石井食品は、日本の各地域で手間ひまをかけて育てられた食材を、当社の無添加調理※技術によって魅力ある製品へとプロデュースする「地域と旬」という活動に力を入れています。単に材料を仕入れるのではなく、製品開発を通じ、その土地のアピールや地域の活性化につなげていくことを目指しています。
この「地域と旬」の取り組みは、日本全国の生産者さんが抱える課題解決に貢献し、日本中の良質な素材を旬の時期に商品化することを目指して2016年から始まりました。例えば地域食材の課題。従来の流通ルートでは、「〇〇県産」といった地域でまとめた産地表示となり、個々の地域名がブランドとして認識されにくいという課題があります。石井食品の特徴である「無添加調理※」を支えているのは、原材料本来の美味しさを追求してくださっている生産者のみなさんです。より質の高い地域食材の確保と、その生産者への貢献を行うことが、消費者のみなさんへおいしい商品を届けることにつながると信じ、「地域と旬」に注力しています。
2030年に向け「農と食卓をつなぎ、子育てを応援する会社に」という新しいビジョンを掲げる石井食品にとって、「未来に持続可能な、食の循環型ビジネスモデルを構築する」という挑戦を実現するためにも、生産者さんと向き合うことは避けて通れません。
今日は、「地域と旬」の中でもこの季節にお目見えする「筍」の生産について、石井食品にご協力いただいている、農業生産法人有限会社松浦竹田ファーム 代表取締役の田中様、石井食品の2025年の筍プロジェクトリーダー 南部さん、石井食品の唐津工場 工場長の志田さんにお話を伺い、「地域と旬」への取り組みに対する思いを探りました。
※石井食品での製造過程においては食品添加物を使用しておりません。
農業生産法人有限会社松浦竹田ファーム 代表取締役 田中宏昌様
筍からミートボールの玉ねぎまで。松浦竹田ファームとの取り組み
— 松浦竹田ファーム様と石井食品のお付き合いはどのようにして始まったのでしょうか?
(南部)はじめは、筍ごはんの素を生産するための原料である筍が不足していることから、唐津で筍生産をされている松浦竹田ファームさんに、石井食品の素材価値開発部が声をかけさせてもらったのが始まりです。現在では、週に2回、ミートボールの生産にも使用している玉ねぎも納品いただいております。そのほか、おせちで使用する紅白なますの大根等もお願いしており、すでに3〜4年前からのお付き合いです。
筍は「地域と旬」の取り組みの中でも先駆けのような存在です。今後も「地域と旬」の象徴的案取り組みにしていきたい大事なプロジェクトです。
獣害対策から始まった筍堀り、そして事業拡大
— 唐津で生産される筍の特徴、他の生産地との違いなどはあるのでしょうか?
(田中)もともとこの地区では、農業従事者が減ったことから耕作放棄地が増え、結果的に竹が繁茂してしまったことで獣害にも繋がり、国が対策を講じていました。その解決策として、竹を増やさないために、むしろ竹を活用して筍を生産し、地域の特産物として活用できないかと考えたのが始まりです。
徐々にこの地域でも筍が収入源になると認知されるようになり、はじめは高齢の方が筍掘りを始めるようになりました。以前は、60代、70代以上の高齢の方ばかりが従事していましたが、価格設定を見直し、収益性を上げたことで高齢化の状況も改善され、生産者自体も増えてきました。10年に渡る取り組みの結果、寒暖差がある気候も重なり品質も良くなってきています。筍の事業において、高齢化が起こりやすい背景には、筍堀りが重労働であり、若手がやりたがらないことも理由の一つです。また、石井食品のこだわりである「朝堀りの筍」以外の素材の活用も検討する必要があります。生産者と加工業者ともにメリットがあるよう、今後は、筍ごはんの素以外の商品展開にも繋がれば嬉しいです。
石井食品への期待は販路拡大、量産対応
— 石井食品との「地域と旬」の取り組みに対して、今後期待していることはありますか?
(田中)我々の地元、唐津の筍のブランドを広めていただきたいです。並行し、安定的な需要確保にもご協力いただきたいと考えています。生産者は増えてきましたが、量販体制には課題があります。10年前と比較すると、売上は3倍から5倍に拡大しています。以前は地元の直売所が中心でしたが、現在は販売先も広がり事業規模も見込めるようになりました。石井食品が加わることで、この規模を10倍まで成長できるよう頑張りたいです。
松浦竹田ファームでは、筍の収穫だけでなく、茹でる処理まで担当しているので、品質には自信があります。採れたばかりの筍をそのまま山からおろすと重量があるので、その場で皮を向き、1時間以内には茹でる処理をするという工程を徹底しています。水煮筍の商品を展開するなど、新たな取り組みにも協力いただきたいです。
求められているものを届けていきたい
— 石井食品のメンバーから、今後の唐津の取り組みでの展望などはありますか?
(南部)「地域と旬」の取り組みを通して唐津を盛り上げていくためには、販売数を増やすことは不可欠です。今までの石井食品のやり方は、「いい商品ができたから売る」というプロダクトアウトの考え方で展開することが多かったと思います。しかし、今後はお客様や生産者の皆さんの意見を聴き、マーケットインの考え方で、市場から求められているものを開発する視点も忘れないようにしたいです。
— 唐津市を盛り上げることで、最終的に目指すのはどのような姿でしょうか?
(南部)唐津を盛り上げることで、最終的には唐津に来ていただいたり、移住に繋がればもちろん嬉しいです。しかしまずは、全国に唐津の名産品を知っていただき、唐津での経済効果を生み出したいと考えています。
地元の名産品、素材の特性を活かした工場ごとのこだわり
— 製造の工夫や、唐津の筍ならではの味付けのこだわりがあれば教えて下さい。
(志田)筍ごはんは、かつおだしベースが一般的だと思います。しかし、石井食品の筍ごはんの素は、千葉大多喜町、京都丹波などの他の地域との差別化を図るため、片口いわしと佐賀県産鶏がらの合わせだしを使う等、九州らしい味わいが出るように工夫しています。他にも、地元では有名な唐津・鳴滝酒造の「聚楽太閤(じゅらくたいこう)」を料理酒に使用し、醤油も唐津・宮島醤油の「本醸造丸大豆醤油」を採用しています。飲めるほど美味しいお酒なので、一般的な食品製造の現場で使うことは考えられないと思います。
製造の課程では、水分が多く味が染み込みにくいタケノコを、脂で炒めることでコクを出している点です。他の生産工場では焼く工程を入れる等、それぞれの工場で工夫を施しています。唐津工場では、一度炒めてから調味液と合わせることで味を染みやすくしたり、鶏肉を入れることでコクを出して味に深みを出すなどのこだわりを出しています。
2030年の石井食品 新ミッションに向けて
— 今後、松浦竹田ファーム様の筍事業について、どのような取り組みを強化していきますか?
(南部)今までは筍ごはんの素の商品そのものの拡大に注力していましたが、近年は地域自体をどうよくしていくかを考えています。商品開発を通じて、地域との連携を深めるミッションに貢献できるよう、松浦竹田ファーム様との連携も強化していきたいです。
唐津での取り組みを成功事例とし全国に展開できれば、石井食品が2030年に向けて掲げているビジョン「農と食卓をつなぎ、子育てを応援する会社に」にも一歩近づけると信じています。
編集後記
石井食品 ブランド&コミュニケーション部 池田 真里
私自身も、よく店頭でお客様の声を伺っていました。お客様も食品添加物を使用していない筍の加工品を非常に珍しがってくださり、探すのが難しいとおっしゃっていたのが印象的でした。今回の松浦竹田ファーム様のように、独自で採れてすぐに水煮にするなどの苦労がないと、新鮮なものは提供できないのだと改めて実感しました。また、石井食品の筍ごはんの素にかける素材と地域へのこだわりが、しっかりとお客様まで伝わるよう、我々も尽力したいと感じました。
【石井食品について】
1946 年千葉県船橋市にて佃煮製造を開始し、真空包装品・煮豆小袋を発売。その後 1970 年には業界初の調理済みハンバーグ 「チキンハンバーグ」 を発売。1974年には 「イシイのおべんとクン ミートボール」でおなじみの「ミートボール」を発売し、2024年に50周年を迎えました。素材本来の美味しさを最大限に引き出すため、「無添加調理※」に取り組んでおり、味や色そして食感など素材のもつ本来の力を生かす調理と技術・本物の美味しさの追究を行っています。