食べてもファスティング状態を維持できる!米国で話題の新ファスティングメソッドを、日本人に受け入れられる形へと導いた研究開発の舞台裏

2024.09.03 10:00
ファスティングは年々注目が高まっており、美と健康にさまざまな効果があるとわかってきています。しかし、空腹を我慢するのが辛い、生活サイクルに取り入れるのが難しい、回復食の準備が大変など、ファスティングを取り入れることに対してハードルが高いと感じる人も多いのではないでしょうか。長年、ファスティングに着目していたサンスターグループ(以下サンスター)は、新ブランド「ANDFASTING(アンドファスティング)」より、食べてもファスティング※1 ができる擬似ファスティングの考え方を取り入れた食品「カラダにおいしいファスティング」を2024年4月に新発売しました。


※1:ファスティング(断食)とは、乱れた食生活を整え身体のリズムを戻すこと
3食の食事のうち、いずれかの食事をこのファスティングバー1本に代えることで無理なく16時間の食事間隔を作ることが可能になります。生活スタイルに合わせて気軽に食べるファスティングを実施することができ、日本人の味覚に合わせて味や食感にもこだわっています。


本製品は、アメリカの最先端栄養学である、食べてもファスティングができるという「疑似ファスティング(FMD®)」に基づいて開発されました。疑似ファスティングとは、ファスティングをサポートする特別な栄養バランスで構成された食事をとることで、食べてもファスティング状態を維持することができる新しい健康メソッドです。
この新しいファスティングメソッドを日本市場で展開するための製品開発では、これまでの事業とは異なるさまざまな壁を乗り越え、通常の5倍以上の試作を繰り返して発売に至りました。そこで、ファスティング事業部で本プロジェクト統括を務めた仁神、処方開発などを担当した相星、眞田の3名が今回の製品開発の裏側を語ります。




はじまりは社員向けの福利厚生プログラムから。
米国で話題のファスティング研究をヒントに、製品開発に結びついた
サンスターは、「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」という社是を掲げています。様々な事業を通じて、お口の健康を起点とした全身の健康と豊かな人生の提案を推進する中で、36年前から食品事業を展開しています。この食品事業は「心身健康道場プログラム」という社員向けの福利厚生プログラムからスタートしたもので、腸内環境や食養生など健康増進を推進し、そこで得られた知見を生かして製品・サービス開発を行ってきました。そのプログラムの中には以前からファスティングを応用した内容も盛り込まれていましたが、研究情報が不十分だったこともあり、なかなか事業化は進みませんでした。近年になるとファスティングの研究が進み、2021年にファスティング事業の構想を開始し始め、そこで出会った米国の疑似ファスティングの研究に対して仁神は「運命的なものを感じた」と振り返ります。


「健康的な生活を送るためのメソッドの一つとして、長年ファスティングの研究を大切に進めてきた土台がありました。その上で、擬似ファスティングの研究が発表されたとき、食べてもファスティングができるという概念自体が新しく、エビデンスもしっかりしていたので、製品化へのブレイクスルーのきっかけになると感じ、日本にも導入したいと強く思いました。また、研究を発表したL-Nutra社には偶然研究者同士の繋がりがあると分かり、このようなチャンスは他にないと感じました」(仁神)


そうして、疑似ファスティングを考案したL-Nutra社と提携交渉が始まり、製品化に向けての取り組みが始まりました。現場からの自発的な熱意によってボトムアップでプロジェクトがスタートしたこともサンスター内では稀であり、製品化への情熱の強さを物語っています。




同じような仕様が存在しない新しい製品。
レシピ改良から工場選定まで、全てにおいて試練の連続だった
製品化に向けて、まずはアメリカで製品化されているファスティングバーの原材料や味の調査を始めました。約40名の方に実際に食べてもらった結果、バニラやチョコレートのフレーバーが非常に強いことや日本人にとって馴染みがないねっとりとした食感、量の多さなど、食べにくいという声が多く上がりました。そこで、まずは自社のラボでレシピ改良を重ねていくことになりました。


レシピ改良では、日本人の口に合うファスティングバーにするだけではなく、その前提として、食べてもファスティング状態を維持できる特別な栄養バランスである必要があります。具体的に言うと、P(たんぱく質)、F(脂質)、C(炭水化物)のバランスを定められた狭い範囲内に収められるよう処方を検討しなくてはいけないため、原材料の選定からかなりの苦労があったと眞田は語ります。


「原材料はシンプルな製法にこだわり、砂糖不使用で素材そのものの自然な美味しさを楽しんでもらいたいという思いがありました。アーモンド主体で作っているのですが、異なるナッツ類や、同じアーモンドでも違う種類のものを使うとPFCのバランスが崩れてしまい、疑似ファスティングで定められた栄養条件から外れてしまいます。味わいを意識しながら定められたPFCバランス内でベストな処方を検討していくことが今回の製品開発の難しい点でした。バーの大きさについては、約40名に試食していただき、多すぎず少なすぎず最も満足感が高いという声が多かった30gに決定しました」(眞田)


ラボでのレシピ改良の段階で、試作の数は100パターン以上。美味しさを追求するためにもさまざまな面でブラッシュアップを重ねたと話します。


「味のラインナップについては、継続して食べるファスティングに取り組んでいただきたくて、ベーシックで王道なハニー味とカカオ味の2種類を採用しました。カカオ&ナッツ味は、ビターなカカオの風味を引き立てリッチ感を出すためにデーツを使用していますが、プルーンやオレンジ、ベリーなどいろいろな果物で試作しています。ただ果物を入れるだけでなく、ピューレ状のものを組み合わせることで生地をより深みのある味わいに仕上げているのもポイントです。理想の味を実現するため1つ1つの素材にこだわって選定していき、お客様に贅沢な気分で味わってもらえるような香味を追求しました。1本で満足感が得られる食べごたえにもこだわっています。アーモンドは、粉状のアーモンドプードルと、食感を楽しめるようクラッシュした粒状のものをベストな比率で組み合わせています。また、食感はねっとりしすぎてもパサパサしすぎても食べにくいため、しっとり感がありながらも食べてもこぼれ落ちにくい理想のバーを追求。そのために、アーモンドのロースト加減やバーの焼き時間、水分量の絶妙なコントロールを何度も試行錯誤しました。」(相星)


ここまででもかなりの試作を繰り返しましたが、工場での製造段階に入ると想像もしていなかった壁に直面します。日本各地の工場に製造可能かどうか相談をしていく中で、バーの製造が経験豊富な工場でも「この仕様と同じものは作ったことがない」と言われてしまったのです。というのも、バーは通常水あめやチョコレートなど、接着剤の役目を果たす素材を入れることが多いですが、このファスティングバーは、余計なものを入れるとPFCバランスが崩れてしまうため、最低限の素材でバーの成型をする必要がありました。メンバーが一丸となってリサーチし、ようやく成型面の条件を叶えられそうな工場を見つけることができましたが、課題は続きます。
「この製品はナッツ由来の脂質を多く含んでいるという特徴があります。そのため、生地を成型機に流し込んで固めると、油がにじみ出てしまったり、生地がちぎれてしまったり、生地の表面が毛羽立ったりと、なかなかきれいに成型できませんでした。さらにそれが、後のカット工程で重量のばらつきに繋がってしまうという大きな課題を生みました。そこで、PFCバランスの定められた範囲を守りながら原料の配合を大きく見直し、焼き加減や水分量などの細かなテストを繰り返して、成型面・味・食感や品質など、全ての条件を満たす製造方法を確立していきました。」(相星)


製造工場の段階では約80パターンを試作し、更に社員を対象に、この製品を摂取してもファスティング状態が維持できているか臨床試験も行い、普段から自社で行っている食品開発の約3倍のスピード感で発売にまで至りましたが、いずれも前例のない試作数と早さでした。






ファスティングという概念を覆し、新たな可能性を切り拓く
理想の製品と製造の難易度の高さの間で葛藤しながらも、製品への強い想いを胸に可能性のあることは全て試すという精神で改良を重ね、ようやく製品化が実現。この製品が美容や健康に関心のある人々にどのように役に立ってほしいか、また今後の製品開発について目指すことについて、3人にそれぞれが語ります。


「私自身も美容や健康に興味があり、この製品開発は苦労しながらも楽しみながら取り組むことができました。ファスティングを通して自己肯定感がアップし、生き生きとした毎日を送っていただけたらと思います。そんなサポートの一つに、このファスティングバーが一役買えばいいなと思います。また、美容医療の進化によりアンチエイジングへの関心が高まっていますが、美と健康の追求には内面からの土台作りも大切です。若いうちから意識することで年齢を重ねたときの結果が変わってくると思います。内面からの美と健康に焦点を当て、お客様がより輝く毎日を送れるようになるために、魅力的だと思ってもらえるようなファスティングの製品開発を進めていきたいと思っています」(眞田)


「この製品はファスティングという概念を覆し、新たな可能性を切り拓くものだと思っています。ファスティングを知っている人も知らない人も、この製品を通してファスティングにチャレンジしてみようと思ってくださり、実際にファスティングをするときの心強い味方になれば幸いです。また、食との向き合い方や食の楽しみを見つめ直し、より健康的な食生活を送るきっかけとなることを願っています。今後は、身近な食材で手軽にファスティング食を楽しめるレシピ開発に取り組んでいきたいです。お客様が自由にアレンジできるメニュー提案を通じて、ファスティングをより身近なものにしたいと考えています。現在開発中の製品に加え、パン、スープ、サラダ、麺類など、一食を構成できるようなラインナップを拡充し、普段の食事を楽しみながらファスティングも実践できる、そんなわくわくするような製品を展開していきたいと考えています」(相星)


「食べるファスティングを取り入れることで、無理なく健康に気を遣いながら、無駄な食べ物を減らせる方法として、フードロス削減にも貢献できると考えています。長年の夢であった製品化が実現しただけでなく、社会に貢献できる製品作りに携われたことを心から嬉しく思います。「ファスティングはまだ科学的に解明されていないことが多い分野です。そのため、引き続きファスティング方法の研究に取り組み、今後もお客様のお役に立てるような製品作りをしていきたいと思っています」(仁神)




3食の食事のどれかをファスティングバー1本に置き換えることでファスティングを気軽に始めることができます。新体験の食べるファスティング、ぜひ試していただきたいと思います。
ライフケアイノベーション事業部 仁神史生
2005年入社。「健康道場」ブランドの玄米菜食を中心とした、製品研究開発や臨床研究を担当。またグループ内ヨーロッパ地域での野菜飲料の海外展開なども担当。以降ライフケアイノベーション事業部にて本プロジェクト研究開発統括を担当。
ライフケアイノベーション事業部 相星晴佳
2019年入社。健康道場シリーズ「特定保健用食品 緑でサラナ」を担当し、コレステロール代謝の評価実験や分析方法の確立など基礎研究部門に注力。また同ブランドの新製品開発も担う。2022年からファスティングプロジェクトに参画し、処方開発を担当。
ライフケアイノベーション事業部 眞田ゆり乃
2021年入社。入社当初からファスティングプロジェクトに参画し処方開発、臨床研究に取り組む

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