目立つ高齢タクシー運転士の事故! だが年齢よりも「悟りを開けるか」がタクシーの安全性に大きく影響する

2024.06.19 06:20
この記事をまとめると
■高齢タクシードライバーによる事故が相次いで報じられている
■タクシードライバーにはなんらかの社会人経験を積んだ人が就いていることが多くプライドが高い人はミスも多い
■タクシードライバーは運転スキルだけでなくコミニュケーション能力も必要だ
高齢のタクシードライバーの事故が多い=間違い
  ここのところタクシーの事故が相次いで報じられている。5月23日京都市中心部でタクシーが逆走し、6台が絡む事故が発生した。当該運転士(72歳)を含む3名が重軽傷を負ったとのこと。また、その後の報道では、当該運転士は事故を起こす前日から当該タクシー会社で乗務をはじめていたともされている(それまでも別の事業者で乗務していたようだ)。
  5月25日には福岡市中心部において、タクシーが道を歩いていた女性5人を巻き込み道路脇の電柱に衝突する事故が起きている(当該運転士は74歳)。巻き込まれた5人のうち3人が軽傷を負い、実車中(お客を乗せていた)のタクシーは運転士が軽傷、乗客にはケガはなかったとのことであった。
※画像はイメージ
  このような報道が相次ぐと「高齢運転士は事故を起こしやすい」となってしまいがちだ。たしかに高齢のなか長時間乗務するのだから、事故発生リスクは高いということは否定できないが、単に「高齢運転士は事故を起こしやすい」としてしまうのはちょっと拙速だと筆者は考える。
  タクシー運転士というのは端で見ているほど「簡単な仕事」ではない。しかも、最近は目立っているようにも見えるが、大学を卒業したばかりの新社会人が就くケースはまだまだ稀であり、なんらかの社会人経験を経てタクシー業界に足を踏み入れるのが一般的とされている。
「新聞記者、警察官、公務員など前職はさまざまです。お店や会社を経営していたものの閉店や倒産を経てタクシー運転士となる人も多いです」とは事情通。外国人、学卒新社会人、そして女性など、タクシー運転士も多様化を見せているものの、ボリュームゾーンは社会人経験を積んだ中高年男性という構図は変わらない。
  そうなると、前職で一定の役職に就いていたり、お店や会社などを経営していた「一国一城の主」だった人も多い。つまり、プライドの高い人もそれなりに多いのである。「前職でのプライドなどをいかに捨て去り、タクシー運転士という仕事の神髄を理解できないと、本当の意味で稼ぎのいい運転士にはなれないと聞いたことがあります(事情通)」。
  この辺りの「悟り」が開けない運転士は事故だけではなく、乗客からのクレームも多くなりがちだとのことである。「不本意ながら離職したものの、家族を養わなければならないので運転士になった」といったパターンでは、一見すると人間的にも問題がない元サラリーマンの運転士であっても、過去を引きずっていれば稼ぎは伸び悩み、乗客からのクレームや規模は大きくないものの軽い接触事故などを起こしやすい傾向があるとも聞いたことがある。「家族を養うために稼ぐぞ」という気持ちが先行してしまい焦りなどが出てくることもあるようだ。
簡単な仕事じゃないからドライバー不足が解決しない
  とあるギャンブラー志向のある人からは、「パチンコやパチスロは、『生活のために』といったノリではなかなか勝つことはできない。あくまで勝ったときは『余禄』と考えて挑んだほうがいい」と聞いたことがある。似て非なる話ではあるが、タクシー乗務でも気持ちに余裕をもつことが安心・安全運行につながるのである。ベテランの運転士は配偶者が飲み屋などを営んでいたり、本人が副業を持っている人も多く、「タクシーは稼ぎより社会保険のため」として働いている層もいるようだ。
  隔日勤務ならば連続20時間(休憩あり)ほど乗務することになる。20時間クルマの運転、しかも見ず知らずの人を乗せて運転しなければならない。それだけとっても「誰でもできる簡単に稼げる仕事」とはいえないはずだ。むしろ、「誰でもできる簡単な仕事」ならば運転士不足もすぐに解消できるはずである。発想の転換ができないと稼げないことも多く、長続きしないことも多いのである。
  また、最近は少なくなっているようだが、昔はかたぎの経営側としっかり対峙する、組合のあるタクシー会社で組合運動を積極的に行うリーダー格となる武闘派運転士も事故や苦情が少ないとされている。経営者側と対峙している関係上、事故や苦情を起こせば最終的には離職につながりやすいリスクをはらんでいるので、「弱みを見せない」意味でも事故や苦情には細心の注意を払っているとのことであった。
  タクシーの最大にして唯一のサービスは「安心・安全に乗客を送り届ける」ことにある。そのほかのサービスはあくまでも付随的なものである。運転士の「ため口トーク」が問題になることもあるが、筆者はむしろ好意的に受け止めている。しかも日本だけの話ではなく、海外ではいきなり初対面なのに、「お前の年収はいくらだ」など、「えっ?」と思うことを聞かれることもある(筆者はため口トークや突っ込んだ話をしやすい人間と思われるようだ)。
  嫌がる人のほうが多いだろうが、筆者はそのような運転士との車内での会話を楽しんでいる(最近はスマホの翻訳アプリもあるので、どの国でも話が盛り上がることがある)。
  事故は誰でも起こしたくて起こしているわけではない。ただ、一般的なイメージとして、高齢者や少々怖いイメージのある運転士が事故を起こしやすい(運転が荒いと思いがち)と考えやすいが、見た目ではなく、タクシー運転士の仕事とはどんなものなのかを心底理解できるていうかできていないかで、わかれることも大きいのである。そのため、経験の浅い運転士でも、事故を起こさずバリバリ稼ぐ人もいれば、キャリアは長いが……、という運転士もいるのが実情だ。

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