10年前、東京・月島の路地裏で小さなビストロをオープンしました。古い街並みの中、店内の窓から漏れる暖かな灯り。その扉を開くたびに広がるのは、料理の香ばしい香りとお客様の笑顔。オープン初日、厨房から店内の様子をそっと覗き見ると、初めてのお客様が笑顔で食事を楽しむ姿が目に飛び込んできました。その瞬間、緊張と不安が混じる心の中に、小さな光が灯ったような感覚を今でも覚えています。
「ここに来るとほっとするね」と初めてのお客様から声をかけられた時、胸に湧き上がったのは言葉にできない喜びと感謝。この場所がただの食事処ではなく、心が温まる空間になれたのだと感じました。
友人との再会、大切な人との記念日、家族の笑顔—この場所で生まれる思い出の一つひとつが、ただの料理を特別な体験に変えていきます。それが私たちの目指す理想の姿です。これからも、皆様と共に新しい物語を紡ぎ続けていきたいと願っています。
本ストーリーでは創業10年を迎えたFOOD LIBRARYの軌跡について、代表・難波がお話いたします。
街の物語を紡ぎ、人々が集う場所。FOOD LIBRARYが目指した特別な場所
「この街をもっと素敵な場所にしたい」それが私の原点でした。飲食業界で12年間の経験を積む中、私は月島・勝どきエリアの変化をずっと見つめてきました。2000年当初、このエリアは近隣で働く人たちが中心でしたが、次第に家族が暮らす住宅地へと変貌しました。高層タワーマンションが立ち並び、生活の利便性が整っていく中で、一つだけ足りなかったもの—それは「気軽に楽しめる飲食店」でした。
「こんな素敵な街に、地元で愛される場所が必要だ。」そう感じた瞬間、胸の奥から熱い情熱が湧き上がりました。この街に移り住み、変化を間近で見てきたからこそ、誰もが気軽に立ち寄れる場所を作りたい—そんな使命感が私を突き動かしました。
いつでも立ち寄れて、友人や家族との時間を楽しめる空間。そして、それはただ料理を提供する場所ではなく、人々の思い出の一部となるような特別な場所でありたいと願いました。そこで私は、店を通じて「物語を紡ぎ、人々と共有する」ことを目指し、
社名をFOOD LIBRARYと名付けました。
社名に込めた想い。忘れられない、クリスマスのある一夜の出来事
この名前には、100席あるレストランで働いていた時のある出来事が影響しています。クリスマスの夜、満席の店内で一組のカップルがプロポーズをしました。キャンドルの柔らかな光に包まれた中、男性は立ち上がり、静かにひざまずきました。少し震える手で指輪の箱を差し出し、真剣な眼差しで女性に語りかけました。その瞬間、女性の目には涙があふれ、周囲の人々も息を呑んで見守っていました。
「はい」という言葉が静寂を破った瞬間、店内は拍手と歓声で満たされました。スタッフもお客様もその場の幸福感を共有し、見知らぬ者同士が笑顔で祝福し合う光景が広がりました。その夜、店全体が温かい祝福の空間に変わり、まさに「人生の特別な瞬間」を共有する場となったのです。
こうした記憶に残る出来事を数多くお手伝いしてきた経験から、「あの時このお店でこういう出来事があったよね」と思い出してもらえる場所を作りたいと強く思うようになりました。その想いが、“食事を通じて新しい物語を共に書き記していきたい”という願いにつながっています。
ワクワクを届けるFOOD LIBRARY。「肉盛り」が生んだ驚きと感動の店舗展開
こうして生まれたのが「アールキッチンビストロ&ダイナー」。当時は良い肉をカジュアルに提供するお店が少なく、豪快にお肉を提供する店を作りたいと考えました。そこでメニューに【肉盛り】という、牛・豚・ラム肉を楽しむ一皿を加えたところ話題となり、すぐにお客様が集まりました。また、前職の経験を活かして一般市場にはないワインを提供することで独自性を打ち出しました。
さらに、店舗の内装にも工夫を凝らし、1Fはダイナー系のカジュアルな雰囲気、2Fはビストロ系の洗練された雰囲気を作り出しました。おしゃれでありながらも親しみやすい空間を提供することで、他店との差別化を図っています。食材の一つひとつには、その背景にある物語があります。それを知り、お客様に味わっていただくことで、ただの食事ではなく「特別な体験」を提供したいと考えました。
内装
企業スローガン:『ワクワクを届けたい!』
扉を開けた瞬間、広がるのは温かい光と香ばしい料理の香り。そして、迎えるスタッフの笑顔。その空間は、人と人が自然と会話を交わし、笑顔が広がる場所です。私たちは、そんな「心の拠り所」となる店を目指しています。
店舗ごとに異なるテーマで展開していることも私たちの特徴です。「FIGO PIATTO」では産地直送の魚介料理とナチュラルワインを楽しむひととき。「大衆バルレモキチ」では芝浦から直送の鮮度抜群ホルモンとこだわりのレモンサワーが誘う路地裏の秘密基地。これらはすべて、“訪れるたびに新しい発見がある”という驚きと感動を提供するための挑戦です。
-新鮮ホルモンとレモンサワーが誘う大人の楽園-
大衆バル レモキチ
-国産牛100%のハンバーグと厚切りハラミステーキ-
勝どきハンバーグ&ステーキR
-ナチュラルワインと産地直送食材イタリアン-
FIGO PIATTO (フィーゴピアット)
コロナ禍で見つけた希望。「ありがとう」に支えられたFOOD LIBRARYの新たな使命
2020年、世界は一変しました。コロナ禍により街から人々の笑顔が消え、飲食店は未曾有の試練に立たされました。営業短縮、店内飲食の禁止。普段のにぎわいは静まり返り、未来が見えない不安な日々が続きました。
しかし、その暗闇の中で見つけた光がありました。スタッフと何度も話し合い、「どんな時も美味しい料理を届けたい」という想いが私たちを支えました。
2020年4月の緊急事態宣言中の曇り空、店先でテイクアウト営業を整えていると、一人の常連のお客様が傘を片手に立ち寄られました。「ずっと家にいるから、昼は公園でごはんを食べたい」と語りながらお弁当を1つ頼んだその方。傘を閉じながらふとこぼれる「ありがとう」の声に、私たちはその小さな行動の大きな意味を感じました。
緊急事態宣言中の当時の様子
公園帰りに再び立ち寄っていただいたそのお客様。「温かい料理をありがとう。あなたたちもエッセンシャルワーカーよ。」その言葉が胸に深く刻まれました。雨上がりの空のように、その瞬間、私たちの心にも静かで清々しい感動が広がりました。その言葉を受け止めることで、ただ料理を提供するだけではなく、お客様の日常に力を与えられる存在でありたいという使命感が一層強まりました。
その日をきっかけに、料理が単なる食事ではなく、誰かの生活の一部として支えになれるという喜びを改めて実感しました。
その経験は、ただ料理を提供するだけではなく、お客様の心を温める存在でありたいという私たちの信念を強める出来事となりました。
困難を成長に変えてきたFOOD LIBRARY。これから先も、この街で“思い出の味”を提供し続けていけるように
現在、私たちが手がける5店舗には、多くのお客様に足を運んでいただいております。この成果の背景には、コロナ禍で苦しい時期を乗り越えた経験があります。飲食業界に前例のない制約が課され、店内営業が自由にできない中で、私たちは店舗以外で売り上げを立てる方法を模索しました。バーチャル店舗としてカレー専門店、ハンバーグ専門店、唐揚げ専門店などを次々と立ち上げ、テイクアウト事業にも本気で取り組みました。
その過程では、まずお客様のニーズを把握することに注力しました。店先にアンケート用紙を置き、どのメニューが求められているのかを細かく分析。テイクアウトのためのPOPやディスプレイも「見てすぐ買いたくなる」ように試行錯誤を繰り返しました。また、注文の利便性を高めるためにモバイルオーダーを導入。帰宅途中にスマホで注文し、スムーズに受け取れる仕組みを整えました。
さらに、感染対策として店内でのソーシャルディスタンスを徹底しながら、モバイルオーダーを店内でも活用することで接触を最小限に抑えました。これらの取り組みは短期的な対応にとどまらず、長期的な効率化にもつながり、人件費率を大幅に削減する成果を生みました。その結果、厨房とホールの両方を柔軟にこなせるハイブリッド人材を育成することにも成功しました。
その過程で、私たちは「困難が成長の種」であることを学びました。一歩踏み出すたびに新しい可能性が見えてきて、逆境の中で磨かれた創意工夫が、今の経営基盤を支えています。そしてただ店舗数を増やすことではなく、この街の中で“思い出の味”を提供し続けることを目指しています。
社会への価値提供地域のにぎわい創出:オフィスワーカーや家族連れが日常に彩りを感じられるような時間を提供。ECサイト「Delicious Connect」:プロの目で選んだ一流の食材を使ったシェフの料理を、自宅で手軽に楽しめるサービスです。「Delicious Connect(デリシャスコネクト)」はオーダー後に調理を開始し、できたての美味しさを全国どこでもお届けしています。
前回のストーリーはこちら
ケータリング事業:特別な場を“記憶に残る食体験”へと演出。
百貨店でのケータリングイベント
テイクアウト・デリバリー事業:地域密着型のサービスで暮らしの利便性を向上。
今後は、既存事業の強化と新規事業の拡大をバランス良く進めていく必要があります。特に、EC事業やテイクアウト事業の拡張に引き続き取り組みながら、サステナブルな活動や人材育成にも丁寧に取り組むことで、少しずつ社会に提供する価値を高め、競争力を保てるよう努めていきたいと考えています。
バーチャル店舗の人気メニュー
創業から10年ー“三歩進んで二歩下がる”を繰り返し、進化し続けたFOOD LIBRARYが伝えたい感謝の想い
「結局、行動する者こそが未来を切り拓く」
よい物件、人材、チャンス—その瞬間を逃さないためには、立ち止まらず行動し続けることが大切です。創業から10年、私はその信念を胸に走り続けてきました。挑戦し、失敗し、そしてまた挑戦し、少しずつ前進する中で得た成功が、私たちを成長させてきました。まさに“三歩進んで二歩下がる”を繰り返しながら、進化を続けてきた10年でした。
中長期的なコントロールというのは、「大数の法則」に則ったものだと言えます。状況を良くする行為、悪くする行為は、行動した数が多ければ多いほど、よりハッキリ見えてくるものです。つまり、人生においては常にチャレンジを続け、行動した数を多くしていくことが重要だと痛感しています。
「新たな物語を共に紡ぐ場所として」
FOOD LIBRARYが歩んできた10年の歴史は、スタッフ一人ひとりの情熱と、訪れた方々の笑顔に支えられてきた物語です。その一瞬一瞬が大切な記憶となり、この場所を特別な空間へと育ててくれました。
「この10年、関わるすべての方々の物語があったからこそ」
飲食店とは、単なる料理やサービスを提供する場ではありません。そこで交わされる会話や、料理を囲む笑顔、特別なひとときを彩る体験が、人生の中のかけがえのない一コマとなるのです。その瞬間を共有できたことが、私たちにとって何よりの宝物です。
「心を込めて織りなす日々」
厨房で新しい料理が生まれる高揚感、ホールで交わされる温かな会話、そしてお客様から届く「美味しい!」の言葉。それらが一つに重なり合い、飲食店で働く日々には特別な喜びが生まれます。そこには、他のどんな仕事にもない温かさと誇りがあると信じています。
「未来に向けた挑戦」
FOOD LIBRARYは、これからも変わり続ける街の中で、訪れる人々の「またここに来たい」という想いに応える存在でありたいと考えています。街に愛される場所であると同時に、そこに関わるすべての人が誇りを持てるような空間をつくり続けていきます。
創業からの10年は、多くの挑戦と成長を繰り返してきた時期でした。これから迎える新しい時代に向けて、さらに革新を続けながら、食を通じて人々の生活に彩りを添える物語を紡ぎ続けていきます。
「FOOD LIBRARYという物語」 美味しい料理と心のこもったサービスが、訪れた人々の記憶に残り、「あの店に行きたい」と思える場所を目指して。FOOD LIBRARYは、これからも新しいストーリーの舞台となり続けます。
最後に—この10年、私たちを支えてくださった皆様に心から感謝申し上げます。FOOD LIBRARYは、関わるすべての方々とともに歩んできた物語です。これからも皆様の笑顔を糧に、新しい挑戦を続けてまいります。どうぞ、これからの10年も私たちと共に新たなページを紡いでいただければ幸いです。
HP:
メール:info@food-library.co.jp
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