衰退する日本酒の酒蔵を救いたい ~浄酎のNaorai代表 三宅さんインタビュー(前編)~

2025.02.28 12:00
日本人の主食である米を原料として、約2,000年の歴史を持つと言われる日本酒。いま、日本酒の酒蔵が急激なペースで廃業していることをご存知ですか?

衰退する日本酒の酒蔵を救う革新的な技術を開発したNaorai代表の三宅さんのインタビューを前編・後編の2回に分けてご紹介します。前編では、三宅さんと日本酒の関わり、日本酒を取り巻く環境と課題についてお伝えします。

Naorai代表 三宅紘一郎 さん 
プロフィール
広島県呉市出身。親族に酒蔵関係者が多いことから日本酒に興味を持ち、大学時代は日本酒を中国で広げたいと上海へ留学。20代は上海で日本酒を売り歩き、2014年ナオライを創業。

■日本酒を取り巻く環境変化
――三宅さんは日本酒が身近にある環境で育ったとお聞きしました。

はい、親族に酒蔵関係者が多く、日本酒が常に身近にありました。日本酒を中国に広げたいと考えて中国に留学し、20代は上海で過ごしました。

――中国に行かれたのですね。

幼い頃から日本酒に触れていましたが、同時に酒蔵が衰退していくのを身近に見てきました。実は日本酒の国内出荷量は1973年のピーク約170万キロリットルに対し、令和5年には約39万キロリットルまで下がっています。ピーク時に4,000あった酒蔵は、約40年間で半分以下まで減っているのです。

――たしかに昭和の時代によく見られた「晩酌で日本酒を飲む父親像」は最近ではあまり目にしないイメージがあります。しかし、テレビでは「海外で注目を集める日本酒」と取り上げられることもありますよね。

日本酒製造の会社は登録上で約1500社ありますが、誰もがよく知る上位10数社がシェアの5割超、中堅200社が約3割を占めています。海外でも認知されているのはブランド力のある上位や中堅です。

――たしかにテレビで取り上げられていたのは有名な酒蔵でした。となると、上位・中堅以外はどのような状況ですか?

上位・中堅以外の残り1,000社以上が10数%のシェアを奪い合っている状況です。

――なかなか厳しい状況に感じます。

多くは地域ではよく知られる酒蔵で、主にその地域の中だけで商売をしています。どこも4合瓶で2,000円を超えない程度の価格帯で、飛びぬけて高く売るようなことができません。経営は厳しく、月に約3蔵のペースで廃業しているのが実態です。次の一手が求められています。

――そこで海外、中国に活路を見出そうと考えられたのですね。

そうです。しかし、中国など海外で日本酒を展開するには大きく2つのハードルがありました。一つ目はブランディング。日本ですでに流行っているブランドでないとダメなんです。日本人の誰もが知っているメジャーブランド以外の地域の酒蔵の日本酒は認知されず見向きもされません。

――たしかに日本人が世界のワインを選ぶときにも、よほど詳しくなければ知名度のあるものを選ぶと思います。同じようなことが日本酒でも起こりえるかもしれません。

2つ目がビジネスモデルの課題です。日本酒はこれまで70年間、一部の古酒や熟成酒を除いて「新酒こそがおいしい」という文化でつくられてきました。秋に収穫された新米を仕込んで醸造し、冷蔵保管で出荷される「新酒」を約1年の賞味期限内に飲んでもらう。つくり手はずっとこのスケジュールに則って日本酒を作ってきました。国内、その地域であれば消費者も新酒をいち早く楽しむことができます。しかし、海外で楽しもうとなると途端にハードルが高くなります。

――温度管理の課題でしょうか。

そうです。海外で「新酒がおいしい」文化を実現しようとすると冷蔵保管した状態を維持したまま輸出し、海外の店頭でもずっと冷蔵保管し続けてもらわなければなりません。また1年以内に飲んでもらわないと価値が落ちてしまいます。消費者の手元に届くまで一定の時間が掛かる輸出において、つくり手の思いを実現するのは容易ではありません。日本酒づくりと輸出流通のビジネスモデルが合っていないと思いました。

――メジャー・中堅以外の国内地域で商売をしている酒蔵にとって、冷蔵保管を実現できる輸出流通のビジネスモデルを実現するのは難しそうです。

それでもメジャー・中堅以外の酒蔵は確実に減っていきます。課題となるブランディングをどうするか、ビジネスモデルをどう変えていけばよいか、ずっと考えてきました。

■Naorai最初の挑戦 スパークリングレモン酒
――そうして考えてきたことを帰国してから実行に移されたのですね。

中国で感じた「地域の特徴を伝えてブランディングしないと埋もれてしまう」という課題の解決に取り組みました。それが、広島を代表するレモンを日本酒に組み合わせることでした。

――広島は国産レモン生産量の5割以上を占める日本一のレモン生産県ですね。

はい、広島のレモンを使ったブランディングです。実家の呉市に人口約20名の離島、三角島(みかどじま)があります。ここで農薬を使わずに栽培された皮まで食べられるレモンを親族が経営する酒蔵三宅本店の純米大吟醸に掛け合わせ「スパークリングレモン酒」をつくったのです。
スパークリングレモン酒 MIKADO LEMON
――農薬を使わないレモンですか。

もぎたてのフレッシュレモンの味を感じてもらうには、果肉の酸味だけでなく皮の渋みも大切だと思いました。そこで「皮ごと食べても安心・安全」な無農薬にこだわりました。

――なるほど。しかし手間がかかりそうですね。

たしかに手間はかかります。しかし、私は経済合理性を最優先してきた食品業界の風潮に対して危機感を感じてきました。そこで、その逆を目指そうと思いました。「短期間で生産性高くつくる」のではなく、「時間を掛けて丁寧につくる」ようにする。また「原材料を生み出す畑などの土、自然をもっと感じられるようにしよう」と思ったのです。
三角島で収穫されたレモン
――つくり手のこだわりが感じられます。

この「スパークリングレモン酒」MIKADO LEMONは、おかげさまで多くの評価をいただいたのですが、この開発過程で、日本酒の酒蔵を救う大きな発見がありました。



前編はここまでです。
日本酒の酒蔵の衰退を救うことをずっと考えてきた三宅さんの「大きな発見」とは何か。
後編では、この発見に基づいた日本酒の革新を促すプロジェクトについてお伝えします。

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