「ライセンス不要」「レーシングスーツも不要」でもガチなレースが激安で楽しめる! RX-8でマツ耐に参戦したら得るものだらけだった

2024.09.06 07:00
この記事をまとめると
■WEB CARTOP編集部の井上がマツ耐に参戦
■RX-8を用いて他社の自動車メディア関係者との連合チームを結成した
■敷居が低くリーズナブルに参加できるレースという点がマツ耐の醍醐味だ
急遽マツ耐に出ることに!?
  2023年9月に行われたギィーカイでは恒例となっているメディア対抗ロードスター4時間耐久レース(通称:メディア4耐)。
  実力はともかく、走るのが好きな井上にとっては、いつか出てみたいというちょっとした目標もあったので、昨年ようやくそれが叶った……というのはリポート済み。デビュー戦でいきなり表彰台に上がるという美味しい経験もさせてもらった。このときは、「この波に乗ってまたレースに出るぞ」なんてことも密かに思っていた。
  ……しかし、現実は甘くない。マラソン大会などとは異なり、そもそも一般人がそう簡単にクルマのレースなんかにホイホイと出れるわけがない。いや、出ようと思えば出れるが、それにはいくつものハードルがある。お手軽といわれる草レースレベルでも、最低限クルマがないとどうにもならない。もちろんそんなマシンを用意する余裕なんぞない。あるわけない。
  とかなんとかウジウジ考えていたらあっという間に約1年が経過。年齢もついに30歳に。さらにさらに、気づけばもうすぐメディア4耐も目前ではないか! 「1年間お前は何してたんだ?」と脳内の天使(!?)に喝を入れられる。
  そんな井上の元に願ってもない朗報が突然舞い込む。きっとご存じの方も多いであろう、老舗雑誌「CAR and DRIVER」にて統括編集長を務める山本さんから、「マツ耐って知ってる? それが7月に筑波であるから出ない?」と急なオファーが。その背後には、これまたみなさんご存知であろう、LINEヤフーが運営する日本最大級の自動車総合情報サイト「carview!」で編集を務める橋本さんの姿も。
  このふたり、普段WEB CARTOPとは直接関係があるわけではないのだが、2021年から井上が参加している、モビリティリゾートもてぎで開催されているカートの7時間耐久レース「K-tai」に参戦している、クラブレーシングという自動車メディアに関わる人が多数在籍するチームで知り合った人たちだ。ちなみにこの話が来たのは、この「K-tai」の練習走行日である。
「マツ耐」というレースがあることは仕事柄知っていたので、ふたつ返事で「走ります!」と快諾。こうして急遽、願ってもないレース参戦という機会を得ることができたわけだ。
  なお、「マツ耐」というのは「マツダファン・エンデュランス」の略称。このレースは、マツダ車を使った耐久レースとなっており、150分(2時間30分)という規定時間内にどれだけ多くサーキットを周回できるかを競うのがルール。極めてシンプルだ。ただ、全開で走るとガス欠待ったなしなので、そのサジ加減がこのレースの醍醐味。スプリントレースではないので、必ずしも速さが必要ではない。
  ちなみに、レースではあるものの国内Aライセンスも不要だし、レーシングスーツなども必要ない。ヘルメットもバイク用などの、走行会参加レベルでOKという敷居の低さもうれしい。フルバケットシートやハーネスも不要だ。マツダ車があれば、友達を集めてエントリーできてしまう(ドライバーは4名まで参加可能)。しかし、車検などはあるので、出走までのプロセスはJAF公認レースに近いものがある。
  そして今回、我々が参戦するのは筑波サーキットのラウンド。メディア4耐の練習としてはまたとないチャンスだ。
  で、ここで気になるのが使用するクルマだ。山本さんに「ちなみに何で走るんですか? やっぱロードスターですか?」と一応尋ねる。山本さんがロードスターを最近買ったことは把握済みだからだ。すると、予想の斜め上をいく返答が返ってくる。
「僕の愛車のRX-8を使います!」。
とにかく燃費を稼げ!
  聞き間違いかと思った。「燃費レースでRX-8???」
  予想外の返しを受けたが、山本さんは大マジ。ロータリーエンジンに関する話のなかで、真っ先に出る話題が燃費の悪さだ。酷い個体だとリッター5キロなんて噂もあるくらいなのである(ユーノスコスモなんかはリッター3キロなんて情報も!)。それで耐久レースに出るというのだから、耳を疑うのも無理はない(はず)。
  ただ、このような明らかに不利な逆境にトライするのは個人的には好きなので、「これはこれでロータリーエンジン車を勉強するいいチャンスかもしれない」と、好意的に受け取ることにした。それに、いまやロータリーエンジン車でレースに出るなんて、そうそうできることではないだろう。
  そしてやってきた本番の7月28日。今回は各員の職業が共通しているところから「メディア連合RX-8」という屋号を掲げ、メンバーは以下のようになった。
・自動車雑誌「CAR and DRIVER」:山本さん(写真1番右) ・自動車総合情報サイト「carview!」:橋本さん(RX-8の車内) ・男性向けファッション誌「UOMO」:西坂さん(写真中央) ・自動車WEBメディア「WEB CARTOP」:井上(写真1番左)
  西坂さんとはこの日はじめましてだったが、彼は趣味でダートトライアルに参戦するほか、過去に週刊プレイボーイチームでメディア4耐に参戦した経歴もある人なので、走りに関して心配無用。むしろ心強い。そのほかの方は、先述のとおりK-taiでお世話になっているほか、メディア4耐出走経験は何度もある人たち。今回も井上だけまた木偶の坊といった様子だ。
  で、会場を見渡すと予想どおりというか当たり前というか。ほとんどがロードスター(全27台参戦のうち21台)。6台だけ違うクルマであったが、RX-8は我々だけ。あまりにも異質だ。まぁレースの特性を考えれば「そりゃそうだ」といったところ。なんせ燃費とは真逆のクルマなのだから……。ただ、これも試練と思えばなんだか楽しくなってくるのは僕だけだろうか。
  なお、このロードスター以外のなかになんとランティス(2リッターV6エンジン搭載)がいた点には腰が抜けた。「そう来たか!」といわずにはいられない。これもマツ耐ならではの光景といえよう。そのほかはデミオ、もしくはMAZDA2であった。
  注目の予選はクルマのオーナーである山本さんが担当し、マフラーとホイール、シートとハーネス以外ノーマルだというRX-8だったが、山本さんの実力とマシンの素性のよさから7番グリッドを獲得した。スタートは上々だ。
  決勝ドライバーは今回、「橋本→井上→西坂→山本」の順で、ひとりあたりおおよそ40分前後の担当ということで作戦が決まった。最後はいわずもがな確実に燃費がキツくなるので、オーナーの山本さんが上手い具合に走らせるという感じだ。僕は燃費を稼ぎつつ、クルマを潰さないように戻ってくるのが使命だ。
  そして始まった決勝。橋本さんがいい具合にタイムを稼ぎつつ周回数を増やしている。何度もメディア4耐に出ているほか、自身も筑波のライセンスを取って定期的に走っているということもあり、素晴らしい安定感。見ていて安心できる走りであった。今回、OBD経由で燃費を測れるレーダーと、車両のコネクターから取れる社外品の燃費計を取り付け、ダブルで監視する対策を取り入れた。橋本さんからの各周の報告を聞く感じ、燃費も思ったほど悪くない様子。やるじゃないかRX-8!
  とかなんとか感心しているうちに、出番がやってきた。一応今回はメディア4耐を想定して、レーシングスーツにHANSまで付ける本戦どおりの装備で乗車。はじめて乗るRX-8がどんなものなのか? 程よい緊張感を持ちながらピットレーンを抜けた。
  と、走り出して数十秒。意外な事実が発覚。このクルマ、タイヤホイール以外フルノーマルなせいか、全然曲がらないではないか! 「FRってこんなもんなの?」と思うほど、挙動がいい意味で安定している。下手に曲げようとするとドアンダー連発といった具合だ。愛車のシビックのほうが数倍曲がるじゃないかと感じるほど。
  つまり、突然リヤが滑るようなFRあるあるのような挙動をみせず、とても安心して走れる。これはうれしい誤算だ。ってなわけで、「FRだから……」とビビらずに、頑張って周回を重ねに……行きたいところだったがそうもいかない。なぜならこれは燃費レース。好きだなけ踏みちぎれるわけではない。
  無線(電話)から山本さんより「燃費は?」「今タイムは○○秒だからあと5秒くらい縮めて」といった具合で指示が飛んでくるのだが、これがまぁ難しい! 踏みちぎればタイムはぼちぼち出るだろうが、そうすると今度は燃費が怪しい! そしてこのあと付けの燃費計もどこまで信用できるか未知数。あとふたりもドライバーが控えているのに、ここでやらかしたらギョーカイ出禁待ったなしだ。「去年のメディア4耐もこんな感じだったなぁそういえば……」と、苦い記憶を思い出しながら、なんとか周回を重ねる。
  最終的にはぼちぼちなタイムで周回できたので、ひとまず任務は無事に終えたといった具合。クルマを破壊することなく、燃料も計器上は半分ちょい上を残して、西坂さんにバトンを繋いだ。
  西坂さんも、普段から競技に参戦しているのでいい感じに周回を重ねていた。が、10分ほどして嫌なセリフが電話に飛んでくる。
「なんか吹けません!」
  始まった。これはガス欠の予兆だ。K-taiでもメディア4耐でも、何度もこのセリフは聞いてきているので間違いない。ロータリーエンジンがついに我々に牙を向けてきた。とはいえ、「まだまぁなんとか走れますね」とのことだったので、ラップタイムを通常より10〜15秒ほど落として、少し飛ばすくらいの領域で時間どおり西坂さんには走ってもらった。そして、なんとか無事にピットにクルマを運んできてくれた。
  このガス欠の予兆が出たタイミング的に、完全に僕が踏みすぎたせいだろう。いやはや燃費レースは本当に難しい……。
  最後のドライバー交代で、オーナーの山本さんが飛び出す。飛び出すが、もうガソリンは全然残っていないのは目に見えている。しかし、チーム全員の目標はここまで来ればもうひとつだけ。
「チェッカーを受けよう」
  山本さんにその望みを託し、RX-8はタイムそっちのけで、じわじわとチェッカーへ向けて筑波を駆ける。そしてスタートから150分後、RX-8はオーナーの山本さんによる見事なドライビングによって、見事にチェッカーを受けたのだった。この立ち位置に僕がいたら確実にチェッカーを受けられらなかったと思う。そして1コーナーを抜けた直技、マシンはガス欠によりエンスト。筑波サーキットの2コーナー前で停止した。
  なんとも劇的(完璧!?)な、我々メディア連合による初のマツ耐であった。
  ちなみにその後、奇跡が起こる。なんと、ロードスター以外の車種におけるリザルトで2位表彰台を獲得したのだ! これは願ってもないうれしい結果。チーム一同これには驚愕。仲間でなんとか繋いだバトンが、このような結果として現れるのも、耐久レースの醍醐味かもしれない。筆者だけは相変わらず何もしてないので、昨年のメディア4耐と同じく棚ボタな感じは否めないが……。
  そんなこんなで、奇跡的な結果を残した我々メディア連合チームで参加したマツ耐。エントリー費やガソリン代などを折半して、今回はひとりあたり2万5000円ほどで参戦できた。
  レースと考えればかなりリーズナブルだし、特別な装備も不要なので、マツダ車さえあれば誰でもエントリー可能だ(CX-5などのSUVも参加歴あり)。仲間との思い出のひとコマとして、レース参戦前の腕ならしとして、燃費ジャンキーへの登竜門として、さまざまなテーマを持って参加できること間違いなしのオススメイベントであることは間違いない。筆者的にも、今年で35回目の節目を迎えるメディア4耐へ向けての、これ以上ないいい練習となった。
  我々CARトップ&WEB CARTOPの、35回目となるメディア対抗ロードスター4時間耐久レースの結果に乞うご期待!

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