かつて新車には季節によって売れる「旬のクルマ」があった! 新車ディーラーが昔のような「季節戦略」をとれなくなったワケ

2024.05.14 06:20
この記事をまとめると
■かつては時期や季節によって特定の車種を「イチオシ」として販売していた
■いまでは納期遅延などが影響し、タイミングを狙ったセールスが困難になっている
■登録車の分野では海外市場が優先され「季節」を狙ったセールスが難しくなっている
クルマも時期によって「売れるモノ」「売れないモノ」があった
  かつて「ファミリーセダン」などと呼ばれ、セダンが新車需要の中心だったころ、そのほかのボディタイプにはある意味「旬」があるような形で販売促進活動が行われていた。
  たとえばミニバンは、「夏のお盆休みシーズンにレジャーや帰省で新車に乗りたい」というニーズが目立ってくるので、5月の大型連休(ゴールデンウイーク)明けからは、「イチ押しクルマ」として積極的な販売促進活動が展開されていた。かつては「クロカン(クロスカントリー)4WD」といった表現の似合うモデルの多かったSUVは、冬のウインターレジャーシーズンに納車が間に合うタイミングで熱心に売り込んでいた。
  軽自動車やコンパクトハッチバック、セダンあたりは「通年もの」として年間を通じてよく売れているなか、ミニバンやクロカン、そしてバブル崩壊後しばらくするとステーションワゴンがブームになったりしたが、これらはレジャービークルとなることもあり、夏や冬のレジャーシーズン時期前に商談の引き合いが多くなったりしていた。
  社会人になったばかりの男子は、現在とは異なりほとんどが運転免許を持っており、その多くはクーペモデルを購入していたので、このあたりのモデルはボーナス支給シーズンには動きを見せていたようである。
納期乱れによりタイミングを狙ったセールスが困難に
  現状はだいぶ改善されているが、国内販売シェアトップのトヨタを中心にまだまだ納期が乱れ気味となっている。そのため「5月の大型連休に新車で出かけたい」などと決め打ちで新車を購入することは難しい。さらに、そのような特殊な状況がなくとも、新車販売全体の4割に迫る勢いで軽自動車が売れ、セダンやクーペはすでに絶滅危惧種になろうとしている。登録車の販売の中心はミニバンとSUVになっており、レジャーのみならず、日常生活でもそのまま使うのがいまや当たり前となっている。
  いまの新車販売に季節感がまったくなくなったというわけではないが、最盛期の半分程度にまで市場も落ち込んでしまい、今後も明るい話題が期待しにくいなかでは、季節に合わせておすすめ車を調整するような余裕もなくなってきているようである。
「新車が欲しいという話があれば即対応する」、目の前のニーズをとにかく自分のものにしなければならないというほど、いまの新車販売の世界は余裕がないのである。
  また、過去には日本国内での需要メインで買い取り相場が形成されていたが、いまや相場形成の主導権は、登録車では海外輸出をメインとした外国人バイヤーが握っているので、その意味でも季節感というものが薄れてしまうのは仕方がないことかもしれない。
  実際、新車の売れ行きに「旬」というものがあるのかは別として、かつての販売現場では「いまはミニバンを」などと売り方を考えながら日々活動することができた。しかし、現在の販売現場をまわると、そのような話はほぼ出てこない。
  いままでも「目の前のノルマが優先」とはいってきたが、いまはそれが先鋭化しており、とにかく「なんでもいいから話が出れば受注する」といったような余裕のなさが、筆者には目立って見えてしまっている。

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