乳がん手術後の補整下着からリンパ浮腫ケア用品まで、患者様一人ひとりに寄り添った製品開発とサービスを提供する『ユコー株式会社』。日本における乳がん患者向け補整下着のパイオニア企業として50年余り、その独自の企業理念とこれからの展望を次期代表取締役の戎谷洋輝(えびすやひろき)さんに伺いました 。
◆創業の原点〜祖母の体験から始まった患者支援
『ユコー株式会社』は1973年、医療器具メーカーに従事してきた戎谷洋さん(ゆたか、現代表、洋輝氏の父)、戎谷れいこさん(洋輝氏の母)、さらにもう1名により創業した会社です。ユコー(YUKOR)とは、3名の名前からの造語だそうです。事業の転機となったのは、創業者の母(洋輝氏の祖母) が乳がんを発症したことでした。
当時は乳房と胸筋を大きく切除する手術が一般的で、術後の補整具に関する情報も少なく、試着する機会もありませんでした。
そんな中、洋裁の知識を持つ戎谷れいこ氏が、祖母のために術後の補整下着を自作したことが、現在の事業の始まりでした。
「母は祖母の手術後の姿を見てショックを受け、何かできることはないかと考えたそうです。インターネットもない時代、独学で下着作りを始めました。」と、洋輝氏は当時について語ります。
◆充実の製品ラインナップと製造体制
現在、ユコー株式会社では以下の3つを主力製品として展開しています。
1. 乳がん手術後の補整下着(自社工場製造)
2. シリコン製人工乳房(ドイツから製品輸入)
3. 弾性着衣(自社工場製造)
東京都足立区西新井の自社工場では、熟練の技術者たちが丁寧に下着を製造。約20名の従業員が、一つひとつの製品に、想いを込めて製作に当たっています。 「大手メーカーとは異なる、きめ細やかな製品作りこそが私たちの強みです。」と、洋輝氏は語ります。
医療技術の進歩により、乳がん手術の方法も多様に変化してきました。しかし、手術後の日常生活への復帰をサポートする重要性は、昔も今も変わることはありません。
「フィッティングの時間は、患者様の生活スタイルや活動レベルを丁寧にお伺いする大切な機会です。体型に加え、それぞれの状況に合わせた最適な補整下着を提案することで、術後の不安を少しでも取り除き、通常の生活にいち早く戻れるようにサポートしていきたいと考えています。」と、洋輝氏。
実際、フィッティングでは予約制を採用し、一人ひとりの患者様にじっくりと向き合う時間を確保。生活シーンに合わせた製品選びのアドバイスや、着用方法の丁寧な説明を行っています。そこで得られる貴重な声は、新製品の開発や既存製品の改良にも生かされています。
また『ユコー株式会社』の最大の特徴は、全国約100カ所の病院での定期的な試着会の実施です。東京・横浜・名古屋・大阪の直営店に加え、地域ごとに定期的な訪問を行い、地方在住の患者様にも細やかなフィッティングサービスを提供しています。
そして豊富なサイズ展開も特筆すべき点です。『ユコー株式会社』では一般的な下着に比 べて、ほぼ2倍の細かな刻みでサイズを展開。さらに、お客様の体型に合わせたアンダー バストの調整など、カスタマイズにも対応しています。
「定期試着会で仮に事前予約がない日でも、お約束した日時には必ず担当者が伺います。急な依頼にも、しっかりと対応するためです。こうしたサービスの継続が、今日の信頼に繋がっていると考えています。」(戎谷洋輝氏)
昨今では、黒・ピンク・ベージュ・アイボリー・ブルーなどカラーバリエーションも豊富に展開しています。レースを使用した限定商品なども取り揃え、患者様の「おしゃれを楽しみたい。」という願いに応えています。少量多品種生産という、一般的な下着メーカーでは採算の取りにくい生産体制を敢えて採用することで、患者様の多様なニーズに対応しているのです。
「"楽しく、美しく、イキイキと"治療後の生活を送っていただきたい......それが私たちの願いです。」と、洋輝氏は話します。
◆製品開発の源泉はユーザーの声
「日々の試着会で得られる患者様からのフィードバック、そして医療従事者からの専門的な要望。この2つが私たちの製品開発の原動力です。」
例えば、リンパ浮腫用サポーターの開発は、乳がん手術後の患者様から「腕のむくみに悩んでいる」という声が多く寄せられたことがきっかけでした。医療従事者との綿密な協議を重ね、患者様の使用感なども丁寧にヒアリングしながら開発を進めた結果、現在では看護師やセラピストから評価の高い製品として広く認知されるまでに至っています。
また直近では小児患者向けのサポーター製品開発にも取り組むなど、大手メーカーではカバーしきれない領域へもアプローチしています。
「普段は目にすることのない会社かもしれませんが、乳がんを経験された方々が私たちの製品に出合ったとき、前向きな気持ちになっていただければ。」と、洋輝氏。
昨今では乳房再建手術を選択される患者様も増えており、それに対応した下着の研究開発を強化。同時に、リンパ浮腫用サポーターのより一層の機能向上にも取り組んでいます。また乳がんの早期発見・早期治療の重要性を広く伝えるため、ピンクリボン運動の普及啓発活動にも力を入れていく考えです。
「大手メーカーとは異なる、私たちの強みを生かし、これからも患者様に寄り添った製品開発とサービスを続けていきたい。」と、洋輝氏は今後の展望を語っています。
2020年4月、『ユコー株式会社』(東京都足立区、次期代表取締役:戎谷洋輝)は、足立区が認定する「足立ブランド」企業として新たな一歩を踏み出しました。
「知人からの紹介で足立ブランドの存在を知り、『ものづくりのまち』の取り組みに共感して参加を決意しました。」と、洋輝氏は語ります。
新型コロナウイルスの感染拡大により、認定後すぐの活動は制限を余儀なくされましたが、「今後は足立区の企業同士での勉強会や交流を通じて、さらなる企業価値の向上を目指していきたい。」と、期待を寄せています。
■ 足立ブランド認定企業紹介冊子・送付希望の方へ
足立ブランド認定企業であるユコー株式会社も掲載される「足立ブランド認定企業紹介冊子」を10名様に送付させていただきます。送付ご希望の方は下記の応募フォームをご利用ください。
※ 部数に限りがございますので、ご希望者多数の場合はPDF送付になる旨をご了承ください。
足立ブランド認定企業紹介冊子 / 応募フォーム
会社名:ユコー株式会社
住 所:東京都足立区西新井7-14-15
電話番号:03-3896-2651
代表者:戎谷洋(えびすやゆたか)
創 業:1959年
事業内容:
乳がん用補整具、下着、水着、胸帯、ウィッグ、ホームキャップ、
弾性アームスリーブ、弾性ストッキング等の製造・輸入販売
「足立ブランド」は、区内企業の優れた製品・技術を認定して、その素晴らしさを全国に広く発信することで、区内産業のより一層の発展と足立区のイメージアップを図ることを目的とした事業です。『ユコー株式会社』は、この「足立ブランド」認定企業です。
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足立区役所産業経済部 産業振興課 ものづくり振興係
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足立ブランド公式Webサイト