タイにヒョンデが「N」で参戦! ただし「タイ人の好み」を把握している日本車の壁はそう簡単に崩せない

2024.05.15 06:20
この記事をまとめると
■ヒョンデはタイにてハイパフォーマンスブランドの「N」モデルを発表した
■ラインアップの拡充などを進めているがいまひとつ認知度やシェアの拡充が進んでいない
■ヒョンデが日本メーカー相手にシェアで勝つにはまだまだ時間が必要だ
ヒョンデがバンコクでも積極的に普及活動中
  2022年に韓国ヒョンデが12年ぶりに日本市場に再参入を果たした。参入当初はFCEV(燃料電池車)のネッソとBEV(バッテリー電気自動車)のアイオニック5の2車種のみをオンラインで販売するとしていた。その後2023年にBEVのコナを発売し、日本市場ではBEVを中心に3車種をラインアップしている。
  一方、東南アジアでは、たとえばインドネシアではBEVはアイオニック5と、セダンタイプとなるアイオニック6のみとなり、あとはICE(内燃機関)車となる大型SUVのパリセード、新興国向けコンパクトクロスオーバーSUVのクレタ、グローバルモデルとなるミッドサイズクロスオーバーSUVのサンタフェ、新興国向けMPV(多目的車)となるスターゲイザーと派生モデルのスターゲイザーX、そしてフルサイズミニバンとなるスターリアがラインアップされている。
  街なかを見ると、メインで売れているのはクレタとスターゲイザー系(Xを含む)となっている。アイオニック5も目立つのだが、こちらは 「官公庁や企業などへ格安で卸しているようだ」といった話を多く聞いた。アイオニック5はインドネシアの工場で生産しており、その関係からも官公庁や企業へアプローチしているようである。
  そんなヒョンデだが、タイでは新しい動きを見せている。
  ヒョンデでは現在、ハイパワーモデルとして「Nシリーズ」をラインアップしている。そして、2023年12月に開催されたタイ2大オートショーのひとつ「バンコク・モーター・エキスポ」において、カローラ・アクシオ(東南アジアでのカローラセダン)と同クラスとなる、エラントラのハイパフォーマンスバージョン「エラントラN」を発表した。
  そして、2024年3月下旬から4月上旬に開催された、こちらもタイ2大オートショーのもうひとつとなる、「バンコク・モーターショー」の会場には、エラントラNのほか、アイオニック5Nも展示されていた。
  タイにおいてヒョンデは、BEVがアイオニック6、アイオニック5、ICE車ではクレタ、スターゲイザーシリーズ(X含む)、スターリア、H1エリートFE(ミニバン)、そしてエラントラNはウェブサイト上には掲載されているが未発売といった状況で、アイオニック5 Nはまだウェブサイト上にも掲載されていない。しかし、すでに標準シリーズはラインアップされている。しかし、エラントラNに関して標準シリーズはなく、Nモデルのみが今後発売になるようである。
日本メーカーに勝つにはまだまだ先が長い
  そもそもタイでは、タクシー車両ではカローラアルティスが8割ぐらいを占め、ライドシェアや企業の社用車などでも需要が多い。筆者はタクシーとして多く使われていることからも、日本でのかつてのクラウンセダンのような存在がカローラアルティスだと考えている。標準車の需要ではフリート販売が目立つなか、たとえカローラのライバル的存在であるエラントラの標準シリーズをタイ市場に投入してもカローラアルティスに迫る販売実績を積み上げるのは至難の業といえるだろう。
  そしてカローラアルティスにも「GRスポーツ」がある。パワートレインは標準シリーズのハイブリッドユニットとなるが、サスペンションやステアリング制御は専用チューンされ、内外装もGRスポーツらしい特別仕様となっている。ウェブサイトのモデルラインアップ欄では、あえて標準シリーズとはわけて掲載されている。タイのユーザーはドレスアップが好きなので、アルティスのGRスポーツも好評を得ているようである。
  タイではカローラアルティスのほか、カローラクロス、新興国向けSUVとなるフォーチュナー、そしてハイラックス・レボにもGRスポーツが設定されている。
  一方のエラントラNは、「GRカローラ」並みの専用チューニングが施されており、カローラアルティスのGRスポーツとは似て非なるような存在となっている。あくまで筆者の私見とはなるが、タイではドレスアップのほうが、本格的なスポーツチューンモデルよりも一般受けしやすいと感じており、トヨタのモデルラインアップ戦略のほうがより販売現場に即したものと感じている。
  同じヒョンデグループの起亜は、東南アジアではいままではICEとなるフルサイズ高級ミニバンの「カーニバル(仕向け地によってはセドナ)」ほぼ一本で勝負してきており、過去にはベトナムやタイで人気となったこともある(いずれもアルファードの勢いに巻けている)。
  起亜は最近ではBEVもラインアップするようになっているものの、全体では少数ラインアップという傾向は変えていない。一方のヒョンデは、ややラインアップを広げているものの、わかりやすくいえば「日本車の格下」というイメージを拭うことはできないでいた。
  そこで、日本車が出遅れているともいえるBEVで挽回しようとしたのだろうが、同クラスにはBYDをはじめ中国メーカーのBEVがひしめいており、価格が中国車より高くなってしまうこともあり、埋没気味に見えていた。そこで、「Nシリーズ」というものでICEだけではなくBEVにおいてもヒョンデブランドの浮上をはかろうとしているように見える。
  販売台数では日本メーカーに勝ち目がないので、できるだけ付加価値の高いモデルを販売することで台当たり利益をアップさせようとの狙いもあるかもしれない。
  ハイパフォーマンスモデルが一定の評価を受ければ、おのずと標準車のイメージもアップし、ブランド全体の販売実績も向上させることも可能だろう。内外装デザインでは頑張っているものの、そのトレンドはあくまで先進国市場でより評価の高いものとなっている。東南アジアのような新興国では感度の高い消費者には理解されるかもしれないが、ちょっと先を行きすぎているようにも見えてしまう。
  インドネシアの首都ジャカルタで見ていると、クレタやスターゲイザーがよく売れており、パリセードもチラホラ見かけるので販売台数はともかくバランスよく売れているようにも見えるが、タイではスターリアが目立つぐらいでいまひとつのイメージが強い。ハイパフォーマンスモデルを導入してブランドステイタスの確立を進めようとしているように見える。

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