■気候変動に対応した安定供給の野菜を提供
ガラスびん製造で110年の歴史を持つ日本山村硝子株式会社は、昨今の気候変動による野菜の供給不安に対し、完全閉鎖型植物工場を活用した安定供給で社会問題の解決を図ります。
季節ごとに供給不安に陥りやすい野菜の中でも一般的に植物工場での栽培例が少ないものについて、食品業界や一般消費者の皆様に一年中安定した品質・量・価格で野菜をお届けできる体制を確立しました。
当社は1914年の創業以来、ガラスびん製造を主な事業としており、国内でトップシェアをいただいているメーカーです。新規事業としてゼロから植物工場の技術開発に取り組み、今では370品種以上の野菜が栽培できます。
「オリジナル技術が詰まった植物工場」を目指し、国内の9割以上の植物工場がレタス栽培に集中しているなか、当社では「ケール」を主に栽培してきました。また、特定の栄養価を高めた高機能野菜の研究開発にも積極的に取り組んできました。
メーカーならではの技術開発力を活かし、植物工場野菜としては珍しく、かつ気候変動で不足しやすい水菜・サンチュ・春菊・サニーレタスを安定して生産する体制を確立しました。
※気候変動による野菜の供給不安について
近年、急激な気候変動が深刻な社会問題となっており、長雨、日照不足、低温といった異常気象は農作物の生育に強い影響をもたらします。特に、野菜は保存が難しいため、供給量の変動に伴って価格が大きく上下します。この影響は、食品業界関係者だけでなく、私たち一般消費者の家計にも重い負担となっています。(出典:
ー野菜不足に悩む現場の声 「夏場の水菜が足りない!」
昨今、気候変動の影響で農作物の生育が不安定となり、特に葉物野菜の供給が難しくなっています。小売店のバイヤーからは、「夏場の水菜やサンチュ、春菊が足りない」といった、日々の供給に困っている声が多く届きました。気温や天候に左右されることが、野菜供給の不安定さを一層深刻にし、消費者にとっても価格高騰が身近な問題となっていました。
そのような状況に、私たちはただ手をこまねいているわけにはいきませんでした。お客様やバイヤーの声を真摯に受け止め、彼らが本当に困っていることに対して何とか解決したい、という強い思いが開発を進める原動力となったのです。
ー社会問題の解決、日本山村硝子の植物工場だからできること
最初に取り組んだのは、「夏場の水菜やサンチュ、春菊」といった季節に大きく左右されてしまう野菜の安定供給問題でした。市場からの供給不足に悩むバイヤーの声に応え、私たちは植物工場で長年培ってきた研究開発技術をもとに、植物工場では珍しい水菜やサンチュ、春菊といった季節ごとに供給不安を抱える野菜を年間を通じて安定供給できる体制を整えました。この取り組みによって、国内市場が抱えていた気候変動による深刻な在庫不足や価格高騰の不安を解消し、安定した供給を実現することが可能となりました。
―難題を超えて、サニーレタス安定供給の実現
そして、次に挑戦したのは「サニーレタス」です。植物工場でのレタス栽培は既に一般的に行われていますが、鮮やかな赤色を発色するサニーレタスを人工光で栽培することは非常に難しいとされていました。しかし、バイヤーからの「サニーレタスの安定供給にも困っている」という声を受け、種苗会社や照明メーカー等の企業や大学の協力も得ながら、サニーレタスを安定的に生産できる技術を確立しました。そのため、私たちは市場価格の影響を受けない、通年同一価格のサニーレタスの供給を可能としたのです。
―多品種生産、唯一無二の植物工場を目指して
私たちは深刻化する野菜の供給課題に応えるべく、多くの植物工場が栽培するレタス以外の野菜にも目を向け、市場に新たな選択肢を提供できるようになりました。
昨今の特異的な気候変動や天災、それに加え農業人口の減少など日本の農業が抱える課題は山積しています。その課題に対し、私たちはより多様な野菜を安定的に供給できる体制を築き、未来の食卓に新たな可能性を提供できるよう、挑戦を続けていきます。
■日本山村硝子と植物工場との出会い
当社は、ガラスびんにも通ずる「安全・安心」「環境」「サステナブル」をキーワードに持つ新規事業として2007年から植物工場での研究開発に取り組み、今では370品種以上の栽培が可能です。競合との差別化を目指し、サラダ用の生食ケール栽培に挑戦。2014年に中食事業向け販売を開始、2018年には「きらきらベジ」ブランドを立ち上げ、関西で広く親しまれる存在となりました。現在は高機能野菜の研究開発を進め、2019年に日本の植物工場としては初めてとなる機能性表示食品の「ぎゅっとルテイン きらきらケール」の販売を開始しました。その後も、続けて「ぎゅっとGABA きらきらケール」等を販売し、健康をサポートする製品を提供しています。
■「山村JR貨物きらベジステーション」の設立
2021年、当社と日本貨物鉄道株式会社はパートナーシップを結び、福井県おおい町に「山村JR貨物きらベジステーション株式会社」を設立。2023年春には工場の稼働を開始しました。この新たな合弁会社は、日本山村硝子の技術力とJR貨物の物流網を活用し、国内需要に対応した次世代型植物工場として注目されています。
ー国内市場に対応できる生産能力
山村JR貨物きらベジステーション株式会社は、1日あたり約1トンの生産能力を誇り、国内市場に対応できる供給体制を確立しています。独自に開発したLED照明や長年にわたる研究開発を基に、最適な育成環境が整えられており、安定的に高品質な野菜を大量に供給することが可能です。
ー物流の革新とコンテナ輸送の導入
JR貨物の支援により、これまで青果業界では当たり前と思われてきたトラック輸送以外にも、コンテナ輸送が可能となりました。これにより、長距離輸送等における物流問題の解決が見込まれ、生産された新鮮な野菜を迅速に、かつ効率的に全国各地に届けることができるようになります。コンテナで輸送することにより、品質保持が徹底され、長距離輸送においても安定した品質の提供が可能となります。