この記事をまとめると
■2024暦年締め上半期の車名(通称名)別累計新車販売ランキングが発表された
■トップのホンダN-BOXは息切れ気味だがほかの人気車種は徐々に巻き返している
■登録車ではトヨタ車の納期遅延が影響しているがそのハンデを感じさせない人気ぶりだ
上半期の車名別累計新車販売ランキングを発表
自販連(日本自動車販売協会連合会)と、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)発表の統計を合算し、2024暦年締め上半期(1~6月)の車名(通称名)別累計新車販売ランキングを作成すると、ダイハツ車全体の元気がないのが目立っている。それもそのはずで、ダイハツは年明け以降、型式指定申請における問題を受け、全面的な出荷停止を続け、春先から段階的に出荷を再開し、5月の大型連休明けあたりにほぼ全面出荷再開していたからである。
ダイハツ車でもっともランキングが高かったのはタントとなるが、それでも前年同期比で34.7%となっている。この影響はダイハツだけではない。例年ならランキングトップクラスの常連でもあった、ダイハツからのOEM(相手先ブランド供給)車となる、トヨタ・ルーミーは登録車のみでは19位にランクインしている。
ライズも2022暦年締め上半期新車販売台数では登録車のみで5位に入っていたが、2024暦年締め上半期では26位まで大きく後退している。両車ともにトヨタ車のなかでも人気が高く、納期も短めとなっており、売りやすいモデルとなっていた。現状は、出荷再開後は出荷停止前とまではいかないものの、供給体制はそれほど悪くはないので、2024暦年締め(1~12月)や、2024事業年度締め(2024年4月~2025年3月)年間新車販売台数では、再びランキングトップクラスに戻ってくる可能性が十分高いといえるだろう。
2024暦年締め上半期販売台数トップは、ホンダN-BOXで10万680台となっている。2023年同期比約89%、2022年同期比約96%、そしてコロナ禍前となる2019年同期比約76%、2018年同期比約78%となっている。直近5年との比較ではいずれも100%以上とはなっていない。2022年比で約96%は許容範囲内ともいえるものだが、それ以外との単純な販売台数の比較では、王者N-BOXの「息切れ気味」な様子が窺えるともいえよう。
同時期にフルモデルチェンジを行ったスズキ・スペーシアは、軽自動車のみのランキングでトップのN-BOXに1.5万台ほど差をつけられて2位となっているが、前年同期比で140.4%となっている。2023年同期比ではスペーシアに5万台ほど差をつけてN-BOXがトップとなっている。スペーシアは出荷停止していたダイハツ・タントの購入希望客の取り込みに成功していることもある。
N-BOX同様に過去5年間と比較すると、2019年比のみ100%割れとなっているので、確かに2024暦年締め上半期の結果はダイハツの出荷停止の影響を受けたものともいえるのだが、そこも含めN-BOXとは明暗がわかれているように見える。
N-BOXが失速気味な理由とは
登録車のみで販売トップ、軽自動車も含めたランキングで2位となっているトヨタ・カローラシリーズは4月に改良を実施しているが、改良前からセダンとツーリングの納期が短めだったことが影響しているようだ。アクシオ&フィールダーの出荷再開次第(本稿執筆時点では出荷停止中)とはなるが、2024暦年締め年間新車販売台数でも登録車トップとなる可能性が高い。
他メーカーに比べ、納車までの時間がかかり気味というハンデをまったく感じさせないように、登録車のみのトップ10内にトヨタ車は6台入っている。一時の「年単位」といった極端な納期遅延が一部の車種限定となっているなかでは、トヨタ以外のメーカー車の納期が短いということは、トヨタ以外のメーカーにとってもはや効果的な販売促進ツールにはなっていないようである。
軽自動車では販売台数よりも「売り方」に注目したい。セールストークに有効な販売ランキング上位維持や、工場稼働率維持を意識した「自社届け出(売り先の決まっていない未使用未届けの新車にナンバーだけをつけること)」は軽自動車では半ば当たり前のこととなっている。専業店も珍しくないほど、ある意味新車、中古車に次ぐ第三の流通経路として、自社届け出された車両は「届け出済み未使用中古車」として流通している。
現状では出荷停止騒動もあったダイハツ車全般が目立つなか、多少販売の息切れ傾向の見えてきたN-BOX、そして日産の軽自動車、さらには決算期などでは三菱のICE(内燃機関)軽自動車も目立ってくる。
そのなか、「ここのところスズキの届け出済み未使用軽中古車は、あまり見かけませんね」とは事情通。スズキはかつて未使用中古車販売を『お行儀の悪い売り方』としたこともあり、流通台数を意識的に制限しているとされている。軽自動車は15年落ちぐらいでもニーズが高いこともあり、再販価値は意外なほど高めをキープする。中古車はローン金利が高いのが一般的なので、「現金一括で買う人は未使用中古車、ローンを組んで買う人は新車」と、軽自動車の世界ではいろいろな意味で「住み分け」ができている。新車販売でのローンは残価設定ローンタイプが主流。「いままではN-BOXの再販価値がかなり高く、それにタントやスペーシアが続いていました。スライドドアでハイト系の再販価値はとくに高いです」(事情通)
スズキは再販価値維持とも聞いているが、新種購入時にメーカー系ファイナンス会社の残価設定ローンを組むと、メンテナンスパック(一定期間の点検・整備費用を前払いすることで得になるもの)が標準付帯されてくる。未使用中古車の抑制傾向は再販価値維持のためもあるようだ。
「N-BOXは現行型になってから未使用中古車が目立ってきました。今後は再販価値にマイナスの影響が出る可能性が出てきています」(事情通)
N-BOXは統計上息切れ気味に見えるのは、自社届けが増えてきて、未使用中古車の流通量が増えるなか、自社届けが思うようにできていないこともあるのではないかとの指摘も出てきている。今後も事業年度締め上半期や暦年締め年間新車販売台数、事業年度締め年間新車販売台数などでトップを狙ってくるだろうが、それはいままでとはだいぶ内容の異なるものとなり、その内情は厳しさが増していくことになるかもしれない。
今後の動向注目車種としては、登録車は前述したルーミー、ライズのほか、2024年3月発売ながら1万582台(月販平均約2645台)で登録車のみで30位に入っているホンダWR-V、6月末に新型となったホンダ・フリードとライバルのトヨタ・シエンタなどを挙げることができるだろう。
軽自動車ではダイハツがどこまで復活していくかがもっとも注目に値するだろう。王者N-BOXの息切れ傾向のなか、スペーシアの好調がどこまで続くのかも見ものである。