埼玉よりい病院のDX推進をエム・シー・ヘルスケアがサポート。地域医療の未来を支える、クラウドバックアップとAI活用の裏側

2024.12.24 09:00
特定医療法人俊仁会 理事長 神戸美保子氏(左から2番目)、埼玉よりい病院 情報システム課 小松知治氏(最左)、エム・シー・ヘルスケア株式会社 事業開発部 伊藤香苗(右から2番目)、テクノブレイブ株式会社 医療インフラ事業部 部長 古賀明人氏(最右)。1年余りの「DXプロジェクトの総括」と題して2時間を超える議論を交わした。


埼玉県北部に位置する特定医療法人俊仁会 埼玉よりい病院(145床)は、救急医療から長期療養までの幅広い医療を提供する中規模の総合病院(ケアミックス病院)です。地域医療の中核を担う同院は「医療を止めない」をコンセプトに掲げ、2023年に理事長に就任した神戸美保子氏(専門:口腔外科)のリーダーシップのもと、
やテクノブレイブ株式会社の2社とともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組んでいます。


このDXプロジェクトは当面、埼玉よりい病院のみを対象としていますが、段階的にはグループ病院である秩父第一病院(100床)にも適用するものであり、これまで前理事長の井上敏克氏(神戸理事長の実父)が行ってきた積極的なICT活用路線を継承しています。大きく「医療情報の強靭化」と「生成AIによる業務省力化」という2つのテーマからなり、いずれも持続可能な医療提供を支えるための施策です。


今回のプロジェクトを支えるのは、医療機関向けソリューションで実績を持つエム・シー・ヘルスケアと、医療情報システムの専門技術を提供するテクノブレイブです。埼玉よりい病院を中心とする3者(1医療法人及び2事業者)が2023年秋から「ワンチーム」として連携し、AWS(Amazon Web Services)を活用したデータ保全や生成AIを用いた業務効率化の実現を目指してきました。


ここでは新しいクラウド技術を活用した埼玉よりい病院の取り組みについて、地域が抱える医療事情やその背景とともに、プロジェクトの裏側と成果、地域医療におけるDXの未来について紹介していきます。
医療現場を揺るがすランサムウェア攻撃。医療情報システムを守るための対策とは?
埼玉よりい病院の「医療を止めない」という言葉の背景から始めたいと思います。今、埼玉県北部の同院に限らず、日本中の医療機関がこれほどまでに医療情報のバックアップに傾注しているのは、ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃が医療機関にとって重大なリスクとなっているからです。電子カルテなどの医療情報システムが悪意ある攻撃を受けて停止すれば、膨大な復旧費用が発生するだけでなく、患者の診療や薬の処方が滞り、新規患者の受け入れが困難になるなど、医療提供体制の全体に甚大な影響を及ぼします。


2021年10月に徳島県のつるぎ町立半田病院がランサムウェア攻撃を受けた際は、電子カルテが使用不能となり、診療再開まで約2カ月を要しました。また、2022年10月に大阪急性期・総合医療センターがサイバー攻撃を受けた際には、復旧までに6週間を費やしています。これらの事例は、医療情報システムが持つ脆弱性と、ひとたび攻撃を受けた場合の地域医療への影響の深刻さを浮き彫りにしました。


このような事態を受けて、厚生労働省は2023年5月に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」を発表しました。当該のガイドラインでは、医療機関が規模に応じた安全管理措置を講じることを求めており、データバックアップの頻度や形式、管理方法などが詳細に規定されているほか、サイバー攻撃や災害に備えた体制を構築するためのチェックポイントなどが詳細にまとめられています。
「待ったなし」のサイバーセキュリティ対策に着手
埼玉よりい病院は、こうした国の医療政策上の方針も見据えながら、2023年に電子カルテシステムの更新を実施しました。これは2024年中に行うデータバックアップの強化策を見据えたものであり、診療データの堅牢性と運用効率を両立する医療ICT基盤の構築に向けた一歩でもありました。


神戸理事長によると、2023年夏にエム・シー・ヘルスケアのサービスマッチングサイト「
」が主催するオンライン勉強会(ウェビナー)で、大阪急性期・総合医療センターの講演を聞いていた職員の方もいて、院内のサイバーセキュリティ対策への関心が高まっていました。


その上で、「1台1台の端末への必要なセキュリティ対策や、医療従事者のリテラシー向上などの水際対策はもちろんのこと、有事でも迅速にリカバリーできる体制を整えることが不可欠です。こうした取り組みは単なるコストではなく、リスク回避のために必要な保険だと考えています」と語ります。
これまでのDXプロジェクトの歩みを振り返る神戸理事長(左)とテクノブレイブ 古賀氏(中央)
埼玉県北部の深刻な医療事情
埼玉よりい病院が掲げる「医療を止めない」という言葉には、もう1つ埼玉県の医師不足の問題もその背景にあります。埼玉県はすでに医師不足の県と言われて久しく、2022年の統計では人口10万人あたりの医師数が169.8人と全国最下位です。(厚生労働省、「令和4年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」による)


こうした埼玉県内の中においても、さらに医師の偏在があります。埼玉県内の医師が南部に集中していて、北部はさらに医師不足が深刻なのです。もっとも医師不足が深刻な秩父医療圏では人口10万人あたりの医師数が147.4人(2022年)であり、それこそ「医療崩壊」が危惧されている状況にあります。実際に埼玉県では医師不足解消に向けたさまざまな取り組みが試みられており、例えば、過疎地域への医師派遣などの構想も議論されていますが、なかなか進んでいないのが現状です。
地域医療を守る覚悟と使命。「医療を止めない」を掲げる埼玉よりい病院
は、熊谷市、本庄市、深谷市などと同じ北部医療圏であり、寄居町唯一の病院です。秩父医療圏とも隣接する地域にあり、医師のリソースが切迫した環境下であることには変わりありません。神戸理事長は「医療機関は地域住民の命を支える存在です。もしも当院の診療が停止するような事態が起これば、地域の医療提供体制に深刻な影響を与えることは避けられません。適切なリスクマネジメントを講じておくのは地域社会に対する責任」と語ります。


こうした状況も含めて考えていくと、埼玉よりい病院の「医療を止めない」という言葉には、通例の意味での経営目標や成果指標以上のものが込められているのは明らかです。いわば、地域医療を守る医療人としての深い覚悟と患者を想う気持ちにほかならず、その真摯さが病院と複数の事業者からなる混成チームを1つにまとめる大きな力にもなっています。
特定医療法人俊仁会 埼玉よりい病院(145床)の外観。
埼玉よりい病院のDX推進を支えるリーダーの存在
ここまで見てきた埼玉よりい病院の「医療を止めない」ですが、これを情報システムの側からかじ取りをしているのが、情報システム課 小松知治氏です。もともと小松氏は別の総合病院でシステムエンジニア(SE)としてのキャリアを長く歩んできました。埼玉よりい病院には、2023年に法人全体の情報システム部門を統括する立場で入職したばかりです。


実際に小松氏と会って話すと、すぐにロジカルで親しみやすい話術の持ち主であることに気づくことでしょう。例えば、病院のICT基盤について議論するとなると、どこか身構えてしまう方も多いものですが、小松氏は身近なパソコンやスマートデバイスなどに置き換えながら、誰にでも分かりやすく説明することに長けています。


小松氏は神戸理事長にもDXプロジェクトの要所、要所で押さえるべき事柄を伝え、経営判断に必要な情報を渡していく役割を担っています。「ICT用語の翻訳能力」もさることながら、おそらくは医療従事者への尊敬の気持ちや、地域社会に対する責任の捉え方など、どこか神戸理事長の発想と通じるところも多いのだと考えられます。


一般的に言われることですが、医療機関のサイバーセキュリティ対策などのDXプロジェクトは経営トップのマネジメントが不可欠とされます。確かにDXは病院にとって中長期的に必要な投資ですが、目先の収入に直結しない部分もあるため、なかなか情報システム部門だけの職務権限では推進できない部分もあるのです。そのため、病院の経営側と情報システム部門は一体的な連携体制をとって、経営トップが適切なマネジメントとリーダーシップを発揮していく必要があります。


このような観点から見た場合、神戸理事長と情報システム課 小松氏はまだ出会って2年足らずではありますが、すでに理想的なビジネスパートナーであり、それぞれの専門性に敬意を払いながら業務遂行をしていける良好な関係性が築けているといえるでしょう。
埼玉よりい病院 情報システム課 小松知治氏。コミュニケーションを大切にしながらDXプロジェクト全体をリードしていった。
細部までを理解する「現場監督」を中心としたチーム連携
プロジェクト成功の背景には、院内と外部パートナーの緊密な連携も欠かせません。埼玉よりい病院の情報システム課には現在、3名が所属していますが、そのうち1名が事務課兼任、1名が薬剤師兼任です。院内の人的リソースだけでは、日々の運用・保守を行うことが中心になり、新しいDXプロジェクトを推進するところまではなかなか手が回らない部分もあります。そこで有益なのが医療業界に精通した外部パートナーの存在です。


ここで注意したいのは、いわゆる「ベンダーへの丸投げ」に陥らないことです。例えば、外部パートナーに対してクラウドバックアップの体制構築を発注して、言われるままに申し込んで納期を迎えてしまうのが悪しき丸投げの典型です。


どんなに医療機関での実績があるベンダーだとしても、そうした経験の蓄積だけで埼玉よりい病院が持つ個別のニーズを完全に理解するのは困難な部分があります。結果として「完成図書」と呼ばれる納品リストと仕様書からなる一覧の中に二重投資や過剰投資が含まれてしまうリスクもあるのです。やはり病院側からプロジェクトの隅々までをよく理解し、全体的なかじ取りを行う「現場監督」役を立てるのが正しい進め方であり、DXプロジェクトを進める上で非常に重要です。


今回の埼玉よりい病院のクラウドバックアップの場合、まさに「現場監督」役を務めたのが小松氏でした。すなわち、埼玉よりい病院が現在行っている運用のあり方と、これから先へ目指していく運用の姿をエム・シー・ヘルスケアとテクノブレイブの2社に伝え、両社からの提案内容を正しく理解して経営層へ上申し、院内の合意形成を図り、最終的な納品、検収までをリードしていく役割です。


一方、
は、医療現場のニーズに応えるシステム設計と実装でその専門性を発揮しました。同社 医療インフラ事業部 部長の古賀明人氏が中心となりながら、バックアップデータの安全性をどのように確保するか、セキュリティ強化と投資コストの見極め、ランサムウェア攻撃にさらされた際の具体的なシミュレーションなども含めて、詳細かつ現実的な提言を行っていきました。
進行管理を担ったエム・シー・ヘルスケア。プロジェクト推進を支えた担当者の奮闘と思いとは
エム・シー・ヘルスケアは、埼玉よりい病院とテクノブレイブのいわば「橋渡し役」です。病院内の合意形成に基づく形で、プロジェクト全体の進行管理に落とし込み、スケジュール調整や課題整理に尽力しました。担当者は事業開発部の冨澤宗介と伊藤香苗であり、冨澤が主にエンジニアサイドからの調整役を務め、伊藤が営業面、そしてプロジェクト全体の盛り上げ役としての役割を果たしていきました。


今回、特に意識したのは「医療機関ファースト」に振り切ったことだと口を揃えます。「バックアップ対象とするシステムをあらかじめパッケージ化すれば、事前調査の項目も減らせますし、それだけ進行管理の工数を省くことができます。しかし、それではどこかに医療機関側の妥協や折り合いが生じてしまいます。やはり医療機関が必要とするサービスを自由に選べることは意識しましたし、その要求に応えられるだけのスキルと経験を持つパートナーとしてテクノブレイブに参画いただけたのは大きかったです」と振り返ります。


もちろん、AWSとエム・シー・ヘルスケアのあいだの協議にも多くの時間を費やしましたが、「必要とする医療機関に必要なサービスを届けられる内容」に徹した手応えも感じていたほか、埼玉よりい病院にとって「真のニーズ」に合致したサービス提供ができたという達成感も大きいようです。
エム・シー・ヘルスケア株式会社 事業開発部 冨澤宗介(左)と伊藤香苗(右)。「医療DXのコンシェルジュ」を思わせるサポートでプロジェクトを推進した。
比較検証で導き出された結論―クラウドバックアップを選んだ理由
いよいよ議論の核心に入っていきます。これまで医療情報システムは病院施設内にサーバー機器などのハードウェアを設置して運用するオンプレミス(オンプレ)が大半でしたし、今もなお主流派であります。それなのに、なぜ埼玉よりい病院はクラウドバックアップに踏み切ったのかについてです。


もちろん、クラウド技術を使用することに決定した理由は複合的ですが、やはり前提として厚生労働省が主導する形で医療情報システムをクラウド化していく動きがあったのが大きいといえます。電子カルテのみならず、診療報酬明細書を作成するレセコン、CT・MRIなどの医療用画像管理システム、検査システム、調剤システムといった「部門システム」の標準化を行い、さらにミドルウェアからアプリケーションまでを複数病院で共用できるクラウド型システムを構築していこうとする流れがあるのです。今回の埼玉よりい病院の決断はこうした医療政策上の時流も踏まえつつ、積極的な先行スタートを切っていこうとするものになります。


もっとも、最初から「クラウドありき」で考えていたわけではありません。オンプレミスで全てのバックアップを構築する場合とクラウドバックアップを採用する場合との比較・検証も適切に行っています。特定医療法人 俊仁会には、他に秩父第一病院もありますので、同じグループ病院も含めた既存インフラの状況やランニングコストのバランスなど、さまざまな角度から検討を行った結果、イニシャルコスト(初期投資)の抑えられるクラウドバックアップのほうが優れているという結論にいたったのです。


今もなお、医療機関ではクラウドに対する不信感や抵抗感も残るといわれますが、今やクラウド技術がネット銀行などの金融サービスでも使われるほどの高い信頼性を得ています。小松氏は「医療情報をクラウドで運用する際のリスクは極めて小さく、むしろ自然災害などのリスクも低減できることからメリットが大きい」として、院内や法人内の関係者へ理解を求めてきました。
AWSを選定した際の主な論点
もちろん、クラウドサービスを提供しているのはAWSだけではありません。そのほかにも大手でいえば、Google CloudやMicrosoft Azureといった選択肢がありましたが、小松氏はAWSサミットや学会報告などを通じてAWSが最有力候補だと考えていました。


最終的にAWSを選定した理由は「バランスの良さ」とのことですが、ここでは主なポイントを「医療機関の導入実績」、「セキュリティの堅牢性と高い信頼性」、「従量課金でのサービス提供」の3点に分けて解説したいと思います。
・医療機関での導入実績
小松氏は「Google Cloudが最先端の技術を打ち出していて、他にはない魅力的な部分もあると感じていましたし、Microsoft AzureはOffice 365やTeamsといったツールと統合しやすい点は考慮しました」と述べながらも、医療機関に特化した実績の面ではAWSのほうがリードしていると考えたそうです。


併せて「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」(2023年5月)のシステム運用編に準拠したかたちで構築する必要がありますし、2024年6月に改定された「診療録管理体制加算1」(140点)という診療報酬上の点数を得るのに必要な要件を満たし、医業収入でDXに投資した分のコストを回収することも重要です。エム・シー・ヘルスケアやテクノブレイブの説明にも耳を傾けながら、すでに国内実績も豊富なAWSを採用するとの結論に行き着きました。
・セキュリティの堅牢さ
やや専門的ですが、データバックアップにおいて推奨される管理方法として「3-2-1ルール」というものがあります。確実で安全なデータ保全のために、データは「3つ」のバックアップコピーを作り、異なる「2つ」のメディアに保存し、「1つ」のバックアップコピーはオフサイト(施設と物理的に距離のある場所)に保存するというものです。


このような体制を構築しておけば、仮にランサムウェア被害を受けたり、あるいは施設が自然災害に遭ったりした場合でも、すみやかにデータ復旧を図ることができます。しかしこれだけの堅牢なセキュリティを担保するのを医療機関が自力で行うのは大変なことで、人的リソースだけでなく、相当な費用もかかるため、あまり現実的ではありません。しかしAWSであれば、「3-2-1ルール」に則ったバックアップをクラウド上で構成することが可能になる点は大いに魅力的でした。
・従量課金でのサービス提供
AWSのサービスは、実際に使用した分を1円未満に至るまで細かく計算して課金するという徹底的な従量課金の料金体系となっています。これは病院のようにリソースの使用が変動する施設にとって理想的なものです。


仮にAWSのクラウドバックアップを利用中の病院がサイバー攻撃を受けた際、通常時は使わない別の機能を利用して復旧作業を行うことになりますが、こうした有事にしか使わない機能は通常時に課金されることはありません。あくまで必要な分だけのリソースを柔軟に利用できるのも好ましいと考えられました。


このようなAWSの特長を存分に生かしながら、クラウドバックアップ体制構築を「最初のゴール」とする本プロジェクトは2024年12月末の稼働開始に向けて進行中です。システムが完成すれば、診療データの安全性が飛躍的に向上し、サイバー攻撃や自然災害が発生しても速やかな電子カルテ復旧などがいよいよ可能となります。
埼玉よりい病院。近くにはのどかな田園風景が広がる。
深刻な医師不足課題。生成AI活用で「医師の働き方改革」に踏み込む
最後に埼玉よりい病院がAWSによるクラウド環境を生かした次なる一手についてご紹介したいと思います。それがAWSの生成AIプラットフォーム「Amazon Bedrock(アマゾン ベッドロック)」などを利用した業務効率化です。


現在、生成AIはさまざまな場面で見聞きしますが、患者の症状、治療・投薬状況などの情報を一般に開かれた各種の生成AIサービスへ入力すると、それがどのようにデータ利用され、どのように学習されるか不明点も多いため、大きなリスクが伴います。そこで医療機関ではオンプレミスあるいは特定のクラウド環境などの外部から隔絶された環境を構築して、その中で生成AIを利用することになります。このような医療機関向けに安全な生成AIの利用環境を低コストで整備できる仕組みがAWSのサービスにはあるのです。
文書作成をAIがサポート。退院サマリや紹介状作成を効率化
埼玉よりい病院がまず着手しようとしているのは、医師による文書作成業務の負担軽減です。「医師の働き方改革」が2024年4月1日に施行され、勤務医の時間外・休日労働時間の罰則付き上限期限が設けられ、年間労働時間が960時間、月間労働時間が100時間未満に制限されています。もちろん医師の健康を守るために必要な制度改正ではありますが、やはり医師のリソース不足に拍車がかかることは否めません。深刻な医師不足に悩む埼玉県内であれば、なおさらでしょう。このような背景から医師の業務負担をAIにタスクシフトするところから開始するという考え方です。


今、具体的に検討しているのは、入院患者の病歴や入院中に受けた内容について要約した退院サマリ、医師が他機関の医師に患者を紹介する際に発行する紹介状(診療情報提供書)での生成AI利用です。


生成AIで電子カルテなどの病院内のシステムと連携して必要な情報を抽出し、それぞれの文書の下案を生成します。医師は生成AIのアウトプットを確認して一部に必要な書き直しをした上で文書を完成させるのです。また、職員向けには「院内マニュアル」をもとにしたAIチャットボットの導入も計画されています。これにより、日常業務における情報共有と問題解決がより迅速かつ簡単になると期待されています。
クラウドバックアップとAI活用で地域医療を守る。守りと攻めのDXを
まとめましょう。埼玉よりい病院のDXプロジェクトは「医療情報の強靭化」と「生成AIによる業務省力化」からなるものであり、「医療を止めない」が基本コンセプトです。特に2024年末に完成予定のクラウドバックアップ体制の構築はいわば「守りのDX」であり、同じICT基盤の上に進められる生成AIの活用を「攻めのDX」と位置付けています。前者は診療データの安全性と強靭性を飛躍的に高める重要な取り組みですし、後者は医療従事者の業務を省力化し、患者と向き合う時間を増やすことで、医療の質を高めることが期待されています。


「AWS」と聞くと、どこか敷居が高いイメージを持つかもしれませんが、中小病院であれば、オンプレミスよりも低いコストで導入できますし、埼玉よりい病院でのDXプロジェクトの事例は、「地域医療の最後の砦」としての性格を持つ医療機関との親和性の高さも示しているのではないでしょうか。


今回、エンジニアとして携わったエム・シー・ヘルスケアの冨澤は、医療機関におけるDX推進は単なる効率化の手段ではなく、医療の質を高める道筋であり、それだけに院内の情報システム部門が果たすべき役割は日増しに大きくなっていると指摘します。さらに「地方の中規模病院にとって、クラウドは数ある選択肢の一つではなく、経営的にも運用的にも優れた選択肢であると感じています。今回の埼玉よりい病院のDX推進のモデルは、全国の地域医療が直面する課題を乗り越えるための指針になるはず」と、次なる展開に意欲を見せました。


最後に「当院のクラウドバックアップと生成AIの導入は、地域の患者さんの安心と医療従事者の働きやすさと真剣に向き合っていく中で行きついたもの」という神戸理事長の印象的な言葉を引きながら、締めくくりたいと思います。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社より
AWSは、埼玉よりい病院が掲げる「医療を止めない」というコンセプトに、深く共感いたします。


今回、埼玉よりい病院の有する患者様の大切な医療データを最高水準のセキュリティで保護するクラウドバックアップの構築に、エム・シー・ヘルスケアの新しいサービスとして、また、AWSの活用経験の豊富なテクノブレイブと一緒に取り組めたことを大変光栄に思います。埼玉よりい病院の「次の一手」となる生成AIの活用は、「医師の働き方改革」という大きな課題に対して注目される取組みとなるはずです。退院サマリや診療情報提供書の作成支援、院内マニュアルの効率的な運用など、医療従事者の皆様の業務効率化と、より質の高い医療サービスの実現に向けて、AWSとしても全力でサポートいたします。


こうした埼玉よりい病院の取組みが、地域医療の将来像を示すものになることを期待しております。


アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
パブリックセクター統括本部 ヘルスケア事業本部長
大場 弘之
埼玉よりい病院の概要
病院名:特定医療法人俊仁会 埼玉よりい病院
所在地:369-1201 埼玉県大里郡寄居町用土395
電 話:048-579-2788
病床数:145床(一般急性期病棟47床、医療療養病棟48床、回復期リハビリテーション病棟50床)
医療機能:救急指定病院(二次救急)


(執筆:エム・シー・ヘルスケア株式会社 事業開発部 板橋祐己)

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