一度激減したタクシードライバーが増えてきた! 利用者には喜ばしい半面「経済不安」の現れという側面もアリ

2024.05.20 06:20
この記事をまとめると
■タクシードライバーが最近増えている
■かつてはトラックドライバーがタクシードライバーになるパターンが多かった
■タクシードライバーの増加の背景には不景気による会社の倒産が関係している可能性がある
最近になって新人のタクシードライバーが増えてきた
  様子をうかがう意味もあり、自宅へタクシーを呼んで利用することがよくある。けっして裕福というわけでもないが、「実地調査もかねるのだから……」と自分にいい聞かせている。そのためもあり、顔なじみの運転士さんもでき、その運転士さんのタクシーに乗ったときには雑談を混ぜながらいろいろとタクシーの運行現場についての生の声を拾っている。
  しかし、最近は見慣れない新人の運転士さんのタクシーが迎えにきてくれることが多くなった。東京都心部ほどは稼ぐことはできないが、それでも最近は新規でタクシー運転士を志す人が増えているようだ。
  直近でタクシーを呼ぶと、やはり見慣れない運転士さんが迎えにきてくれた。行き先を告げるとタクシーは発車したのだが、目的地とは反対の方角に向かい始めた。運転士さんにもう一度行き先を告げてもピンときていない様子。仕方がないので、筆者が道順を指示し、あとは道なりに進むだけという場所まで案内することとなった。
  その運転士さんいわく、「じつはこの辺りを運転するのが20年ぶりで、あまりにも運転していて見える風景が変わっているのでよくわからないのです」と語ってくれた。筆者の居住地域ではタクシー運転士になるときに、地理試験はそもそも必要なかった。新人として乗務するときに先輩が同乗し、ポイントを教えたあと独り立ちするのが一般的となっている。
  よその土地からやってきてタクシー運転士になるというケースは少なく、地元の人が運転士となるケースが多いので、事業者が手取り足取り地理に関して教える必要もないといえる。あとは実際に独り立ちしてから乗客に教えてもらいながら覚えることになる。
タクシードライバーの増減は景気の指針
  前出の運転士さんいわく、「少し離れていたところにある異業種で働いていたのですが、そこがダメになってしまい運転士をやることになりました」という発言が気になった。筆者は2024年問題で稼ぎが減ることに不安を覚えるトラック運転士がタクシー運転士に転職するケースが多いとは聞いていた。
  テレビニュースでは大手企業を中心に賃上げが積極的に行われていると報じているが、円安に歯止めがきかない状況が続いている。株価も1300円以上下げたといったニュースが流れた日もあった。
  つまり、賃上げが一部で進んでいるとはいえ、諸物価高騰はいまも進んでおり、不安定な経済状況になっているのである。そして極端な円安なども手伝い、中小企業の倒産件数がかなりの数にのぼっているとのこと。ある報道では2024年の倒産件数がこのままのペースで行くと1万件を超す勢いとなっており、11年ぶりのペースと報じている。
  インバウンド(訪日外国人旅行者)がコロナ禍前を超える人数になったとしているが、働き手不足で客室稼働率を抑えざるを得ないなか、光熱費などのコスト上昇もあり、宿泊や飲食業といったところも十分その恩恵を授かっていないと報じている。
  いまどきは単に景気がいいとか悪いとかではなく、働き手不足というものも企業倒産を招く時代となっているのである(事業継承できずに廃業というパターンもあるようだ)。
  つまり、いまタクシー運転士をめざす人が多いといわれているが、じつは元の勤務先が倒産した影響などで転職してくるケースも多くなっているのではないかと筆者は考えている。もともと、タクシー業界は景気が悪くなり、職を失った人たちの受け皿といわれてきた。家族を抱えた中高年層であっても、正社員採用が容易で社会保険に困らないで働くことができるからである。
  都心部を見ていると、万全とはいえないものの、街なかを走るタクシーは一時期より確実に増えている。そして、当然空車で流すタクシーも珍しくなくなってきた。一時は極端な稼働台数不足で、誰でもタクシーを流せば相当稼ぎがよかったが、筆者が見ている限りではそろそろ比較的誰でも稼げるという状況ではなくなってきていると見ている。
  それでもタクシー運転士をめざす人が多いという現状は、あまり報道はされないものの、ハイペースで進む中小企業の倒産(倒産しなくともリストラも目立っているだろう)が、背景にあるのではないかということも忘れてはならないし、注視していかなければならないだろう。

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