ロング客を引き当てた万収にこそタクシー運転士の醍醐味アリ! 領収書や乗務日誌を記念保管するドライバーまでいた

2024.06.13 06:20
この記事をまとめると
■タクシーの世界でロングとは「長距離利用客」を指す
■万収とはメーター運賃が万円単位になることをいう
■ロング客はタクシードライバーにとってありがたい存在だ
ロング客を乗せたタクシードライバーが上機嫌なワケ
  先日、早朝に出かける用事があったのだが、あいにく土砂降りの雨模様であった。荷物もあったので、雨の早朝(需要は多いが圧倒的にタクシーは少ない)という最悪の状況のなか、タクシーの配車アプリで配車を試みると、数分で到着予定という意外な結果に驚いてしまった。やってきたタクシーは、鉄道の駅で4つほど離れた地域を地元とする事業者の車両であった。
  車内に乗り込んでしばらくすると運転士さんが、「いま県境まで(筆者の居住地域は県の中央部)お客さん乗せていった帰りだったんだよ」と話してくれた。筆者の自宅から10分もかからないところに高速道路のインターチェンジがある。そのインターチェンジを降りて車庫に帰ろうとしたら配車要請があったとのこと。「早朝でこの天気(ヘビーな雨)だから、困っているんだろうなと思って配車を引き受けたんだ」そうだ。「この時間だと、そこまで(県境地域)行くとメーター料金はどのぐらいなのですか」と聞くと、「1万8000円だったよ」とのことだった。
  タクシーの運転士さんはいわゆる「万収(メーター運賃が万円単位になること)」となるロング(長距離利用客)を当てると非常に饒舌となる。筆者も深夜電車がなくなってしまった時間帯に都心から自宅まで約40kmの移動にタクシーを利用することが稀にある(運賃はおおよそ2万円)。そのときは運転士さんが同中ずっと話しかけてきて、深夜でも眠ることもできなくなる。そのためこれ幸いとも思い、業界のことをあれこれ聞いて「飯のタネ」にしている。
  話を戻すと、距離はあるものの県内移動なのに高速道路を使っていいといわれたので「タイパ(タイムパフォーマンス)」もよく、そのため運転士さんは上機嫌だったのである。そして帰り際に3000円弱のお客も乗せているのだから、さらにホクホクのようであった。
  そんな上機嫌な運転士さんが、「結構前になるけど、名古屋までお客さん乗せたことがあるよ」と話し始めた。「いったいいくらになったのですか」と聞くと、「18万円強だったかな(帰りの分もとられる)」と答えてくれた。
  あえて詳しくは聞かなかったが、3時間で名古屋に到着したというから、タイパはいいといえるだろう。そして、信号待ちの間に「記念に領収書2枚発行した」として、大切に持っている18万円の領収書を見せてくれた。
いまでは長年のノウハウがなくても稼げる!?
  いまは乗務日報もデジタル化されているが、過去に手書きの乗務日報だったころには、大当たり(営収[営業収入]がよかった)した日の日報をコピーして保管する運転士さんも多かったようだ。どのような動きをして高額な営収になったかを振り返ることができるようにするためとも聞いている。
  筆者もたまに長距離利用すると前述したが、そのときほぼ必ず運転士さんから聞かれるのが、「どのぐらいの頻度でロング利用するのか」、「利用するとしたら時間や乗車場所は同じか」といったことを聞かれる。筆者が過去に聞いた話では、「午前3時の銀座の女」という話が広く伝わっていたという。午前3時に銀座の決まった場所から乗って長距離利用する女性がいて、運転士の間で争奪戦となっていたとのこと。
  いまは大手や準大手を中心に配車アプリサービスに加盟していることが多い。そんななか日曜のある日、新宿駅西口の妙な場所に複数のタクシーが駐車しているのが目に入った。どうも、配車アプリによる配車要請を待っているようであった。城東地区(下町地区)よりも、とくに城西地区はそもそも距離の長い利用が目立つとされているようだ。
  たとえば世田谷区の用賀から渋谷駅といった利用や、成城学園前駅近くから羽田空港までといった利用がとくに早朝や日曜日には出やすいようである。世田谷の配車要請には新宿駅近くからでは少々対応は難しいかもしれないが、渋谷や中野、世田谷区の都心寄りの一部などの居住地域の配車要請に対応するため待機していたようだ。
  ただし、「過去にロングの客を当てた」からといって、同じ場所で再びそのようなビッグチャンスに巡り合う確率は少ないとも聞いている。
  さらに、配車アプリが普及するなかでは、長年の運転士経験に基づくノウハウの確立なくして稼ぐことも可能となってきた。ただ偶然と表現してしまうこともできてしまうが、ロング客を引き当てたり、そのようなロングもあって稀に見る高営収になったときの充実した気もちは、実際タクシーのハンドルを握らなければわからない醍醐味のひとつでもあることは、今回乗り合わせた老齢な運転士さんの目に見えてうれしそうな表情からも理解できた。
  社会のデジタル化は、年齢や性別に関係なく生活を豊かにする側面もあるようだ。タクシーの世界でも、古くは車両のAT(自動変速機)化、そして最近では大手や準大手を中心に広がる配車アプリの普及により、女性運転士も目立って増えてくるなど「新しい風」が吹いている。ただし、単にデジタルツールに頼るだけではなかなか思った稼ぎを得ることはできない。そこはやはりどのように自分なりに使いこなしていくかというところがある。
  また、業界では「お化け」などとも呼ばれる、予期しないところで乗車してくるロング客のようなサプライズもまだまだある様子。そこにはタクシー運転士という仕事の醍醐味があるようだ。

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