている。一般の家づくりでは、これら部材を直接、建築現場に輸送しなければならない。工場で住まいづくりの大半を生産し、それを工場から建築現場に一度で運んでしまうセキスイハイムではその輸送というプロセスを効率化することができるのだ。
2023年には「セキスイハイム」の生産工場(国内全10工場)の全消費電力を、再生可能エネルギー(再エネ)および再エネ指定の非化石証書の使用による実質再エネ由来の電力に転換した。
「実質再エネ100%」の電力を活用する生産工場と、廃材を減らす生産効率、そして効率的な輸送によるCO2排出削減という生産から輸送までのプロセス全体を社会課題に即して見直し、改善を続けてきた。それが同社の掲げる「顧客価値」と「事業価値」の両立によるESG経営の推進につながっている。
住めば住むほどCO2排出量を削減できる住宅
生産革新統括部の伊藤潤さんは、「工場による生産技術を生かすことで、高精度な断熱性や気密性を確保することができます。例えば、工場生産だからこそパーツごとにあわせた断熱材の種類やサイズを多数用意し、部位ごとに適切なものを採用することができます」と、部材への細かな配慮と仕様によってかなえられる家の省エネ性能についても教えてくれた。日本における年間CO2排出量の約15%は住まいでの生活から排出される。セキスイハイムの住宅でそれをゼロ以下にすることを目指している同社にとって、エネルギー消費を抑える断熱性と気密性の確保は必須の取り組み事項でもある。
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セキスイハイム工業(株)本社 生産革新統括部 担当課長 伊藤潤さん
さらに、住まいにも早くから太陽光発電システム(PV)の設置を促進し、住宅と再エネとの融合を図ってきた。セキスイハイムグループのPV搭載住宅は、2024年3月末で累計24万棟(※3)に達し、そこから得られたデータとノウハウがさらにイノベーションを起こす好循環につながっている。
昼間の太陽光で発電した電力を蓄電池にため、必要な時に使用できる蓄電池システム(※4)も構築した。できるだけ電気を買わない暮らしは、光熱費を抑えるだけでなく、災害への備えにもなる先進住宅のモデルとなっている。
※3:2024年3月末時点 累計建設棟数推移(自社調べ)セキスイハイムHPより
※4:蓄電池の残量によっては使用できません。災害時(停電時)の電力使用には制限があります。
住んだ後も住まいを大切に循環させるモデルを構築
住まいの持続可能性を高めるために、2020年には、住宅の買取再販ブランド「Be ハイム」を立ち上げた。近年、空き家問題は深刻化の一途をたどっている。総務省が発表した住宅・土地統計調査によれば、2023年10月時点で国内の空き家数は900万戸に達し、2018年の前回調査から約51万戸増加した。これは調査開始以来、最多の数である。このような状況を受け、2023年12月には空き家の活用促進と適切な管理を目的として改正空家法が施行された。
そもそも家を廃棄することも、CO2排出につながる。それを防ぐためにも、資源を大切にするためにも、長く使うことが重要となる。
空き家になる前にストック住宅(既存住宅)として市場に循環させ、「住み継ぐ」という視点が求められる。しかし、住み手もライフスタイルが変化し、住まいへのニーズは変わっていく。これまではこのニーズを満たすため、建てては壊しというスクラップアンドビルドが繰り返されてきた。それを変える取り組みがBeハイムだ。
Beハイムは、既存のセキスイハイムをオーナーから買い取り、スマート性能の強化をはじめとするリノベーションを施して新たな価値を付加(アップサイクル)して再販する取り組みだ(※5)。耐久性の高い構造体と、「住まいの健康状態」が新たな買い手にも「見える化」されるのが特徴。セキスイハイムグループとして、つくった住まいを無駄にせず、次世代へと引き継いでいく「循環」型の会社となることを目指す。
※5:販売状況等の事情により、建物を解体しての土地販売や、リノベーションを施さない現状有姿での仲介取引等に予告なく変更する場合があります。
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つくる、住まう、住み続ける。
セキスイハイムが目指すのは、住まいを通じて持続可能な未来を築くことだ。住む人の安心や快適さを追求するだけでなく、地球環境への配慮を考えた住まいづくりを行うことで、家そのものが環境問題の解決に貢献できる存在となる。そこには「家一生」という考え方が根付いている。
一度建てた住まいをより長く愛し、使い続け、そして次の世代へと受け継いでいくことで、より多くの価値を生み出していく。それは、単なる家づくりを超えた「循環」を社会に提案する挑戦だ。その挑戦はこれからも続いていく。
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