ホンダと日産がパートナーシップを検討の衝撃ニュース! アジア市場に見える両社の厳しい立ち位置

2024.04.05 06:20
この記事をまとめると
■2024年3月15日に日産とホンダが戦略的パートナーシップの検討を開始することを発表
■会見では「新興EV」や「スケールメリット」といった単語を両社長ともに口にしていた
■いまや各技術に対して自動車メーカー1社では対応しきれないような状況になっている
衝撃のニュースが舞い込んだ!
  2024年3月15日、日産自動車とホンダは「自動車の電動化・知能化時代にむけた戦略的パートナーシップの検討開始」をする覚書を締結したことを発表した。
  同日午後都内にて、日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 内田 誠氏と本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏が出席して記者会見が行われた。その会見中、いくつかの「単語」が両氏の口から活発に出ていた。「新興メーカーのスピード感」、「2030年にいまの立場を維持できるか(途中から生き残っていられるかという表現になっていった)」、「スケールメリット」などがそれである。
「新興メーカー」というのはBEV(バッテリー電気自動車)を念頭にした中国メーカーであると思われる。ある中国メーカーは以前、 「発売間もなくとも、お客さまのメリットになるのならば、迷うことなく改良を行う。登場したばかりだから1年後まで改良しないなどということはない」といったことを語り、スピード感を強調するとともに、筆者個人の受け止めとしては暗に日本メーカーの腰の重い印象を意識した発言のように感じた。
  東南アジアのタイでは中国BYD(比亜迪汽車)のクロスオーバーSUVタイプのBEV「アット3」、そして同クラスのBYD以外の中国メーカーのBEVの価格は、日本におけるアット3の価格とほぼ同水準であり、タイにおける日本メーカーの同クラスHEV(ハイブリッド車)と同レベルとなっている。
  仮に日本メーカーが今後、優秀で魅力的なアット3と同クラスのBEVをタイに市場投入したとしても、アット3などとの価格競争力(つまり同等の価格設定)を維持できるのかといった疑問を呈する声は業界内でも多い。事実は別としても、「価格だけではなく性能も大切」という声もあるが、すでに先んじて市場参入している中国メーカーが価格帯を設定してしまったなかでは、「性能がいいから多少高くても」と多くの消費者が動くかどうかは、タイの様子を見ていると疑問に感じる。
  ましてや前述したように、中国メーカーは短期間でブラッシュアップを進めてきたり、車両開発もスピード感ある対応を進めている。そのようなスピード感に日本メーカーが追いついていけるのかも気になるところである。それは単に「できるかできないか」ではなく、クルマ作りに対する考え方の違いなどもあるからだ。
  東南アジア市場では、ICE(内燃機関)車販売においても、日産やホンダは日本車の販売シェアが極めて高いとはいえ、そのなかでは存在感をいまひとつ見せることができていないように見える。
  日産は新興国ブランドとして立ち上げた「ダットサン」の失敗などもあり、インドネシアでは現地生産から撤退するなど、東南アジアでは苦戦が続いているというか、少し距離を置いているようにも見える。ホンダも、筆者がタイやインドネシアの首都圏だけを訪れており、その首都圏内ではホンダ車をよく見かけるが、地方部では売れるクルマは限定的になっているとも聞いている。
  東南アジアにおいても、日本車のなかでは、各国においてトヨタが販売トップになっていることが多い。しかも、アルファードやフォーチュナー(新興国向けSUV)やイノーバゼニクス(新興国向けMPV)などの高額な、メーカーにとって高収益な車両もよく売れ、販売台数における台当たり利益が抜群に良い商売をしており、タクシーなどのフリート販売でも強みを見せている。
三菱やスズキが売れまくっている!
  また、東南アジア地域では、日産やホンダより三菱自動車のほうが、ピックアップトラックのトライトンやその派生SUVといえるパジェロ・スポーツなどもラインアップして存在感を見せているし、インドではスズキ車が圧倒的に台数ベースでは売れているのは周知の事実となっている。
  今回の協業についてはおもにBEVのジャンルとしているが、今後の話の進め方次第では、もっと「手前」のレベルでの協業も活発に行われるかもしれない。
  BEV面での協業というとバッテリーなどに目がいってしまいがちだが、今回はコネクティビティ面にも触れる機会が多かった。日本の自動車メーカーがBEVについて遅れを取っているといった報道はいまどき珍しくないが、日本の社会全体を見渡せば、デジタル化の遅れも際立っている。日本メーカーを見るとコネクティビティへの対応も「慎重」な姿勢が目立つ。
  しかし、そのなかでもトヨタはコネクティビティへ積極的な姿勢を見せ、いまでは多くのトヨタ車においてカーナビ機能はコネクティッドサービスのひとつ「センター通信型ナビゲーション」となっており、従来のように見積書に20万円といった高価なカーナビゲーションユニットをオプション計上する必要はない。日産やホンダもコネクティッドサービスは行っているのだが……。
  実際、ディーラーへ行くとディーラーオプションの従来タイプのカーナビゲーションの装着を熱心に勧めてくる(ディーラーとしては儲かるので仕方ない面もある。またコネクティビティは“ご興味があれば”といった程度で積極的には勧めてこない)。日本でも若年層はカーナビ機能のないディスプレイを装着して「グーグルマップ」などを接続させカーナビ代わりに使うケースも多いようだ。
  筆者はデジタルツールを使いこなせているわけではないが、BEVやコネクティビティはそれらに造詣が深い人以外でも、「なんだかよくわからないけどワクワクする」といった気持ちにさせる販売促進効果の高いものと考えているが、販売現場がどのようなものなのか理解しきれていない面も大きいようで、「購入希望者に十分なプレゼンテーションができていないなあ」ということも実感している。
  トヨタが日本国内では圧倒的に高い販売シェアで販売トップになっているだけではなく、世界市場でも世界販売台数トップを獲り、あえて「グループ」と表現するが、資本的なものも含めてさまざまにつながっているブランドも多く、そのスケールメリットはかなり大きいものとなっている。「聞いた話では、スズキではトランスミッションに最近だとアイシン製を使うことも多くなってきたそうです」とは事情通。
  国内における日系乗用車ブランドを見れば、いわゆる「トヨタとかかわりがほぼない」ブランドは日産&三菱とホンダのみとなっている。世界市場ならずとも、国内市場でもこのままそれぞれ個別に動いていれば、技術的な先細り傾向はかなりの懸念材料に見える。ICE車メインのころから安全運転支援デバイスの標準搭載化なども進んできたなか、コスト面などを考えても各メーカー単独で対応するのはもはや困難なレベルになってきているとは、よくいわれた話であった。
  今回の協業がどこまでシナジー効果を生むのかは今後次第となるが、会見での質疑応答でもお互いの企業カラーの違いについての質問も出ていた。本田宗一郎氏がまさに“町工場”レベルで創業し世界的な大企業までに発展したホンダと、日産ではあまりにもお互いのキャラクターが異なるので、協業がうまく進むか不安視する話も出ている。
  今回とは同じ話ではないものの、2024年2月末にかねてより経営統合することで基本合意していたトラック・バスメーカーの日野自動車と三菱ふそうトラック・バスだが、経営統合の延期が発表されている。
  日産とホンダとでは資本提携などは考えていないということであり、経営統合と協業では話は異なるものの、キャラクターの異なる大企業は思惑が同じで、いざ一緒にやっていこうとしても待ち受ける壁が大きいことはあまり変わらないように見える。ぜひそのような壁を乗り越えて両社がWIN-WINになる協業を進めていってもらいたい。

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