「ド派手なデコトラの事故は少ない」もヒントに! 元トラックドライバーが伝える「事故らない」長距離運転術

2024.09.13 20:00
この記事をまとめると
■私たちの生活を支えるトラックドライバー
■トラックドライバーは長時間、長距離の運転をこなさなければならない
■元トラックドライバーの筆者が安全で快適な長距離運転のコツを解説
労働時間の制限がトラックドライバーの負担に
  トラックがかかわる交通事故のニュースを毎日のように目にする。そのため、トラックドライバーの評判は悪くなる一方だが、乗用車や自転車、そして歩行者が原因となっているケースは意外にも多い。とくに最近では、自転車や歩行者の無法者ぶりが目立っているため、コメント欄にはトラックドライバーを擁護する書き込みが散見されるのが、せめてもの救いである。
  もちろん、トラックが直接の原因となっている交通事故も多い。その最たるものが、渋滞の最後尾に追突するというものだろう。確かに、荷物を積んだトラックは乗用車のようにブレーキが利かない。しかし、それをいい訳にするわけにもいかない。自身がハンドルを握るトラックの状況や特性を理解し、それに応じた運転をしてこそプロドライバーだろう。大きな車体を扱っている以上、それは当然の義務だ。
  それゆえにどのような状況においても、常に危険を回避できるような運転を心がけなければならない。どうしても避けられない不運な事故というものも存在するが、渋滞の最後尾に追突するということはプロ意識に欠けた、とても恥ずべきことだといえる。
  そんななかでクローズアップされている、2024年問題。ドライバーの身を守る法案のように感じ取ることができるが、じつのところはそうでもない。むしろドライバーの負担にさえなりかねないのだ。労働時間を厳しく制限することで、当然ドライバーの数が足りなくなる。ただでさえ人手不足にあえぐ業界にもかかわらず、さらなる追い打ちをかけているのだ。
  昔のように「トラックが好きだからトラックドライバーになった」という人も少なからず存在するが、いまでは働き口がないため、仕方なくトラックのハンドルを握っているという、こだわりのない、いわゆる職業ドライバーが増えてきた。そのような人物はトラックの特性を理解しようともせず、そしてイヤイヤハンドルを握っている傾向にある。そのため、トラックの事故があとを絶たないといっても過言ではないだろう。
自分だけの空間をつくることが重要
  どんな業界にもいえることだが、一部の人物がしでかしたことで、業界全体が悪く思われてしまうもの。トラック業界をこれ以上悪くさせないためにも、過去に大型トラックで長距離を走っていた経験をもつ筆者が、快適なドライブをするための秘策をお伝えしたい。
  まず大切なのは、トラックが自分だけの城だと思えるような環境を整えること。そのためには、会社がドライバーに専用車を与えることが重要となる。365日稼動するような業種の場合、1台のトラックをふたりで使いまわすというケースは少なくない。しかし、それでは自分だけの城にすることはできない。専用車を与えることは、会社に取って大きな負担になるのはいわずもがなだが、専用に与えられたトラックを大切にするということは、自ずと荷物を大切にするということにつながる。それこそが、安全運転に結びつくのだ。
  ふたりで使いまわすトラックであれば、傷をつけてももうひとりのせいにしたり、とぼけることができたりもする。そのような責任感を養うという意味でも、専用車を与えるということは大きな意味をもつのである。
  そんな専用車が与えられたドライバーは、自分好みに手を入れることが可能となる。お気に入りの音楽を聴くためにオーディオを取り付けたり、自分好みのドリンクホルダーを取り付けたり。そのようにお金や手をかけることで、自分が快適に過ごせるための城作りに励むのだ。そうなれば自然と愛着が湧いてゆき、トラック(と荷物)を大切に扱うようになるだろう。
  高速道路を使用して長距離運転をする場合は、とにかく漫然と運転しがちになる。そのような経験は、トラックに乗ったことがない乗用車のドライバーでもあるのではないだろうか。人間の集中力持続時間は50分だといわれているように、単調な道路を走っていると誰しもが気を抜いてしまうのである。
  それを防ぐために、長距離ドライバーは策を練っている。前述した好きな音楽を聴くのもそうであるし、内装や外装を自分好みにカスタマイズするのもいいだろう。もちろん会社が許す範囲で行わなければならないが、カスタムなど手をかけたトラックが事故を起こすというケースは少ないのだ。事実、きらびやかなデコレーションを施したデコトラが加害車両となることは、極めて稀である。
  もちろん、無茶な運転はご法度。眠気が襲ってくれば、速やかに休憩することが望ましい。しかし、現在では4時間走ると30分の休憩を取らなければならないという“430休憩”というルールが存在する。これもドライバーの安全を意識したように見受けられるが、じつのところはそうでもない。ドライバーは、自分のタイミングで休憩を取りたがるからだ。
  しかし、国が定めたものには従わなければならない。そのため、休憩時間にするべきことを考えるのも手である。30分の休憩であれば食事ができるし、読書をするのも悪くない。スマホいじりはこの時間に限定して行う。そのように徹底すれば、次の休憩時間が楽しみになるというもの。もちろん眠たければ仮眠しなければならないが、イヤイヤ休憩するのではなく、何かの楽しみを講じるというのが最善の策ではないだろうか。
  (ドライバー経験者である)筆者の場合、音声だけでも楽しむことができるDVDを流しながら走るということが多かった。何度も観たような映画や芸人のコントであれば、映像を観なくても内容を把握することができる。いわばBGMのような使い方をしていたのだ。それもまた、音楽とは違った楽しみ方ができるのである。
  また、無線や携帯電話で仲間との会話を楽しむのも吉。もちろんハンズフリーで行わなければならないが、誰かと話していれば眠気は飛び、楽しくハンドルを握れるもの。楽しみ方は人それぞれであるためこれをしろという明確な答えは出せないが、自分好みの対策を練ることが大切。それを見つけて実践することで、長距離運転に対する疲弊度は大幅に改善されることだろう。
  大きな車体を運転し、生活に必要なアイテムを全国各地へと運んでくれるトラックドライバーは、私たちの暮らしに欠かすことができないヒーローのような存在である。そんなヒーローとしての誇りと自覚を持ち、これからも安全運行をお願いしたい。

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