「すべての子どもとその家族、そして看護師が健やかに生きる社会をつくる」をビジョンに掲げ、医療的ケア児とその家族に特化した訪問看護サービスを展開するソイナース株式会社。
5月12日の「看護の日」に、その新たな拠点「ソイナース訪問看護ステーション群馬Ship(以下、ソイナース群馬Ship)」がスタートします。代表を務めるのは、NICU(新生児集中治療室)で10年のキャリアを持つ女屋(おなや)さん。なぜ彼女は、慣れ親しんだ病院を離れ、訪問看護の世界へ、そして故郷である群馬での立ち上げを決意したのか。NICUでの経験、医療的ケア児とその家族が抱える課題、そしてソイナース群馬Shipが目指す未来について、詳しくお話を伺いました。
看護師への道と、小児医療への関心
―まず、女屋さんのこれまでのご経歴と、看護師を目指されたきっかけを教えてください。
女屋さん:群馬県で生まれ育ち、高校卒業までずっと群馬で過ごしました。大学は栃木県の獨協医科大学に進学し、看護学を学びました。代表の横山とは、この大学で出会いました。
実は、看護師を強く目指していたわけではないんです。もともと子どもが好きで、母が保育士だったこともあり、最初は保育士もいいかなと考えていました。でも、なんとなく流れで看護の道へ進み、気づけば看護師になっていた、という感じです。強い思いや明確なきっかけがあったわけではないのですが、結果的にこの道を選んで良かったと思っています。
―小児、特にNICU(新生児集中治療室)に関心を持たれたのはいつ頃からですか?
女屋さん:在学中は特に小児に絞っていたわけではありませんでした。でも、実習でNICUに行ったときに強くやりがいを感じ、「やっぱり小児の分野がいいな」と思うようになって。卒業論文でもNICUのお母さんとの関わりをテーマに選びました。その頃から、成人看護よりも小児看護の分野で働きたいという気持ちが漠然とありましたね。
NICUでの10年間で見えた「観察力」の重要性と家族の課題
―大学卒業後はNICUで勤務されたのですね。
女屋さん:はい、最初の7年半ほどNICUで働き、その後、出産を経て一度別の病棟に移りました。二人目の出産後、復帰する際に「やはりNICUで働きたい」と希望を出し、再びNICUへ。そこでさらに2年間勤務し、トータルで10年近くNICUに携わりました。
―NICUでの経験は、今回の立ち上げにどのように活きるとお考えですか?
女屋さん:NICUにいる赤ちゃんは、言葉で自分の状態を伝えることができません。だからこそ、看護師の「観察力」が非常に重要になります。顔色や呼吸、動きのわずかな変化を見逃さず、その小さなサインをキャッチすることが、赤ちゃんの命を守ることに繋がります。ちょっとした変化に気づき、対応する力は、NICUでの経験を通して培われた大きなスキルだと感じています。この観察力は、訪問看護の現場でも必ず活かせると信じています。また、急変時の対応など、緊急時の判断力や対応力もNICUで鍛えられました。
小さなサインを見逃さない観察力が重要だと語る
―NICUで医療的ケア児とそのご家族と関わる中で、どのような課題を感じていましたか?
女屋さん:私たち病院で働く看護師は、必ずしも地域の在宅ケアの状況に詳しいわけではありません。そのため、退院指導の際も、どうしても病院でのやり方をベースにお伝えすることになります。それがご自宅に帰った後、本当に実践できるのか、ご家族の生活スタイルに合っているのか、という点にギャップを感じていました。
退院前は「何か分からないことはありますか?」と聞いても、実際に家での生活が始まらないと具体的な疑問は出てきにくいものです。退院後に電話で様子を伺ったり、外来でお話を聞いたりする機会はありましたが、それだけではご家族の不安をすべて解消するのは難しいと感じていました。
また、当時は群馬県内に、医療的ケア児とその家族を専門的にサポートする訪問看護ステーションが充実していたわけではありませんでした。小児対応の訪問看護はあっても、成人がメインで、小児はその一部というケースが多かったように思います。
ソイナースとの出会い、そして群馬での挑戦へ
―ソイナースを知り、参画を決めた経緯を教えてください。
女屋さん:大学の同級生である横山から「一緒にやらないか」と声をかけられたのがきっかけです。ソイナース初となる東京以外での進出ということもあり、正直、最初は不安も大きかったですし、今でも若干の不安がなくはないです(笑)。東京と群馬では、制度の充実度も、看護師の働き方に対する考え方も異なります。東京では一般的な「隙間時間でのバイト」という働き方も、群馬ではまだそれほど浸透していないと感じています。看護師を確保できるだろうか、という点が一番の懸念でした。
―それでも、群馬での立ち上げを決意された理由は?
女屋さん:不安はありましたが、それ以上に「やりたい」という気持ちが強かったからです。NICUでの経験を通して、退院後のご家族が抱える不安や課題を目の当たりにしてきました。特に、小児専門の訪問看護をやりたいと考えている看護師は一定数いるはずなのに、受け皿が少ない現状がありました。ソイナースのように「小児専門」を掲げることで、そうした看護師たちが集まり、専門性を活かせる場を提供できるのではないかと考えました。
そして何より、生まれ育った群馬に貢献したいという思いが強かったです。群馬は災害が少なく、最近は移住先としても人気が高まっています。私自身も群馬が好きですし、この地で子育てを頑張っているご家族の力になりたい、その思いが大きな原動力になりました。
ソイナース群馬Shipが目指す未来、誰もが自分らしい人生を歩めるように
―ソイナース群馬Shipを通して、どのようなことを実現したいですか?
女屋さん:ソイナースが掲げる「すべての子どもとその家族、そして看護師が健やかに生きる社会をつくる」というビジョンを、群馬でも実現したいです。医療的ケア児のお母さんは、お子さんのケアに追われ、社会から取り残されたような孤独感を感じやすい状況にあります。私自身も、出産後仕事をしていない時期に同じような気持ちを味わった経験があります。特に、医療的ケア児の保護者の中には、ケアのために働きたくても働けない方も少なくありません。
ソイナースのサポートが入ることで、お母さんが少しでも自分の時間を持てるようになったり、安心して働けるようになったり、ほっと一息つける瞬間が生まれたり…。お子さんだけでなく、親御さん自身の人生も大切にできる、そんなサポートを目指したいです。お子さんのケアに全てを捧げるだけでなく、親御さん一人ひとりが自分らしい人生を歩めるよう、伴走していきたいと考えています。
―現場視察で印象に残っていることはありますか?
女屋さん:東京のソイナースの現場を視察した際、ご家族が不在の中、看護師がお子さんと一緒に家に入り、ケアを始める光景に衝撃を受けました。病院では考えられないことです。これは、ご家族とソイナースとの間に、深い信頼関係があってこそ成り立つものだと強く感じました。
また、ご自宅でのケアは、病院とは違い、本当にご家庭ごとにやり方が様々です。お風呂の入れ方、食事の準備、物品の管理一つとっても、そのご家庭のスタイルがあります。その多様性に寄り添うことの大切さを改めて実感しました。
特に、夕方の忙しい時間帯にサポートに入れるソイナースのサービスは、核家族化が進む現代において、本当に必要とされているものだと確信しました。これは東京だけでなく、群馬、そして全国のご家族が望んでいるサービスだと思います。
潜在看護師の力、多様な働き方を群馬に根付かせたい
―群馬における看護師の働き方について、どのように考えていますか?
女屋さん:子育てや介護などで一度現場を離れると、ブランクへの不安から復職をためらってしまう看護師さんは少なくありません。素晴らしいスキルや経験を持っているのに、眠らせてしまっているのは本当にもったいないことです。
ソイナースでは、1時間からの短時間勤務や副業も可能です。研修制度やOJTも充実しており、ブランクのある方でも安心して働ける環境を整えています。
こうした多様な働き方が、群馬でも当たり前になるように、まずはソイナースの働き方を知ってもらうことから始めたいです。「こういう働き方もあるんだ」「これなら私にもできるかも」と思ってもらえるように、積極的に情報を発信していきたいですね。
―ソイナースは複数担当制を採用していますが、その点についてはいかがですか?
女屋さん:最初は「毎回同じ人に担当してもらった方が安心なのでは?」とも考えました。しかし、ソイナースでは、お子さん一人ひとりに合わせた詳細なマニュアルを作成し、どの看護師でも質の高いケアを提供できる体制を整えています。初回訪問には必ず社員が同行し、指導を行うなど、サポート体制も万全です。
複数の看護師が関わることで、多様な視点からの気づきが生まれ、より良いケアに繋がるというメリットも大きいと感じています。また、複数で担当することで、ご家族の希望通りの日程でケアに入れる可能性も高まります。固定観念にとらわれず、様々な角度からお子さんとご家族をサポートできるのが、ソイナースの強みだと思います。
必要なのは、何よりも「愛情」。地域との連携で、子供たちの可能性を広げる
―ソイナース群馬Shipでは、どのような方と一緒に働きたいですか?
女屋さん:スキルや経験ももちろん大切ですが、何よりも「子どもへの愛情」を持っている方と一緒に働きたいです。技術は後からでも身につけられますが、子どもを想う気持ちは何にも代えがたいものです。
また、子育て経験のある方は、ご自身の経験を通して、お母さんの気持ちに深く共感できる強みがあります。私自身、子育てを経験してからの方が、より自信を持ってご家族と関われるようになったと感じています。
―今後、地域や行政とどのように連携していきたいですか?
女屋さん:群馬ではまだ、保育園や学校における医療的ケア児の受け入れ体制が十分に整っていない部分があると感じています。ソイナースが学校などにも関わることで、お子さんが安心して社会生活を送れるように、そして、親御さんが付きっきりにならずに済むようにサポートしていきたいです。親御さんが自分の時間を持てることは、就労支援にも繋がり、ひいては地域全体の活性化にも貢献できると信じています。行政とも連携し、ソイナースの存在意義を伝え、医療的ケア児とその家族が地域で安心して暮らせる環境づくりに貢献していきたいです。
抱え込まず、頼ってほしい。あなたの力を待っています。
―最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
女屋さん:
<医療的ケア児とそのご家族へ>
これまで、「こんなことを頼んでいいのかな」「家族で頑張ればなんとかなる」と、たくさんのことを抱え込んできたかもしれません。でも、どうか一人で悩まず、ソイナースに相談してください。お子さんとご家族が、心身ともに健やかに、自分らしく過ごせるよう、どんなサポートが必要か一緒に考えさせてください。私たちは、皆さんのすぐそばにいます。
<看護師の皆さんへ>
群馬の看護師さんの中には、まだソイナースのことをご存じない方も多いかもしれません。ソイナースは、あなたのスキル、知識、経験を必要としています。子育てなどでブランクがある方も心配いりません。充実した研修とサポート体制で、あなたの再チャレンジを全力で応援します。「1時間だけ」「週に1日だけ」そんな働き方も可能です。
少しでも興味を持っていただけたら、まずは気軽にLINEなどでご連絡ください。あなたの力を、地域の子どもたちとご家族のために役立ててみませんか?一緒に働ける日を楽しみにしています。
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