アジアNo.1(※1)のマーケティングリサーチ企業「インテージグループ」のIT事業を担うインテージテクノスフィア。当社は2019年夏より米Snowflake Inc.のデータウェアハウス(※2)製品「Snowflake」(以下、企業名:「Snowflake Inc.」、製品名:「Snowflake」と表記)を採用し、日本法人におけるファーストユーザーの1社に数えられています。
また、2022年2月からはSnowflake Inc.よりAIデータクラウド・サービスパートナーとしての認定を受け、2024年12月には、「PREMIER」というランクまで上り詰めました。この認定は上位から2番目のランクで、「PREMIER」以上に認定されている日本のSIer企業は6社のみです(※3)。
2019年11月に日本法人が設立されて以来、国内で導入企業が増え続けているSnowflake。いち早くその可能性に着目したのはどのような理由だったのか。また、Snowflakeのサービスパートナーとしてどんなサービスを手がけ、顧客の課題解決を実現しているのか。これまでの軌跡について、Snowflake Inc.との取り組みを推進してきた新 俊駿に聞きました。
事業シナジーセンター・データアーキテクトグループ
システムコンサルタントの新俊駿
※1:「ESOMAR Global Market Research Report 2024」ESOMAR’s Global Top-50 Insights Companiesに基づく(グループ連結売上高ベース)。
※2:データウェアハウス(DWH)は、大量のデータを集めて整理し、分析しやすくするシステム。企業が過去のデータを活用し、意思決定を支援するために使われる。
※3:2024年12月時点
日本上陸前からSnowflakeへ熱視線
インテージは1960年の創業以来、「パネル調査」を中心に据えたビジネスを展開してきました。パネル調査とは同じ対象者に一定期間、同じ質問を繰り返す調査方法です。1964年から消費者の購買データを継続的に収集するSCI®(全国消費世帯パネル調査)をスタートし、メーカーや流通・小売業のマーケティング活動に活用してきました。その後1994年には、店舗で商品が販売された時点で記録される取引情報「POSデータ」を活用したSRI®(全国小売店パネル調査)を開始しています。
そんなインテージの開発本部が独立し、インテージ長野と事業統合して2014年に発足したのが、インテージテクノスフィアです。当社はこれまでグループ内におけるマーケティング関連システムの開発を主に担ってきましたが、現在はその確かな技術力と豊富なノウハウを駆使し、顧客の課題解決にも注力しています。「内」だけでなく「外」にも目を向けるようになった背景には、2020年7月から「データに魂を吹き込み、世の中を感動させる」というビジョンを掲げるようになったことが挙げられると、新は言います。
「インテージテクノスフィアは、グループ内のシステム系人材が集結して誕生した会社として、創業当初はグループ内の開発に注力してきました。しかし、コロナも重なる中で企業としての将来を考えると『これからはもっと外に向けてアピールしていかなければいけない』と共通した意識を持ちました。その動きを確かなものにするためには、事業戦略として新しいビジョンが必要です。当社の仕事は、一見すると地道な作業の繰り返しです。その無機質に思えるようなデータの収集や登録作業など、『データハンドリング』に魂を込めて価値あるものへと転換する。そして、お客様へ価値提供することで、新たな発見や驚きを届けようという想いから現在のビジョンが策定されたのです」
ビジョンの策定から遡ること1年ほど前の2019年夏。インテージテクノスフィアは、グループ企業であるインテージが集計したパネルデータを効果的に活用するパネルシステムを構築・運用するにあたり、処理速度の遅い既存のデータウェアハウスに限界を感じていました。そこで新しい製品を探した結果、Snowflakeに辿り着きます。Snowflakeについて、新は他社製品と比べて「圧倒的に優れている」と、3つの優位性を列挙しました。
「まずはデータ処理の速度です。同じ価格帯の従来製品に比べ、1.5~2倍程度早く、1時間かかる作業が30分で終わることもあります。次にコスト。同量のデータを従来製品で取り扱った場合と比較すると、30%程度削減できる可能性があります。最後は運用のしやすさです。今までのデータウェアハウスでは、辞書でいう索引にあたるようなインデックスの設定が必要なため、社内のエンジニアがチューニングする必要がありました。しかし、Snowflakeの場合は何もする必要がないんです」
2012年にシリコンバレーで創業したSnowflake Inc.は、2019年11月に日本法人が設立され、今では多くの日本企業がSnowflakeを導入しています。しかし、インテージテクノスフィアがSnowflake Inc.に着目したのは、日本上陸前のことであり、当時Snowflake Inc.は創業間もないアメリカのベンチャー企業の一つに過ぎませんでした。当然ながら導入にあたり、スムーズに話が進むはずもなかったと、新は振り返ります。
「とにかく社内の調整が一番大変でした。海外のベンチャー企業で、かつ日本にまだ上陸していないこともあり、上層部の方から信頼を得るには難しさがあります。ですが、インテージが求める性能要件をクリアできる製品はSnowflakeしかありませんでした。そのため、徹底的に性能検証をした上で、いかにSnowflakeが素晴らしい製品かを伝え続け、半年間という社内稟議を経てなんとか採用に至りました」
当時の様子を振り返る、新。導入までには様々な苦労があった
製品への強い確信から「サービスパートナー」となることを決意
採用決定後、海外の担当者と英語でやり取りを重ね、Snowflakeを用いたパネルシステムを開始。現在ではインテージグループにおける複数のパネルシステムでSnowflakeを活用しています。その中でもっとも代表的なものが、Snowflake導入により進化を遂げた小売店販売データベースの「SRI+®」だと、新は話します。
「SRI+は、全国約6,000店舗の販売実績から国内全体の売上を推計した小売店販売データベースです。従来のSRIからSRI+になったことで、大幅なデータ量の増加や高頻度のデータ更新、複雑なロジックの実装が求められ、より多くのユーザーが利用可能な高い性能要件も必要とされました」
Snowflakeの導入は自社システムだけにとどまりません。インテージグループのパネルシステムへ導入がひと段落した2021年。技術部門の社員から、「Snowflakeをインテージの中だけで活用するのではなく、他の会社にも販売してはどうか?」との話が持ち上がります。Snowflake Inc.には、同社AIデータクラウドの採用に伴うデータ移行や設計・導入・分析支援などを行い、Snowflake Inc.に代わってライセンスの再販も可能な「サービスパートナー」という制度があります。つまり、サービスパートナーをインテージテクノスフィアのビジネスの一つにする検討が行われたのです。「これからは、よりグループ外でのビジネスを広げていこう」というビジョン策定時における会社の姿勢があらわれた一幕と言えます。とはいえ、社内では代理店事業を展開することに懐疑的な声もあったと、新は振り返ります。
「Snowflakeのサービスパートナーとは、いわゆる同社の正規代理店のようなものです。インテージテクノスフィアは、これまで代理店事業を積極的に推進してきたわけではありません。なので社内からは、少なからず反対する声が上がりました。しかし、Snowflakeを実際に使用した私たち技術職は、ずば抜けて優れた設計思想を持つ製品であると知っていましたし、これをぜひお客様にもおすすめしたいと考え、何とかサービスパートナーになることを推し進めました」
新は、実際に活用してきたからこそ分かるSnowflakeの良さを力強く説明してくれた
こうしてインテージテクノスフィアは2022年2月、Snowflakeのサービスパートナー「SELECT」に認定されました。以降サービスパートナーとして、様々な企業へのSnowflake導入を支援していますが、具体的にどのような課題を解決しているのでしょうか。
「たとえば大手電機メーカー様では、プロジェクトの一つのデータウェアハウスをSnowflakeへ移行したところ、以前と同様のパフォーマンスを維持しつつ、移行直後でインフラコストを20%削減することに成功しています。そこから、さらなるコスト削減に向けた取り組みを同社と共に進めた結果、インフラコストを35%~40%ほどカットすることができ、担当者様からは『インテージテクノスフィアさんと一緒にやって良かった』と感謝の言葉をいただきました。また、大手製薬企業様からは、Snowflake採用により『運用が楽になった』という評価とともに、これまで取り込めなかった大きなマーケティングデータを入れられるようになり『分析の幅が広がった』と喜びの声をいただいています」
Snowflake Inc.と共創の事例も誕生。「POS-is®」を通じて、社会課題にデータで応える
企業へのSnowflake導入実績を積み重ね、Snowflake Inc.と確かな信頼関係を構築してきたインテージテクノスフィア。そのような中、2023年11月にはインテージ、インテージテクノスフィア、Snowflake Inc.の3社による共創で、Snowflakeをベースとした消費財メーカー営業部門向け流通データ統合・分析サービス「POS-is」を開発しました。
同サービスは、小売企業ごとにフォーマットの異なるPOSデータを統一フォーマットで統合・蓄積するほか、インテージの市場データや、商品・店舗マスタ、出荷や納品に関する実績データなど、様々なデータと組み合わせて分析するツールです。
サービスの全体像。
データの整形・加工から整形済みデータの保管までをSnowflakeが担っている
新によると、「POS-is」を導入したメーカーからは「今まで目に見えなかったデータを確認することができた」など上々の評判を得ているといいます。しかし、今後さらに使い方次第では、商品ロスや過剰在庫などの問題を解決する可能性を秘めていると説明します。
「日本では、商品がメーカーから消費者の手に届くまでに卸売業者を介しますが、卸売業者や小売店の在庫状況を把握することは困難です。そのため、売れない商品が卸売業者や店頭に在庫として溜まっていく『過剰在庫』が今、様々なメーカーで深刻な問題となっています。また、『販路限定』『季節限定』といった限定商品は、売上予測を外した場合ほぼすべてを廃棄しなければならず、これも大きな問題と言えます。しかしPOS-isであれば、フォーマットが異なる小売企業のPOSデータと店舗への納品データを統合し、迅速に可視化することができますので、商品の販売実績だけでなく、店舗の在庫量や回転率などを高い精度で把握することが可能です。そのため、過剰生産・過剰在庫や商品ロスを抑制する効果が期待できると、私たちは考えています」
このような経緯もあり、2024年12月には、Snowflake Inc.とのパートナーシップが一つの形となります。「ELITE」「PREMIER」「SELECT」「REGISTERED」というSnowflakeサービスパートナーにおける4つのランクの中で、上位から2番目にあたる「PREMIER」の認定を取得しました。日本国内において「PREMIER」以上は6社のみ。「SELECT」以下にはインテージテクノスフィアより規模の大きい会社も多く、新は「我々の自信につながっている」と話します。
Snowflakeと共に、データ領域のさらなる価値と感動の創造を目指して
「PREMIER」の認定を受けた後も、インテージテクノスフィアは歩みを止めることはありません。Snowflake日本法人ファーストユーザーおよびサービスパートナーとして培ってきた豊富な知見とノウハウを活かし、お客様にとって真に価値のあるデータを提供していきたいと、新は想いを伝えます。
「今年度の当社のSnowflake関連ビジネスは、昨年度に比べて2倍程度伸長しています。そのため引き続き、その成長率を維持することが目標です。また、Snowflakeを知らないユーザー様もまだまだ多いので、インテージテクノスフィアは日本における第一人者としてSnowflakeを広め、お客様が成果を上げるお手伝いをしていきたいです。そして、『POS-is』のようなSnowflakeを利用した共創の成功事例を作り出せればと考えています」
「データに魂を吹き込み、世の中を感動させる」。このビジョンを見据えながら、インテージテクノスフィアはこれからもSnowflakeを駆使し、お客様の課題解決に努め続けていきます。