WEB問診Symviewで築く、持続可能な在宅医療 ─ 高齢化社会における糖尿病専門医のアプローチ

2025.05.08 10:00
東京都の江東区医師会は、東京都在宅医療推進強化事業により24時間診療体制など切れ目のない在宅医療体制の構築に向けた医療DXを推進しています。その一環として、江東区内の医療機関にレイヤードのWEB問診Symviewを導入し、在宅医療領域での実証が進められています。


同区の福井クリニックの糖尿病専門医、本間博文先生は、本事業を通じてSymviewを導入し、糖尿病患者の在宅医療に活用されています。今回は、Symviewを通じて在宅患者とどのように向き合い、診療の質を高めているのか、その実際についてお話を伺いました。


インタビュアー:株式会社レイヤード 地域医療ICT推進室 村木僚太
東京都在宅医療推進強化事業とは 
今後の高齢化の進展による在宅医療の需要増加に加え、オンライン診療などコロナ禍で受療行動が変容したこと、また、24時間診療体制など切れ目のない在宅医療の提供体制の構築に向けた取組状況は、区市町村により差があることを課題とし、在宅医療提供体制の充実を図ることを目的とした事業。

WEB問診Symviewとは
特許技術(特許第7072817号)を活用し、患者の主訴や年齢、性別ごとに質問を出し分けることができ、熟練した医療者のような問診を実現。患者の医療ニーズを深く把握できることはもちろん、非同期・非接触で医療者間および医療者と患者(家族)間で情報共有が可能なツールとして、在宅医療での活用も進んでいる。
Symview活用のきっかけ ─糖尿病専門医の診療を希望した患者家族の存在
「江東区で、寝たきりの家族を診てくれる糖尿病専門の先生はいないか。」


ある患者家族がインターネットで検索し、たどり着いたのが福井クリニックでした。
患者の自宅は福井クリニックから2~3kmの距離にあり、地図上では近く見えるものの、普段自転車で訪問診療を行っている本間先生にとって、頻繁に訪問するには現実的ではない距離でした。
それでも患者家族の希望に応えたいという思いから、Symviewの活用を検討されました。


本間先生:
「在宅医療は“近さ”が前提になることが多いのですが、糖尿病は毎日の血糖値の変動を見ながら治療方針を調整していく必要があります。頻回な訪問が難しくても、日々の情報が手に入れば診療は可能だと考えました。その情報を得る手段としてSymviewが適していると思いました。」


村木:
「在宅医療では、患者さんのご家族が血糖値や体調などをノートに記録しておいて、医師が訪問時にそれを確認するという運用が一般的です。ただ、それでは頻繁な訪問が前提になりますよね。WEB上で医師と家族が情報共有できるという点に着目されたということですね。」


本間先生:
「その通りです。現在は1日2回、血糖値等をSymviewで報告してもらっていますが、従来の方法と比べて、遠隔にいながら診療の合間でデータを確認できるようになりまた。」
診療の質と家族の安心感を同時に高める
本間先生から糖尿病の在宅患者でSymviewを活用したいとご相談いただいた際、ご家族がスムーズに記録できるようにWEB診の内容をカスタマイズしました。
ご家族はスマートフォン操作に抵抗がない世代で、Symviewを積極的に活用され、日々の管理に役立てられています。
Symviewで管理している主な項目
血糖値:1日5回の測定値バイタルサイン:体温、血圧、脈拍、SpO₂(午前・午後)排泄管理:排尿量、水分摂取量、排便状況投薬状況:インスリンの種類ごとの投与量と時間薬剤管理:処方薬・消耗品の残量、補充希望全身状態の観察記録:覚醒状態、痰や唾液の有無、むくみ等

本間先生:
「当初は血糖値の確認が主な目的でしたが、ご家族が丁寧に記録してくれることで、患者さんの全体像が鮮明に見えるようになりました。自由記述欄には体調や気になる変化も書かれており、“質的な情報”が診療に非常に役立ちます。センシングデバイスの方が記録の手間は少ないかもしれませんが、数値では得られない、患者の生活に根ざした情報を把握できる点で、Symviewは有用だと感じています。」

村木:
「1日2回のWEB問診入力というのはなかなか大変なのではとも思いますが、実際に利用されているご家族の反応はいかがですか。」

本間先生:
「とても丁寧に入力してくれます。Symviewの操作はとてもシンプルで、ご家族のスマートフォンでQRコードをかざすだけで利用できます。ログインの必要もなく、画面の指示に従って入力するだけなので、特別な機器や複雑な操作がいりません。こうした簡便さが、ご家族にも無理なく使い続けていただけている理由だと思います。在宅医療では“家族が入力しやすい”ということが、継続的な情報共有においてとても重要です。
また、ご家族にとっては、“いつも医師とつながっている”という感覚が安心感につながっているようです。記録することで、ご自身の気づきや気持ちの整理にもつながっているのではないかと思います。私自身も、診察の合間などの隙間時間に情報を確認できるので、Symviewを通じて事前に伝えたいことを把握でき、結果的に電話の回数も半減しました。さらに、情報が記録として残ることで、“言った/言わない”といった行き違いがなくなり、双方にとって大きなメリットになっています。」

村木:
「しっかり情報共有できることで患者さんとの信頼関係(ラポール)を構築できるということですね。」
安心感をもってもらえたことがメリットだとお話される本間先生
医療DXによる質の向上と業務の最適化
医療において「効率化」という言葉は、患者側からは“流れ作業”的に扱われる印象を持たれることもあります。しかし本来の意味は、限られた医療資源の中で、一人ひとりの患者にしっかりと向き合うための「質の向上」にあります。

本間先生も、今後さらに高齢化が進む社会においては、医療DXを通じて的確で継続的な対応を可能にする仕組みが不可欠だと語ります。 
Symview活用による具体的な変化
1. 診療の質の向上:
センシングデバイスだけでは得られない、質的情報が患者状態の把握に繋がる。 数値データだけでなく患者家族のコメントから、「今日の状態は大丈夫そうだな」と患者像がより詳細に想像できるように。


2. 処方の精度と訪問準備の向上:
消耗品や薬の在庫情報を事前に把握でき、処方や訪問準備がスムーズに。 往診前に薬局へ処方内容を通知することが可能となり、往診当日にその場で会計処理が可能に。 


3. 家族とのコミュニケーションの改善:
電話の回数が半減し、「言った/言わない」のトラブルも回避。 事前にWEB問診を入力することで、ご家族自身の気持ちの整理や言語化に繋がる。

本間先生:
「診療において最も大事なのは、ヒューマンエラーを防ぎ、限られた時間の中でも確実な医療を提供することです。Symviewを活用することで、患者さんの状態や処方内容、物品の不足状況を事前に把握できるようになり、訪問準備が格段にしやすくなりました。特に、血糖測定器のチップなど消耗品の在庫状況を把握できることで、無駄な再確認や再訪問を減らすことができ、医療者側の業務も効率化されています。情報の行き違いを防ぎながら、診療の質も保てる。Symviewは、医療現場における“効率”と“安心”の両立を支えるツールだと感じています。今回は糖尿病患者さんへの活用でしたが、他の慢性疾患等でも有用性は高いと感じており、今後さらに在宅医療の幅広いケースで活用していきたいと考えています。」
サポートさせていただいた株式会社レイヤード 地域医療ICT推進室 村木
Symviewが広げる、糖尿病専門医による遠隔医療の可能性
本間先生は糖尿病専門医として、診療圏に限らず医療資源が限られる地域にも貢献できないかと考えておられます。

糖尿病は生活習慣に密接に関わる慢性疾患でありながら、その診療には専門的な知識と継続的な管理が求められます。しかし、特に地方や離島では、糖尿病専門医が近くにいないという現実があります。

本間先生:
「私の出身は新潟県の地方都市ですが、例えばそうした地域では、かかりつけ医の先生が糖尿病も含めて総合的に診ておられます。ただ、専門的な判断やアドバイスが必要になる場面もあります。診療報酬等の制度面の問題もありますが、遠隔でも支援できる形があれば、患者さんにとっても医師にとっても安心材料になるはずです。」

そのヒントとなったのが、今回のSymviewによる在宅患者との取り組みでした。血糖値やバイタルサイン、家族の観察記録などから、遠方にいる患者の状態を“見える化”し、専門的な助言が可能になる。まさに、距離を越えた連携の可能性を感じたといいます。

本間先生:
「専門医が地域のかかりつけ医の“少し後ろ”に控えていて、必要に応じて支援する。そんな形が現実になれば、地方でも安心して医療が受けられるようになると思います。Symviewのような仕組みは、その実現を後押しする手段の一つとして非常に有望です。」

村木:
「Symviewはあくまでツールの一つに過ぎませんが、先生のような専門医の知見を必要としている地域に届けるお手伝いができれば、私たちとしても嬉しく思います。」
おわりに──ICTを通じて、専門性が届く未来へ
超高齢社会の到来、そして医療資源の地域偏在という課題に対し、在宅医療の充実は避けて通れないテーマです。そうした中で、WEB問診「Symview」のようなICTツールは、単なる業務支援を超えて、医師の専門性を“必要としている場所”に届けるためのインフラとしての役割を担う可能性があります。

福井クリニックの本間先生が実践された取り組みは、地理的制約にとらわれず、専門医が在宅医療に関与できる新たな可能性を示しています。Symviewを介した情報共有は、患者と医療者との距離を縮め、日々の診療の質や信頼を高める“つながり”の基盤として機能しています。

そして何より重要なのは、この仕組みが医療者の過度な負担や自己犠牲の上に成り立つものではないという点です。ICTの力を活用することで、限られた人員や時間の中でも、継続的かつ質の高い医療を無理なく届ける体制が築かれつつあります。

こうした現場の実践が積み重ねられていくことで、患者と医療者の双方にとって持続可能な医療のかたちが広がり、誰もが安心して暮らせる地域医療の実現につながっていくはずです。
福井クリニック(東京都江東区)
内科・糖尿病内科・訪問診療を中心とした地域密着型の医療機関。外来診療に加えて、在宅医療にも力を入れており、生活習慣病をはじめとする慢性疾患への継続的な診療体制の提供に取り組んでいる。地域のかかりつけ医として、患者一人ひとりに寄り添った丁寧な医療を目指している。
公式サイト:
本間 博文先生
福井クリニック勤務。糖尿病内科専門医、内分泌代謝(内科)専門医、内分泌代謝・糖尿病内科領域指導医、総合内科専門医。新潟大学医学部卒業後、大学病院および地域基幹病院にて糖尿病・代謝内分泌疾患を中心とした臨床に従事。都市部の診療にとどまらず、在宅医療を通じて慢性疾患患者の生活に寄り添う医療を実践。ICTの利活用による持続可能な医療提供体制の構築にも積極的に取り組んでいる。

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