【プロジェクトの裏側】公立中学校が「メイクの授業」に踏み切った理由とは?!自己表現のツールとしてのメイク体験から得る“本質に迫る深い学び”

2025.02.27 11:25
「学校」と「メイク」というと、校則で禁じられていることも多く、親和性が低いものと考えられることもしばしば。個性の尊重が叫ばれるいまの社会においても、まだタブー視されている風潮があります。


文部科学省は「主体的・対話的で深い学び」を呼びかけ、教育現場に新たな学びのカタチを求めるなか、授業の一環としてメイク体験を取り入れた公立中学校がありました。


双方の想いが合致し実現した、新たな学びのカタチが生まれるまでの裏側について、渋谷区立原宿外苑中学校の駒崎校長と株式会社伊勢半コミュニケーション本部の河野恵理に話を聞きました。
渋谷区立原宿外苑中学校 駒崎彰一校長
株式会社伊勢半 コミュニケーション本部 河野恵理
伊勢半が考えるメイクとは――「メイクは自己表現のツールであり自由なもの」
学校とメイクを取り巻く環境を見てみると、多くの中学校・高校ではメイクをすることが校則で制限されており、メイクを学ぶ機会がほとんどないにもかかわらず、大学生や社会人になり社会に出るとメイクをしていることが当たり前といった風潮がまだあります。


コーポレートブランドKISSMEのブランドメッセージに「私らしさを、愛せるひとへ。」を掲げている私たちにとって、メイクは身だしなみやマナーとしてすべきものではなく、自己表現のツールであり自由なものであると捉えています。そして、さまざまな活動を通してこの想いを発信し、近年では「KISSMEメイク部」や「眉毛ホームルーム」といった活動に取り組んでいます。
2022年に開催した第1回KISSMEメイク部の様子。
プロのメイクアップアーテイストと一緒にメイクの楽しさを体感。


河野:「KISSMEメイク部」はメイクに触れるきっかけづくりと、KISSMEのメイクに対する想いを共有する活動として2022年から実施しています。部活のように学生が集まり好きなメイクを一緒に見つけ、メイクの楽しさを知ってもらう場として活動しています。
原宿外苑中学校で開催した眉毛ホームルームの様子。
近年男性ユーザーも増えている眉マスカラに男子生徒も含め全員でチャレンジ。


河野:「眉毛ホームルーム」は眉メイクブランドのヘビーローテーションが、眉毛に関する悩みを持ちながらも解決策が見出せずにいる中高生へ、眉メイクを通して自分に自信をもてるきっかけをつくりたい。また、男女関係なく初心者でも簡単にイメージチェンジが叶う眉マスカラを使い、メイクの悩みを少しでも解決するとともに、学生の皆さんに自己表現を楽しんでほしいという想いで2023年に始まりました。


原宿外苑中学校では、2024年に全校生徒の男女約300名に対して「眉毛ホームルーム」を実施。メイクによる外見の変化や、気持ちの変化などを実際に体験してもらうとともに、自己表現のツールとしてのメイクのあり方について考えてもらう特別授業を行いました。こうした大胆な授業を取り入れようと考えた理由は何だったのでしょうか?
生徒たちに「本物を見せたい、体験させたい」駒崎校長の考える現代の教育
冒頭にあったように「学校とメイク」というと校則で禁止されていることも多く、個性の尊重が叫ばれる社会へと移り変わるなかでも、まだタブー視される風潮があります。そんななか、生徒たちに「本物を見せる、本質に迫る」オーセンティックな学びを体験させたいと、メイクを通して自己表現について考える授業として「眉毛ホームルーム」を実施したのが渋谷区立原宿外苑中学校でした。


駒崎:原宿外苑中学校は「Don’t think.Just do ! HarajukuGaien "やっちゃえ 原宿外苑"」を合言葉に教育活動を展開しています。 今回の伊勢半との取り組み以外にも積極的に企業や関連団体と連携して「授業」として様々な内容を取り入れています。


昨今、文部科学省は全国の学校に「主体的・対話的で深い学び」を呼び掛けており、授業の改善を教育現場に求めています。私自身、これからの学びは「本物を見せる、本質に迫る」オーセンティックな学びが最重要であると考えており、こどもたちに本物の体験をさせたいと思っています。


国が求める「深い学び」とはいったいどのようなことを指すのでしょうか。駒崎校長は「深い学び=本質に迫るということ」だと捉え、日々の教育活動で実行しているそうです。


駒崎:具体的には各教科の学びも、それぞれがどう社会に繋がっているのかを生徒たちに教えています。単に覚えるだけではなく、世の中の事象と重ねて考えるスキルを学ぶことで、頭に残る知識が将来活用できる知識となると考えています。
メイクを起点に考える探究学習と生徒の気づきから派生した「手話×メイク」の体験イベント
こうした教育現場が置かれる状況を背景に、学校の枠だけでは学びが成立しなくなると考え、さまざまな企業・団体に協力を依頼し、多様な授業を展開しているそう。


駒崎:従来の授業形式にとらわれない体験をさせていくと、課題解決の方法を生徒たち自身が身に付けて、自分自身で課題にアタックしていくようになります。そして自分なりに動き出し、探究学習に繋がっていきます。


これはプロジェクトベースラーニング(PBL)と言う学習法で、決まったカリキュラムを淡々とこなすのではなく、自身で問題を発見、解決していくことに重きを置く方法です。


課題解決の方法を探究していくため、企業などがいかに社会課題の解決に向き合って取り組んでいるか、リアルを見せてもらうことが生徒たちの学びになると話す駒崎校長。


メイク体験を通して生徒たちが何を考え、どう動いていくか、そのプロセスもひとつの学びになるのでは?と考えた結果、「メイクは自己表現のツールであり自由なもの」と発信する伊勢半の「眉毛ホームルーム」を授業に取り入れることになりました。
普段はメイクをしないという2名の先生がメイクを施した姿で登場。
メイクによる印象の変化を実感してもらいました。




河野:私が1番驚いたことは、男女問わず「メイク」に対して向き合ってくれる生徒さんが多かったことです。それだけ中学生の中でもメイクの存在は確かなものであり、身近なのだと実感しました。


興味があったらこれからもメイクに触れてほしいし、興味が無ければ今日限りでもいいと思います。自己表現のツールのひとつとして「メイク」というものがあると伝えたかったので、その意図を汲み取り自分たちなりにそれぞれ行動してくれたことが嬉しかったです。


さらに眉毛ホームルームをきっかけに、「自己表現や自己肯定も、共生社会を歩む励みになるのでは」といった生徒の気づきから、同校の生徒が企画・運営に取り組む、共生をテーマにしたイベント「原リンピック」で、手話×メイクの体験イベントを企画したいとアイデアをいただきました。そのアイデアをもとに、伊勢半が展開する「KISSMEメイク部」として一緒に企画を作り、実施するなど派生の取り組みも誕生しました。
2024年6月に実施したイベント「原リンピック」での出張KISSMEメイク部
自ら体験し、自ら考え、自ら判断する。メイクの授業があたえた「本質に迫る深い学び」
実はこちらの学校、公立校ながら細かい校則は定めず生徒手帳すらないそう。生徒の自主性を尊重すると同時に、教育活動の合言葉「やっちゃえ原外」の精神が表れている大きな特徴だと話す駒崎校長。そうした環境だからこそ、生徒たちの自主性・自立性が育っていると話します。


駒崎:校則がないので、これまでもメイクをして登校している生徒もいました。しかし、学校側が校則を厳しくしなくても、受験を控える時期になると生徒自らTPOを考えメイクをしなくなるなど、自主的な行動も見られることから、生徒たちにある程度の判断を任せても問題ないと感じています。


もちろん、校長が急に「校則をなくそう!」と言っても、周囲にハレーションが起きるだけであることは理解しています。だから、行事の時は上履きを止めてみる(学校内土足)など、少しずつ学校で今までイレギュラーだった事項をレギュラー化していくことで、当たり前だと思っていることを見直すきっかけづくりを促しました。


段階を踏むことで、生徒たちも理解が出来るようになっていくと思います。生徒を主体として考え、周囲とも対話しながら、少しずつ行動に繋げていくのが良いのではないでしょうか。
自己表現を求められている今の社会において、メイクは社会に出たらしているのが普通といった考えもいまだ残るなか、社会に出ていくまではタブー視されています。そうした矛盾を社会課題のひとつと捉え、多感な時期だからこそ、自己表現のツールとしてのメイクに触れる機会を大人が作ることで、必要性や使い方について自分で考えてみるきっかけになるのではないでしょうか。


河野:以前、とある大学で自己表現としてのメイクについてお話しした際、聴講していた学生から「メイクをしないのも自己表現だから、自由だと思う」といった感想がありました。確かにその通りだと思いました。


メイクをするのもしないのも自由だし、どんなメイクをするかも自由。大事なのはTPOを考えることや、どんな自分を表現するか考えることだと思います。


私たちが「眉毛ホームルーム」や「KISSMEメイク部」といった活動を続けることで、学生の皆さんが自身の体験を通して自分と向き合い、自己表現について考えてみる機会を提供できればと思います。そしてメイクの楽しさを知ってもらえたら嬉しいですね。
眉の色を変えてみる、リップを塗ってみる。そんな小さな好奇心から生まれた自己表現は、生徒たちに前向きな変化を生んでくれることでしょう。自ら体験し、自ら考え、自ら判断する。そんな自主性・自立性を育む教育に、私たち化粧品メーカーができることとは。これからも伊勢半だからできることを模索しながら活動をつづけていきたいと思います。

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