テレビ取材で見えてきた小児の訪問看護の必要性と「育児への自信」

2025.03.05 13:22
株式会社ピースコネクトでは、2022年より小児を中心とする訪問看護ステーションピースコネクトを運営しております。当ステーションは設立から2年が経ちましたが、先日地元テレビ局の報道番組では低出生体重児の利用者様へのケアの様子が放送されて多くの反響がありました。
 今回は、これまでの状況を振り返り、テレビ取材を経てどのように変化したか、前管理者・現営業担当の茅野と、現管理者の池田へのインタビューをお伝えします。
「続けていてくれてありがとうございます」と言われた
―前回PR TIMES STORYを配信したのは、1年以上前の2023年12月でした。記事の反響はいかがでしたか?
茅野:記事を読んでくださった利用者様のご家族や病院のスタッフからは、「すごく大変な時期を乗り越えたんですね」と言っていただきましたし、何度か「ここまでステーションを続けていてくれてありがとうございます」と言われています。当ステーションが必要とされていることが伝わってきますし、とてもありがたいですね。
 ステーションの設立から2年が経ちましたが、利用者ゼロ、スタッフゼロの状態だったことを考えると、やっと軌道に乗ってきたなと感じています。利用者様の数が安定してきたということもありますし、スタッフも増えて自分の気持ちの面でも安定してきましたね。


―この1年での変化はありましたか?


茅野:昨年は初めて、利用者様同士の交流会も開催しました。訪問看護を利用するご家族様から「他のお宅ではどのようにしているの?」とよく質問がありましたが、個人情報の関係でスタッフからはお伝えできないことがほとんどで。利用者しているご家族様同士が直接お話することで、共に低出生体重児を育てる仲間の存在が力になり、より安心して楽しく育児ができるのではないかと考えて企画しました。
 参加者様にはとても好評でしたし、地元の新聞記者様が取材にお越しくださり、翌日の新聞にも交流会の様子を掲載していただきました。
茅野:設立初期は利用者様を増やすことに注力してきましたが、今度は看護師としてはもちろんのこと、訪問看護という分野として、クオリティを伸ばせる時期に入ってきたのではないかと考えています。
 これまで原則としてきた「断らないステーション」は継続していますが、ありがたいことに利用者様が増加したことや、利用者様のニーズが当ステーションと合わないこともあり、断らざるを得ないことも出てきています。実際、スタッフの技術や負担度の部分でやむを得ず断ってしまったケースもありますね。
 「自分たちにできることをする」という当たり前のことを継続することの難しさを感じた1年でしたし、正直なところ、訪問、営業、管理業務全てを自分がしなければならない状況が大変で。認定看護管理者の研修で言われていたのは「管理業務は看護の質を高めること」。でも当時はステーションの継続が最重要課題だったので、正直そこまで辿り着けませんでした。やりたいことがたくさんあるのに、時間がない…と、管理者としてモヤモヤを抱える毎日でした。
管理者交代とテレビ局の取材による意識の変化
―池田さんが管理者に、茅野さんが営業担当者に変更となりました。その後どのような変化がありましたか?


池田:正直、やっぱり現場にいた方が楽しいな、とは思います。他のスタッフと同じように訪問に行きながら、管理の仕事をするのは難しいですね。前管理者の茅野さんに確認することもたくさんあって、手探りのところも多く管理者としてはまだまだではありますが、周りの方々に助けてもらいながらなんとか頑張っています。


茅野:営業の面では回数を重ねていることもあり、病院や自治体の担当の方との関係性が築けてきたように感じています。当ステーションのニーズがどこにあるのか、今どのような状況の方が増えているのか、など営業を通して事前に伺うことで見通しを立て、退院後にはできる限り断らずに受け入れられるように調整したり、空き状況の予定を事前にお伝えすることで安心してご依頼いただけるように意識したりしています。
 また、病院のスタッフは退院後のお子様の様子を目にする機会はなかなかありません。ですが実際は気になっているということは、これまでの自分自身の病院勤務の経験からも感じていました。そこでご家族に許可をいただき、病院に営業で伺う際に卒業したお子様の現状のお写真を共有すると、「こんなに成長したんだ!」と喜んでいただけたこともありましたね。


―先日は報道番組の特集コーナーでテレビ取材も入りました。反響はいかがでしたか?
(仙台放送Live Newsイット!「2500グラム未満で出生 “低出生体重児”支える訪問看護 子供と親にとって大切な支えに」)


池田:とても反響が大きかったですね。普段訪問に伺っているご家庭でも「見たよ」と言っていただきましたし、娘は同級生から「お母さん出てたね」と言われたようです。幅広い年齢層で多くの方に見ていただけたことを実感しています。


茅野:病院や自治体の保健師さんからも「見ました!」と声をかけていただいたり、県外の全く関係ない方から突然「ニュースを見て感銘を受けました、応援しています」と激励のお電話もいただき、感動しました。


池田:当ステーションを利用中で、同じ低出生体重児を育てるお母様からは「自分と同じことで皆さん悩んでいるんだなと思った、共感した」というお言葉をいただきましたし、別の方からも「我が子もNICUに入っていたけれども、NICUにそんなに小さいお子さんがいて、大きくなって退院できることに驚いた」という声も聞かれました。
―取材を経て、変化はありましたか?


池田:私が放送を見て一番心に残ったのは、取材を受けてくださったお母様のコメントでした。お母様の心理面は一通り看護師の知識として知っていたつもりでしたが、普段お会いしている明るいお母様が「育児に自信がない」「不安」という気持ちを抱いていたと話されていたことで、改めてこれまでの訪問でフォローができていただろうかと振り返るきっかけになりましたし、今後の展望へのヒントをいただきました。
ご家族様が自立し自信を持って育児ができるような支援
池田:実はこれまで「訪問看護を卒業するタイミングが難しい」という話がスタッフ間のミーティングで何度も挙がっていました。訪問看護の利用により「安心して育児ができる、不安があってもつながっているだけで自分の自信につながる」というお母様のコメントから、ご家族が「自信を持って育児に取り組める」と感じた時が訪問看護を卒業するタイミングなのではないか、私たちは育児を手伝うことはいくらでもできるけれども、毎回の訪問の中でご家族様が自立して自信を持って育児ができるように支援するという部分にも着目し、ケアを提供することが一つの役割なのではないか、と考えるようになりました。


―今後の展望は?


池田:ご家族が自信を持って育児に取り組めるように支援していくことが私たちの役割だとすると、そのためには①NICU退院児の育児支援のための連携、②母子が安心して生活できるために必要な実践力の向上、③低出生体重児の訪問看護の必要性の普及、の3点が必要だと考えています。


 まず一つ目の『NICU退院児の育児支援のための連携』ですが、利用者様の診療とフォローアップを担当する主治医、行政的視点で制度や社会資源の活用と支援を行う地域の保健師、日常的な健康管理を担当する地域のかかりつけ医師、そして専門家としての育児支援とコーディネーター的役割を担う私たち訪問看護師、この4者間での連携が大切です。その調整役となるのが、定期的に利用者様の家庭を訪問し自在に対応できる私たち訪問看護師。それぞれを調整し、情報の流れを円滑にする役割を担えると考えます。
 例えば、訪問看護師が主治医と連携していれば「体重が増えていないが今の授乳ペースでいいか、経管栄養の量を増やすようご家族にお伝えしていいか」など、ちょっとした変化を随時報告・相談して改善し、次の受診を良い状態で迎えることができます。実際、私たちが主治医に連絡するか迷いながらもそのまま様子を見た結果、受診の際に「体重が増えていないので授乳量を増やしましょう」と言われたケースも何度かあり、せっかく訪問看護が入って情報を持っているのに活かしきれていないもどかしさを感じていました。各職種での連携を強化することで、より利用者様やご家族様が安心して生活できるようにしていきたいですね。


 また、二つ目の『母子が安心して生活できるために必要な実践力の向上』には、定期的な研修会だけではなく、必要に応じ不定期での研修会を開催したり参加したりするなど、スタッフの教育を充実するためのシステム構築が必要ですし、三つ目の『低出生体重児の訪問看護の必要性の普及』には病院や自治体との連携が必要不可欠です。


茅野:小児訪問看護の対象となることを「出産後も退院後も知らなかった」とお話される方も多いですよね。出産した病院からは情報提供されず、退院してご自宅で生活を始めてから自治体の保健師さん経由でご相談いただくケースも多いです。そのため、自治体向けの資料には、訪問看護を利用するために必要な情報をまとめてお渡しするようにしています。


池田:病院でも、医師に訪問看護の必要性やメリットを知ってもらう必要があると考えています。メリットとは、看護師からタイムリーな報告により家庭での様子や問題点を把握できることや病院サイドで考えている以外の問題点を把握できること、事前の情報共有により外来受診時の介入がスムーズなることなど。
 私たちが定期的に訪問に行くことで情報を持っているという部分が、他の職業にはない強みです。地域で利用者様やご家族が安心して生活できるように、私たちの強みをどんどん活かしていきたいと思っています。

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