【農文協】創立85周年の記念出版『みんなの有機農業技術大事典』 2025年3月10日発売

2025.03.10 11:34
一般社団法人農山漁村文化協会
『みんなの有機農業技術大事典』が、農文協創立85周年を記念して3月10日に発売されます。
 2021年に農水省が発表した「みどりの食料システム戦略」の後押しもあり、有機農業への関心が大いに高まっていますが、この技術をリードしてきたのは現場の農家でした。農薬や化学肥料を減らしながら、いかにおいしい作物を安定生産するか。全国の農家がこの課題に挑戦し、苦労の末に築きあげた無数の技術の集積こそが有機農業です。失われつつある先人の知恵と技術を後世に伝えるため、農法や流派のちがいを乗り越えて、農家も研究者も、完全有機農家もそうでない農家も、みんなで集まって作ったみんなのための事典、それが『みんなの有機農業技術大事典』です。

一般社団法人農山漁村文化協会(農文協)について
1940(昭和15)年に設立された農文協は2025年3月25日をもって85周年を迎えます。戦後の再建以来、「農家に学び、地域とともに」生きることを根幹にすえて活動を進め、農家をはじめとする多くの方々に支えられて、出版の歩みを続けることができました。

現在、農文協は「農」「地域」「食と暮らし」の三つのテーマごとの定期刊行雑誌を柱として、単行本、映像、事典、全集、絵本など多彩な出版物を発行しています。また、三つのテーマを網羅する電子出版分野にも力を入れています。
企画のきっかけは、農水省が2021年に発表した「みどりの食料システム戦略」
『みんなの有機農業技術大事典』は、天敵昆虫を利用して害虫から作物を守る、米ヌカや納豆で微生物を殖やして病気を防ぐなど、農家や研究者が試行錯誤して編み出した農薬や化学肥料を減らす技術の集大成です。

 企画を立て始めたのは3年前。きっかけは、農水省が2021年に発表した「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)です。

 2050年までの目標として「農林水産業のCO2ゼロエミッション化」(温室効果ガス排出実質ゼロ)や「化学農薬の使用量を50%低減」「化学肥料の使用量を30%低減」、そして「有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大」すると掲げました。

 翌年には「みどりの食料システム法」を施行。「みどり認定」制度を設けて税制や補助金で優遇措置を受けられるようにしたり、「クロスコンプライアンス」や「みえるらべる」を導入するなど、さまざまな施策で有機農業を後押しし始めました。

 その結果、有機農業への関心は大いに高まっています。地域ぐるみで有機農業の拡大を実践する「オーガニックビレッジ」は45道府県131市町村まで拡大(25年1月)。有機農業の面積割合も0.7%まで増加しました(22年度末)。

 一方、地球温暖化による異常気象は毎年当たり前のようになり、世界的な情勢不安で化学肥料の価格は高止まり。昔は身近だった赤トンボやゲンゴロウは減りつつありますが、農薬に抵抗性を持つ害虫や病気は増えています。

 減農薬や減化学肥料の工夫は今後、すべての農家にとって必須となるはずです。有機農業の技術をまとめるなら、今しかないと、本書の発行を決めました。

執筆陣は300人以上、2巻構成2200ページを超える大事典に
農文協の編集部が総出で声をかけた執筆陣は、いずれも第一線の研究者や指導者、農家ら約300人。集まった記事は450本。1冊ではとうてい収まりきらず、「共通技術編」と「作物別編」の2巻構成で計2200ページを超える、文字通りの大事典となりました。
「共通技術編」では、有機農業の歴史や、制度の仕組み、地球温暖化防止や生物多様性維持に果たす役割のほか、緑肥や天敵利用、不耕起など作目横断の栽培技術を、農家事例を交えて紹介します。

「作物別編」では、水田や畑作物、野菜や花、果樹や茶、畜産の技術を品目ごとに網羅。それぞれ第一人者の農家に経営事例を執筆してもらい、品目別のつくりこなし方、雑草や病害虫対策など課題克服の工夫も読めます。

 巻末に設けた「索引」に掲載された用語(キーワード)は約2000ワード。有機農業について知りたいことがあれば、およそ調べられる。多くの著者の協力によって、そういえる事典になりました。
最大の特徴は農家の技術
 そして、本書の最大の特徴は、取材対象者を含めると150人も登場する農家です。農文協はこれまでにも大事典と名のつく本を多数出してきましたが、農家がこれほど活躍する事典はかつてありません。

 考えてみれば、国の研究機関である農研機構が、有機農業の研究に本腰を入れたのは2006年制定の「有機農業推進法」以降。それも稲作が中心で、野菜や果樹は近年ようやく活発に研究されるようになってきました。つまり、農家のほうが圧倒的に先を行くのが有機農業の技術です。農家抜きに、有機農業の事典は作れなかったわけです。

 たとえば「共通技術編」の第4部「農家の有機資材」では、モミガラやくん炭、米ヌカや落ち葉、光合成細菌など、農家の身近にある有機資材の特徴や、その使いこなし方が載っています。光合成細菌を米ヌカだけで大量培養する、落ち葉を効率よくラクに集めるのに自走式のロールベーラーを使うなど、「さすが農家」とうなるようなアイデアがたくさん登場します。
「作物別編」では、稲作や野菜、果樹や茶、畜産のそれぞれ名人たちが、品目別の技術や経営のカンドコロを明かしてくれました。有機農家の経営事例だけで、合計30本以上。栽培のノウハウだけでなく、その哲学や背景まで読み込めるのがポイントです。
研究者の執念が農家の取り組みを後押し
 農家の取り組みを支えるのが、国や県などの研究です。たとえば果樹のハダニ防除。ナシ農家の記事に、次のようなセリフがあります。

「うちにはテントウムシがケタ違いにいるんだよ。黒いのや黄色いのや、ちっちゃいのもいる」「なにがなにを食っているか調べてないけど、ハダニも食っているんだろう」

 ページを遡り、果樹の「天敵を利用した防除技術」コーナー冒頭の記事をめくると、そのテントウムシが「ダニヒメテントウ類」であることがわかります。果樹の天敵利用は今、農家と研究者の二人三脚によって、世界に先駆けて広がってきました。

 愛知県新城市・松澤政満さん(福津農園)に執筆してもらった記事には、「不耕起草生有機栽培」のメリットについて、研究者が調査したデータが出てきます。不耕起草生を長年続けた圃場は、一般的な圃場に比べ、土壌炭素の含有率や生物の多様性、そして農業所得(粗収益マイナス経費)が高いことを証明したデータです。松澤さんの圃場に通って調査した茨城大学・小松崎将一さんには今回、改めて「不耕起栽培圃場の健全性と土壌生態系」というテーマで研究成果を発表してもらいました。
 小松崎さんは、大学の圃場で長期にわたって不耕起やカバークロップ、輪作栽培について実験を続けています。これらは最近ようやく注目されるようになってきた技術ですが、小松崎さんはその研究になんと20年以上を捧げてきました。松澤さんをはじめとする篤農家との出会いによって、不耕起草生栽培の可能性にいち早く気付き、研究人生を懸けてきたわけです。

 お茶の無農薬栽培については、埼玉県茶業研究所・小俣良介さんの記事も一読の価値があります。海外での有機茶人気が牽引し、お茶は今、有機栽培がもっとも盛り上がっている品目です。有機JASの認証を受けた緑茶生産量は8600t(2022年産)で、10年前の4倍以上。EUやイギリスに輸出されるお茶のうち、じつに8割近くが有機栽培されていて(23年度)、鹿児島県では今や茶園面積の49%がJAS認証を受けています。

 小俣さんはしかし、やはり有機茶ブームが訪れるはるか前から、茶園における減農薬栽培の研究を続けてきました。たとえば大敵のクワシロカイガラムシを米ヌカで防除する方法。県内の農家が試して効果がありそうだとみるや、適切な施用量やタイミング、殺虫作用のメカニズムなどを調べ上げ、技術の普及に尽力してきました。

 小松崎さんや小俣さんのような研究者による地道な試験の積み重ねが今こうして、農家の取り組みを後押ししているわけです。
みんなの、みんなによる、みんなのための
 本書は2巻セット(分売不可)で税込44,000円。紙代などの高騰もあり、少し高価な本になりました。しかしおかげさまで、発売前にして1000冊以上の予約をすでにいただいています。「うちは別に有機栽培じゃないけど」とか「減農薬だけど無農薬ではない」といった農家からの予約も多くあります。

 じつは、本書に登場する約150人の農家たちも、完全無農薬・無化学肥料という農家は半分もいません。残りの農家は農薬も化学肥料も使います。ただし、優れた技術を持ち、農薬や化学肥料を減らしたい、生きものや土と仲良くしたいという姿勢だけはみんな共通。農家も研究者も、完全有機農家もそうでない農家も、さまざまな垣根を越えて、みんなで作ったみんなのための事典です。創立85周年を迎える農文協の集大成として、これからの農業にとって必須の技術を網羅したつもりです。すべての農家に読んでほしいと思っています。

書籍概要
『みんなの有機農業技術大事典』編:農文協
発売日:2025年3月10日刊行
出版社:農文協
定価:44,000円 (税込)
仕様:B5判上製(函入2分冊) 全2244頁
ISBN:978-4-540-24105-5
『みんなの有機農業技術大事典』特設サイト→
農文協オンラインストア「田舎の本屋さん」→
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会社概要
会社名:一般社団法人農山漁村文化協会
設立 :1940年3月25日
所在地:埼玉県戸田市上戸田2-2-2
代表者:会長 楠本雅弘
HP :

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