この記事をまとめると
■日本でいちばん売れているカテゴリーがスーパーハイト系軽自動車だ
■スーパーハイト系以外の軽自動車も魅力的な車種が溢れている
■軽EVはいままでの軽自動車の概念を覆すスペックを有しておりオススメだ
スーパーハイト以外の軽も魅力的なモデル多し
いま、日本でイチバン売れている車種、そして軽自動車の販売ランキングで1位を継続的に死守しているのがホンダのN-BOX。つまり、スーパーハイト系軽自動車であり、2024年8月の軽乗用車販売台数ベスト3が、スーパーハイト系軽自動車の1位ホンダN-BOX、2位スズキ・スペーシア、3位ダイハツ・タントで占められているのだ(5位に日産ルークス、10位に三菱デリカミニ&eK)。実際、スーパーハイト系軽自動車は街に溢れ、セカンドカーとしてはもちろん、ターボ車を中心に高い全高、両側スライドドア、広大な室内空間を備えたミニミニバンのファーストカーとしても大人気な、いまや国民車の代表格のジャンルといっていいほどなのである。
たしかに、スーパーハイト系軽自動車は万能に使え、前後席ともに驚くほど広々しているのだが、日本の軽自動車の進化ぶりは著しく、スーパーハイト系じゃない軽乗用車にも魅力的かつ機能的に使えるモデルは山ほどあるのが、うれしい現状だ。
ダイハツ・ムーヴキャンバス
「デザインと使い勝手が最大のアピールポイント」とするダイハツ・ムーヴキャンバスは、そのネーミングからすればダイハツを代表するムーヴをベースに作られた、両側スライドドアを完備したデザイン×ベンリ=新しい軽自動車と思える。
が、プラットフォームやパッケージはスーパーハイト系軽自動車のタントがベースなのだ。後席に子どもを乗せる前提(!?)の子育て御用達軽のタントと違うのは、あくまで20代後半~30代前半の独身女性をターゲットとした前席優先のパッケージングとし、VWバス タイプ2 T1を彷彿させるストライプカラーのボディによる可愛いエクステリアデザインを特徴とするところ。全高は1655mmとタントの1755mm(FF)より100mmも低い。
先ほど、前席優先のパッケージと紹介したが、じつは後席も超広々。後席膝まわり空間は身長172cmのドライバー基準で約350mmとかなり広い。ちなみにタントは同355mm、ムーブ290mmだ。
加えて、後席のかけ心地もすこぶるいい。その理由は後席座面の長さ。大型車の前席でも500~520mmのところ、何とムーブキャンバスの後席座面長は540mm(!!)もあるため、着座時に太もも裏がしっかり密着。まるでソファに座っているような快適感がある。逆に座面が短いと腰だけで体重を支える格好になり、長時間の着座で疲れやすくなるわけだ。
パワーユニットはクルマのキャラに合わせて、当初はNAエンジンのみだったが、いまではファーストカー需要にも対応するターボモデルも設定されているから選びやすい。NAモデルの場合、日常域の走りやすさが際立ち、乗り心地は快適感としっかり感をちょうどよくバランスさせたタッチ。
段差を超えても安っぽいショック、音、振動はほぼなし。ターボモデルなら、高速走行もラクラクな性能を、充実した先進運転支援機能=スマアシ(全車)とともに味わえる。タントのような背の高さには抵抗があるけれど、個性的なデザインや室内の広さ、両側スライドドアは譲れない……という人にぴったりの1台といっていいかもだ。
スズキ・ハスラー
軽ワゴン×SUVという新ジャンルのコンセプトを提案し、大ヒット作となったスズキ・ハスラーの2代目も、注目に値するクロスオーバー系軽自動車だ。しかも、雪国のスズキ・ユーザーからの要望に応えた1台ともいわれ、悪路走破性の目安になるアプローチアングル、デパーチャーアングルをしっかりと取り、2WD、4WDともに最低地上高をゆとりある180mmに設定。
さらに、スノーモードが2WD/4WDに備わり、4WDにはスリップを防止するグリップコントロール、急な下り坂を安心して走れるようになるヒルディセントコントロールを完備。雪国のユーザーだけでなく、冬、スキー、スノーボードを楽しむ都会のユーザーにとっても大きなメリットになることは間違いないだろう。
ハスラーは走ってもかなりいい。マイルドハイブリッドモデルはトルキーかつスムースに走り、静かに走るコツとして、加速時にアクセルを深々と踏み込むのではなく、ゆっくり踏んでやると、エンジンノイズを高めることなく、必要な加速力が得られる。
ターボモデルの動力性能の余裕はさすがで、東京~軽井沢間の、上信越道の碓氷軽井沢ICを降りてプリンス通りに至るバイパスの長い上り坂区間でも余裕の走りを見せ、ドライバーのストレス最小限で往復できた経験がある。
その最大の理由が、NAモデルを含む、軽自動車最上級の乗り心地の良さと高速走行&山道を含む安定感の高さだ。当然、ルックス的にアウトドアにも似合い、タフな使い勝手に応えてくれる点も光る。
スペーシアにクロスオーバーテイストを与えたギア(最低地上高はスペーシアと同じ150mm)が加わったいまでも、走破性という点では軽自動車でピカイチ(ジムニーを除く)の1台なのである。
ダイハツ・タフト
ダイハツが2020年6月に満を持して登場させたタフトは、ハスラーが属するジャンルのクロスオーバーモデルでも、よりワイルドで男臭い、ピックアップトラックやバックパッカーをイメージしたエクステリア、冒険心を目覚めさせてくれるようなインテリアデザインが特徴的な個性溢れる1台。
最低地上高は本格SUVに匹敵する190mmもあり、最大の特徴として、スーパーハイト系、ハスラーを含むほかの軽自動車にないガラスルーフ=「青空標準」(晴れていれば)のスカイフィールトップを装備していることが挙げられる。それも、ガラスルーフによる解放感、爽快感、雨の日なら情緒ある雰囲気を前後席で味わえるのだからうれしい。
ただし、ガッチリとしたカクカクシカジカなボディの剛性の高さから、乗り心地は見た目通りに硬め。キツい段差では結構なショックに見舞われるのが難点。
日産サクラ/eKクロスEV
日産と三菱の合弁会社NMKVの企画・マネジメントのもと、リーフ、アリアで培った日産の電気自動車に注入された先進技術、そしてアイミーブ、アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEVを送り出してきた三菱の電動化技術を結集した軽規格の電気自動車がサクラとeKクロスEV。ベースはデイズ(eKワゴン)ながら、グリルレスの顔つきが、電気自動車だとひと目でわかる特徴だ。サクラは電気自動車のシリーズの1台として、あえてデイズとはまったく異なる、アリアに通じる内外装としているのに対して、三菱のekクロスEVは三菱のSUVシリーズの1台として、エクステリアはeKクロスに準じるデザインを採用している。
サクラ、eKクロスEVのパッケージング、室内、荷室の広さはデイズと同じ。ハイトワゴン系ならではの高めの着座位置、後席の驚くほどの広さ、後席格納時に段差ができてしまう(!?)シートアレンジ性などがそのまま受け継がれている。
前席のかけ心地はデイズよりさらにソファ感あるホールド性を持たせたものにグレードアップ。デイズで「座面のかけ心地が薄く感じられる」というユーザーの声もあった後席にしても、クッションの厚みを増し、電気自動車の走行感覚に合わせた上級感、快適感あるかけ心地のよさを実現している。
そして、走り出せば、電気自動車がないスーパーハイト系軽自動車とは別物の、電気自動車ならではの静か(車外騒音は別だが)でウルトラスムースでリニアな加速感に先進性がある。アクセルペダル操作に対するモーターパワー、トルクの出方はじつにレスポンシブル。右足とモーターがつながったような感覚になれる。最高出力は軽自動車の規制で64馬力に抑えられてはいるが、トルクは軽ターボの倍近い19.9kg-mに達する。
エコモードでも軽自動車らしからぬスムースな速さを発揮し、スポーツモードに至っては下手なコンパクトカーを凌駕する、胸のすく加速力を見せつけてくれるのだ。また、高速道路でe-Pedal Step OFF×エコモードにセットすれば、抵抗感なく滑走するようなコースティング状態の走行感覚も得られ、気もちよさとともに電費の向上にも直結する、電気自動車ならではの運転にも新鮮味が感じられるはずである。
床下にバッテリーを敷き詰めていることから、乗り心地は軽自動車とは一線を画す、ハイトワゴン系にもかかわらず、低重心感覚かつ、コンパクトカーを凌ぐ上級感、上質感の持ち主。段差やゼブラゾーンなどを走破しても、不快な振動、ショックなど最小限。そう、軽自動車に乗っていることなど、忘れさせてくれる走行性能の持ち主がサクラ、eKクロスEVなのである。いい方を変えれば、時代の先端を行く電気自動車の軽乗用車版に乗るなら、現時点でこの2台しかないことになる。
なお、一充電航続可能距離はWLTCモードで180kmとされているが、エアコンの使用では実質130kmぐらいと考えていい。それでも、普段使い、近距離使いの電気自動車としてなら、十分とも考えられる(そのぶん電気自動車としては安い)。もちろん、自宅に充電設備があればオススメできる、ということだが。
ということで、軽自動車ではスーパーハイト系ばかりが注目され、売れる時代だが、そうじゃないほうの軽自動車にも、魅力的なクルマが勢ぞろいしているのである。