「社員の創造力を伸ばす」ことへの挑戦。今、アドウェイズが「人材開発」に注力する理由

2025.02.05 12:03
株式会社アドウェイズでは、2024年1月に、デザインによる経営課題の解決を推進するため、
コミュニケーションデザイングループは「すべての会社機能をデザインする」というミッションをもとに、サービス開発、プロセス改善、ブランド開発などの事業課題をデザインの力でアプローチし、解決していくために生まれた組織です。


設立から1年、事業課題解決に向けての取り組みや、組織の特色を活かしたプロジェクト推進を続けたことで、近頃は種まきをしていた土壌からようやく芽が出始めました。


そのうちの1つに、社員への研修プログラム「NS力開発プログラム」があります。


「NS力開発プログラム」とは、アドウェイズのパーパスである、“全世界に「なにこれ すげー こんなのはじめて」を届け、すべての人の可能性をひろげる「人儲け」を実現する。”の「なにこれ すげー」の頭文字から名付けた、研修プログラムです。


具体的に言えば、組織や社員が持つ事業課題の解像度を上げ、本来あるべき姿に対してのボトルネックを明確にし、解決策を導き出していく研修となります。課題解決のプロセスを学び、実務に活かすまでのプログラムを展開することで、社員の個性を尊重しながら能動性を促す環境を提供しています(2025年1月時点で約50名の社員が受講)。


今回は、なぜアドウェイズがパーパスに紐づく社員教育に向き合い始めたのか、またどのように社員一人ひとりに向き合ったプログラムを作っていったのかを、特別顧問の田中裕一さん、アドウェイズ代表の山田翔、コミュニケーションデザイングループ管掌執行役員の遠藤由依の三者鼎談でお届けします。
(左から遠藤、山田、田中さん)


特別顧問:田中 裕一
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)にてEコマース事業のデザイン統括、新規事業のプロダクトマネジメントなどを歴任し、Visionalグループ 株式会社ビズリーチにて執行役員 CDO。デザイン本部長、プロダクト組織開発本部長を歴任。個人が代表を務める企業で、経営×デザインのコンサルティング事業、MoD|デザインの学び舎事業を運営。
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AIを高次元で活用し、これまでの業務のあり方を変えていく。そうした変革を推進できる社員が少ない会社では、今後の成長も見込めない
遠藤:本日は、お集まりいただきありがとうございます。


まず、研修実施の背景から思い返していきたいと思うのですが、2023年の秋頃、アドウェイズでは、社員全員が共通認識を持ち、能動的に前に進む会社へと進化させていくために「パーパスを社員に浸透させる」という、明確な経営課題がありました。


山田:2023年の春に
したのですが、正直なところ、社員への浸透はスムーズに進みませんでした。経営層から一方的に発信する形式では定着しなかったため、より効果的な浸透方法を模索していたんです。
でもよくよく考えると、仮に社員にパーパスを浸透させたとしても「なぜそれを浸透させるのか」「その先に何を目指すのか」を社員一人ひとりが自ら考えるようにならないと、意味がないのではないかと思ったんですよね。そこで、パーパスの浸透とその後のプロセスの共有を「デザイン」してもらおうと思い、遠藤さんに依頼をしました。


遠藤:はい。私も、デザイン領域のマネージャーを続けている内に、課題解決のあり方をデザイナーに限定して伝えているだけでは、会社はいつまで経っても変わらないと思っていたんです。そのため、社長から依頼をされた時は良いタイミングだと思い、引き受けることになりました。


田中さんは、もともとデザイン組織の組織づくりやマネジメントにコミットし、デザインの考え方を活かして会社経営や事業を作って来られた方です。いくつかの企業に向けてアドバイジングやコンサルティングを行っていることも伺っていました。田中さんなら、私たちに足りないパーツを補完してくれるかもしれない。そんな直感から、お声がけをしました。


田中:ありがとうございます。遠藤さんが役員に就任されるタイミングでお声がけをいただきました。確か、最初にお声がけいただいたのは、あるイベントでのちょっとしたやり取りがきっかけでしたよね。簡単な質問に答える形で、私が紙に書いて説明をしたことを覚えています。それがきっかけで関心を持っていただけたようで、嬉しかったです。個人的にも、遠藤さんのビジョンや熱量、リーダーシップに感銘を受けて、力になりたいとも思いました。


話を戻すと、山田社長はパーパス浸透後の未来に、なぜ危機感を覚えたのでしょうか。


山田:そうですね。いくつかあるのですが、例えば昨今、生成AIが大変注目されており、近い将来、日常生活で生成AIを活用することが当たり前の時代になっていくと思います。しかし、適切な指示を与えなければ業務で十分に活用することはできません。


そして、単にAIの使い方を覚えるのではなく「何のために使うのか」という目的や思考プロセスを考えて、アウトプットする必要も生じます。強い言い方をするならば、AIを高次元で活用し、これまでの業務のあり方を変えていく。そうした変革を推進できる社員が少ない会社では、今後の成長も見込めないのでは、と思っているんですよね。具体的には、これまで不可能だと思われていた自律的なワークフローの構築や、自然言語で柔軟に応対できるエージェントの開発を目指すなど、生成AIをハイレベルで使いこなしていく必要があると考えています。


さらに、毎年の新卒採用に関しても、気になっていたことがありました。それは、新卒社員のレベルが毎年上がっていると感じる点です。特にポータブルスキルのレベルが年々上がっていると感じます。


教育の進化や、デジタル環境が当たり前に存在する時代に生まれ、いわゆるデジタルネイティブとして育ってきたことで、そうした能力が高まったと考えられるのですが、既存社員においても同じ時代を生きているため、平等にポータブルスキルが高まってもおかしくありませんよね。ただ、実態はそうではない。僕の感覚では新しい年次の新卒であればあるほど、ポータブルスキルのレベルが高くなっているように感じるのです。


理由を深ぼって考えていくと、一つの仮説に辿り着きました。それは、会社で求められる業務の大半が、事業推進や業界に特化した知識やスキル(ハードスキル)を活用したものになるため、創造性や課題解決力を活かす業務を与えられる機会が必然と少なくなり、結果としてポータブルスキルよりもハードスキルを伸ばしていくことに集中してしまっている、ということです。


会社としては、複雑な事象から未解決の課題を見つけたり、その課題を高度に解決するスキルを重要視していきたいはずなのですが、そうした業務を社員に求めないと、能力は開発されない。ではそれならば、能力自体を開発したり、身につけた能力を業務に活かせる機会を創出したりすることが必要なのでは、と考えるようになったんです。


田中:なるほど。確かにこうした課題は、日本中の多くの企業が直面していると思います。
社長の考え方には、実は一般的なフレームワークと共通点があった
田中:遠藤さんとともにプロジェクトを進める中で、まずは課題の明確化を図りました。具体的には、パーパスを社員の皆さんが体現する上で、現状のボトルネックになっている点は何かを考えていったんです。


紐解いていくうちに、山田社長はパーパスを体現されている第一人者である。つまり「山田社長と同じようなプロセスを用いて課題解決ができる社員を増やす」というゴールが明確化していきました。ただし、その前段階として、現在の会社や社員が抱えるギャップを把握し、個々の考え方や向き合い方を可視化する必要があるとも感じたんです。


遠藤:そのために、主軸の広告事業に関わっている役員に改めて現在の会社に対して「Good / More」を聞くエグゼクティブインタビューを行いました。


田中:はい。そこで、山田社長が社長に就任された理由がすごく理解できました。世の中の多くの経営者が事業の成長にフォーカスする中で山田社長は、広告業界やアドウェイズ社がこれから直面するであろう課題に対し、創造性を活かし、非連続的イノベーションを推進し続けていた。それは、パーパスや中期経営計画にもしっかりと反映されており、非常に一貫性のある意思を感じました。


可視化されたギャップや価値観を踏まえ、そこから議論は「ハード」な仕組みの話から「ソフト」な能力開発の話へと展開し、社員向けのワークショップを実施することを決め、具体的な「NS力開発プログラム」というアクションに結びついていきました。改めて考えると、多くの企業が抱える「暗黙知の形式知化」という課題に対し、投資するという判断をされたことは、他社に先駆けた取り組みだと感じますね。


遠藤:カリキュラムの具体的な内容は省略するのですが、田中さんとの議論の中で、社長の考え方には、実は一般的なフレームワークと共通点があることがわかってきました。それらを組み合わせて、社長の思考プロセスを他の社員にも共有できる形に落とし込めば、自然にパーパスも体現でき、その後のプロセスも考えられるようになる。つまり、社長の価値観や頭の動きをベースにした「NS力(なにこれ すげー力)」を社員に浸透させるという施策を考えたんです。


山田:僕の頭の中を探ってくれて、ありがとうございます(笑)。


社員からすると、まるで「魔法のように何かを生み出している」と思われているかもしれませんが、実際にはそうではないんですよね。むしろ、何の変哲もない考え方をしている。僕は、フレームワークを体系的に学んだ経験もないですし。複雑な事象を見たときに、デザインの考え方を用いてそれを分解し、結論を導き出すのが得意なだけで、単にその間のプロセスが見えづらいだけだと思います。


こうして自分の考え方を振り返る機会をもらい、フレームワークやプロセスに紐づけて理解、説明できるようになったことは、個人的にも大きな発見でした。


田中:議論を思い返してみると、山田社長の考え方には、クライアントや社会の課題を構造的に、網羅的に捉え、優先順位をつけていくなど、長期的な視点が非常に多く含まれていました。ただし、事業を推進していくためには、短期的な課題への対応も求められるため、そのバランスを取るのはなかなか難しい。だからこそ、パーパスがどのように短期的な目標や現場の力学と結びついているのかを整理し、物語やストーリーとして理解・共有する必要がありました。このNS力を浸透させることで、結果アドウェイズのパーパスを体現できる社員が増え、社員のマインドセットを変革し、現場の力学を変えられると私も嬉しいですね。
ワークショップを通して得られた学び
遠藤:研修の中でもワークショップ形式を選択した理由は、参加者が実務に応用できる具体的な成果を持ち帰れること、そして課題感を議論できる場を提供できると考えたからです。個人的に、これまで参加したワークショップや研修の中には、少し一方的な印象を受けるものもあったんですよね。


田中:確かに、研修という響きだけで、拒否反応が出てしまう方もたくさんいらっしゃると思います。


遠藤:でも今回はそうではなく、自分ごと化して、学んだことをすぐに実行できそうな機会を提供したいと考え、ワークショップの議題を「自部署で実際に直面している課題を解決する」に設定しました。


田中:課題解決を自分たちで行い、NS力の枠組みを共有し、その解決策をアクションプランとして持ち帰ってもらう。少しでも成果を実感できる形で持ち帰ることで、より実務に活かしてもらうことができると考えています。


遠藤:さらに普段、経営陣と話す機会が限られている社員にとっては、ワークショップの場が事業について深く話し合う機会になるなど、参加者同士の相互理解が深まるという副次的な効果もありました。


山田:ちなみに、アドウェイズの社員には「アドウェイズらしさとは何か」を真剣に考える人が多いのですが、構造的に整理してアウトプットする力が不足していることで、アイデアが漠然と留まってしまうという課題が顕在化していました。それを解消する機会としても、このワークショップは非常に有効だと思います。


田中:人間は本来、誰しも創造性を持っているんですよね。ただ、それを発揮するための「やっていいんだ」という合図や手段が不足していただけなのかもしれません。今回のワークショップが、そのスイッチになれば嬉しいです。


山田:そういえば、ワークショップ中に、無関心な様子の参加者はいませんでしたか?


田中:びっくりするほど、見当たらないんです。憶測の域を超えませんが、一般的な成功事例を紹介するだけでは「それは本当に役立つのか」と疑問を持たれる可能性があります。しかし、今回のワークショップは、自部署で実際に直面している課題を解決するというゴールを明確にして、カリキュラムを作成したため、積極的に参加してくれたのだと思います。


遠藤:確かに、研修やワークショップは、受講者に「意味がない」と思われた瞬間にその価値を失いますからね。だからこそ、場作りには特に意識を向けていました。議論が自然に深まり、参加者自身が有意義だと感じられる場を提供することができて良かったです。
今後の展望と副産物
山田:今後も「NS力開発プログラム」は全社員に向けて展開していきますが、現時点で既に、副次的な成果が出ているんですよ。


NS力が身に付いた社員を、事業戦略にどのように具体的に落とし込むかというフレームワークが徐々に整いつつあるんです。例えば、アドウェイズが「中長期的にこうあるべき」と示すものに対し、顧客や現場の状況が必ずしもそれに一致しない場合は、どのようにそのギャップを埋めるのかが課題となります。


今後はそうした場合、社員それぞれに顧客群を整理してもらい、ステップごとに課題を分解し、中長期的な目標に近づけるアプローチを模索していってもらう予定です。具体的には、この顧客にはこの方法、このステップを上がるためにはこれが必要、といった形で、解決策を段階的に策定する。さらに、顧客が潜在的に抱える課題や解決を望んでいる点を顕在化させ、実現するための施策を戦術として落とし込む。この積み重ねが、組織全体の成長を促進し、クライアントとの関係性を深める鍵になると考えています。


田中:どの企業も、短期的な課題を中長期的な成果に結びつけることには苦労していますからね。大変価値ある試みだと思います。


遠藤:余談ですが、今回のワークショップで提供するアプローチは事業推進だけでなく、日常生活にも応用できると考えています。課題に対して状況を読み取り、最適な行動につなげていく。生活でも課題は付き物ですからね。


田中:あくまで個人的な考えですが、近い将来、自分自身の物差しを持ち、創造力を働かせて人生を歩む力が求められる時代になっていくと思っています。そのため、こうしたNS力のようなスキルを得ることは、個人や組織の成長だけでなく、社会全体の活性化にもつながっていきそうです。


山田:僕が今回、ワークショップを通じて思ったのは、創造力があるにもかかわらず発揮できていなかった人がイメージより多かったという点です。こうした研修を通じて、社員の可能性を解放し、不要な制約やバイアスを取り除くことで、仕事をより楽しんで、事業を推進していってほしい。そして僕ら経営層も、新しい挑戦を社員に促し、事業も会社も成長し続けられる環境を目指していきたいです。


遠藤:そうですね。全社員で目指していきましょう。本日はどうもありがとうございました。
株式会社アドウェイズについて https://www.adways.net/
2001年設立。2006年に東証マザーズ、2020年に東証一部に上場。2022年に東証プライム市場に移行。パーパスに、“全世界に「なにこれ すげー こんなのはじめて」を届け、すべての人の可能性をひろげる「人儲け」を実現する。”を掲げ、アプリ・Webの包括的なマーケティングを支援する広告事業、テクノロジーを駆使し新しい広告表現や広告効果最大化を実現するアドプラットフォーム事業、ライフスタイル事業、DX事業など、領域をまたいだ事業を展開。日本を始め、アジアを中心とした海外への事業展開も行っている。

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