この記事をまとめると
■8月はお盆休みがあるためほかの月よりも受注台数が伸び悩む
■8月単月の前年同月比の販売台数は登録車も軽自動車も前年割れ
■軽の伸び悩みはダイハツの状況が影響している
8月の新車の受注台数は若干控えめ
「8月は新車が売れない」といわれることがあるが、それは「新規受注台数(8月に新たに注文を取った数)」ベースでの話。自販連(日本自動車販売協会連合会/登録車)、全軽自協(全国軽自動車協会連合会/軽自動車)が毎月発表する新車販売台数は当月に何台新規登録(軽自動車は届け出)できたかの統計となっている。新車ディーラーでは1週間に定休日を2日設けるのが一般的になりつつあるなか、8月は新車ディーラーがお盆のタイミングで長期間休業となるので稼働日数を大きく減らすことになり、それが受注台数伸び悩みを招いているとされている。
さらにここ数年は、酷暑がよりひどくなり、消費者の新車購買意欲もこの時期はとくに減退傾向になっている。当然メーカーの生産工場もお盆のタイミングで長期間の休業に入るので、ディーラーへの出荷台数も少なめとなるし、そもそも新車がディーラーに到着してからは、納車に向けた最終検査やオプションパーツの取り付け作業がある。昨今は働き方改革や働き手不足もあり、ここで時間を取られることも目立つなか、当然この作業もお盆には長期の休業に入るし、そもそも購入者もお盆にたとえディーラーが稼働していても、帰省やレジャーで出かける人も多いので、そのタイミングでの納車を避ける人も多いだろう。
つまり、「お盆休み」の存在がさまざまに作用して統計上販売台数が少なめとなってしまうのである。なお、この傾向は大型連休のある5月や、年始休暇のある1月でも同様の傾向を見ることができる。
ちなみにアメリカでは9月の第1月曜日が「レイバーデイ」という祝日となり、土曜日からレイバーデイまで3連休となる。2024年のケースでは9月2日がレイバーデイなので、8月31日から9月2日が3連休となる。
2023年では9月4日がレイバーデイとなるので、9月2日から4日が3連休となった。アメリカでは契約が成立したその日に買った新車を乗って帰ることもできるので、8月31日まで8月締めの新車販売ノルマ達成のための販売促進活動ができる。そのため、レイバーデイの3連休がどこまで8月に食い込んでくるかで、8月の新車の売れ行きに大きな影響を与える。なおアメリカでの新車販売統計は工場からの「出荷台数ベース」となるとのことなので、ここでの新車販売台数はあくまで販売現場での成約ベースでの話となる。
それでは2024年8月単月の新車販売統計を見ていこう。
自販連発表による登録乗用車の販売台数は18万385台(前年同期比98.4%)、全軽自協発表による軽四輪乗用車の販売台数は9万1083台(前年同期比93.7%)となっている。2023年に比べれば、さらに新車の供給状況は改善されている。トヨタが認証問題でヤリスクロスなど一部車種の出荷停止を続けていたが、その影響は限定的なものだろう。
連日のように国民への深刻な税負担増に関する報道や、沈静化をなかなか見せない食料品や日用品の値上げなどにより、新車購入意欲が減退しているのではないかと筆者は考えているが、それを打破するような話題性の高い新型車が2024年になってから登場していないので、なかなか店頭にお客を呼び込めていないことも影響している可能性もある。軽四輪乗用車のほうが前年比の数字が悪いが、これはダイハツの新車販売の現状が影響しているものと見ている。
ダイハツは認証問題で全車種の出荷停止を招き、それが全面解除されて間もない。消費者のこの問題へのアレルギー反応はそれほどないとはいうものの、まったくないわけではない。その状況下で販売台数の積み増しを目的としたかは定かではないが、中古車市場にはダイハツ軽自動車の届け出済み未使用軽中古車が溢れている。ムーヴ・キャンバス、ミラ・イース、タフトなど車種もバラエティに富んでいるのも特徴だ。
つまり大量とも表現できるダイハツ軽自動車の未使用中古車が新車販売を圧迫しているようにも見えるのである。届け出済み未使用軽中古車発生要因となる、売り先のない新車にディーラー名義などでナンバープレートだけをつけて新車販売台数の上積みをはかる「自社届け出」は、ダイハツ以外のメーカーでの軽自動車でも横行している。もちろん新車で買うより安いので、極端に未使用中古車が多くなれば、それが新車販売を圧迫してしまうことは容易に想像がつく。
ダイハツのトップ奪取は難しい
8月の新車販売統計の特徴は、そもそもはそれまでの夏商戦(6・7月)までに新規受注したものの新規登録(軽自動車は届け出)が間に合わなかった受注分(受注残)の新規登録分(軽自動車は届け出)が多く含まれること。現状では供給状況が改善傾向にあるとはいえ、契約当月内納車が実行されることは奇跡に近いのが現状となっているので、そのほとんどが受注残車両と考えてもいいかもしれない。
ただ、「年内に新規登録(軽自動車は届け出)したい」、「決算月なので3月までに新規登録したい」、そして「お客さんが夏休み(お盆休み)に新車で出かけたいといっている」などの理由で、12月や3月、7月には駆け込み生産のような形で工場からの出荷台数も多くなり、統計上の新車販売台数が増える傾向にある。
しかし、仮に実車が間に合っても登録関係書類の都合などで、翌月(1月や4月、そして8月)に新規登録(軽自動車は届け出)がこぼれることは珍しくない。たとえば、「7月に登録がギリギリ間に合いそうだ」としていても、当該新車の出荷が結果的に8月になってしまうことも珍しくない。
そこで、8月の販売台数を7月の販売台数比で見ると、2023年7月単月の登録乗用車販売台数に対して、2023年8月単月の登録乗用車販売台数は約82%、一方2024年8月単月の販売台数は2024年7月単月比で約78%となっている。つまり、7月までに新規登録(軽自動車は届け出)できなかった受注残が減ってきている(供給状況が改善されている)、つまり8月にこぼれる分が少ないことを表しているとも統計上から判断することもできるのである。
事業年度(4月から翌年3月)締めでの上半期末の9月や、事業年度末となる3月では、可能な限り取りこぼし(受注残を発生させない)を防ぐためにかなり多く新規登録(軽自動車は届け出)を行うので、8月よりも4月や10月のほうが販売台数の落ち込みが顕著となることも多いが、供給状況次第では4月や10月の販売台数が例年より目立って多く見える年もあったりするのである。
本稿執筆時点では、いよいよ2025年まで4カ月を切っている。今後は、2024年12月までは2024暦年締め年間新車販売目標台数達成のための動きが目立ってくるはずだ。納期の早い新車の新規受注を追いかけるだけではなく、受注残車両をできるだけ減らそうとする動きも目立ってくる。可能な限り「越年納車」を回避するために、12月までに出荷を間に合わせようという動きも目立ってくることになるだろう。
報道では10月末にダイハツは環境規制への対応の遅れにより一部車種について再び生産停止となるとのこと。軽自動車だけではなく、トールやロッキーといった登録車も対象になるそうなので、トヨタ向けOEM(相手先ブランド供給)車となるルーミーやライズも対象になる。こうなると、一時的な生産停止のようだが販売台数統計へも少なからず影響を与えそうである。
軽四輪車総販売台数では2024年8月単月もスズキがトップとなっている。2位のダイハツとは5850台差なのだが、軽四輪乗用車ではトップのスズキと2位ダイハツとの差は約1万台となっている。軽四輪貨物ではスズキに4000台ほど差をつけてダイハツがトップとなっているものの、ここ最近はハイゼット・トラックやバンなどダイハツ軽四輪貨物の届け出済み未使用軽中古車も店頭では目立っている。
軽自動車では三菱が軽四輪乗用車で前年比117.7%と著しい販売増を見せているが、これは「デリカ ミニ」が大きく貢献しているのは間違いない。
しかし、本稿執筆時点では、間もなくスズキから新型スペーシア ギアが登場予定となっているし、ホンダもN-BOXの派生車種としてクロスオーバーSUV風モデルの投入を準備している模様。ダイハツも「タント ファンクロス」をラインアップしているので、今後はハイト系ワゴンの派生クロスオーバーSUV風モデルが、車名(通称名)別だけではなく、ブランド別軽自動車新車販売台数でもキャスティングボードを握っていくのではないかと考えている。