小田急不動産とmui Labによるプロジェクトチーム
2025年春より小田急不動産の分譲戸建住宅「LEAFIA」(リーフィア)にmui Labが提供する「muiボード」とスマートフォン専用アプリ「(仮称)mui Homeアプリ」を搭載し、二社共同で開発した「穏やかで温かい家族の時間を育むこと」を目的としたmuiボードの新機能を、 LEAFIAにお住まいのお客さまに先行リリースすることになりました。
今回、親子ともに多忙な共働き家族に向けて、家族がともに過ごす限られた時間の質を高め、思い出が蓄積される空間づくりを支援するため、「LEAFIAのスマートホーム」を提案した経緯や想いなどの開発ストーリーをご紹介します。
コミュニケーションデバイスとして導入する「muiボード」
このSTORYに登場する人
【プロフィール】
千田 香里(ちだかおり)
小田急不動産株式会社 住宅事業本部 開発企画部 戸建企画グループ サブリーダー
中学生と小学生の2児の母。小学生の子供は、学校からの帰宅後一人で留守番する機会も多い。用があって電話をかけても、電源が入っていなかったり、YouTubeに夢中で気が付かないこともしばしば。子供が無事に帰宅しているのかだけでも分かればな、と思っていたことが、スマートホームを考えるきっかけでした。
【プロフィール】
廣部 延安(ひろべのぶやす)
mui Lab株式会社 クリエイティブディレクター 共同創業者
インハウスデザイナーを経て、心地の良い暮らしを情報テクノロジーを用いて実現するために、自然素材である木を使ったmuiボードを発案する。仕事で帰りが遅くなることが多い中、子供から手書きのメッセージカードをしばしばもらうことがあり、このような体験をデジタルテクノロジーの良さを使って、同じ喜びの瞬間を日常に作っていければと日々考えている。
不動産会社が家族の豊かなコミュニケーションをサポートする理由とは?
◼️共働き子育て家族の多忙な日々
生産年齢人口の7割超が共働き世帯となり、多様な働き方が当たり前、男性の育児休暇取得への心理的ハードルも下がり近年は「イクメン」という言葉も聞かなくなりました。家族がチームとなって子育て・家事に臨むファミリーや子供だけで留守番する世帯が増えるなど、家族の形も変化しています。
毎日忙しく駆け足のように過ぎていく時間の中には、もしかすると見過ごすには惜しい「かけがえのない時間(とき)」があるかもしれません。
◼️インターネットデバイス普及による利便と弊害
近年のスマートフォン(スマホ)などの個人端末の爆発的な普及によって、いつでもどこでも誰とでもつながることができるようになり、私たちの暮らし方は大きく変わりました。スマホ無しの生活は考えられず、子育てをする上でも重宝するアイテムです。しかし、スマホをはじめとするデバイスに助けられる一方で、スマホ依存や家族が触れている情報が分からないなどの弊害もあると感じることはないでしょうか。
◼️便利さだけの追求への危機感、mui Labとの出会い
便利になることへの欲求は尽きませんが、果たして誰もがついてこられるのでしょうか。
さまざまな情報デバイスに囲まれて暮らす中で、私たち小田急不動産のLEAFIAは便利さだけを求め続けることに違和感を感じました。そのときに出会ったのが京都発のカーム・テクノロジースタートアップ mui Labです。
mui Labはカーム・テクノロジーという概念に情緒感あるUXを掛け合わせた唯一無二のグローバル企業です。普段は家具のように生活に溶け込み、必要な時に家族のコミュニケーションを心豊かに促し、ぬくもりを感じられるメッセージとしてデジタル情報が現れる「muiボード」こそがLEAFIAが必要としたスマートホームデバイスでした。
手書きメッセージなどの家族間のコミュニケーション機能
出先から家の状況を把握したり操作できるIoT機器コントロール機能
2社の共同開発がスタート「穏やかで温かい家族の時間を育むこと」
新機能の共同開発は、共働き親子5組に対するインタビューから始まりました。忙しい共働き家族の日常を把握して、「どんな時にほっとするのか」、「いつ何に困っているのか」、「なぜその現象が起きているのか」など、起床から就寝までの時間軸に沿って語ってもらいました。
◼️明らかにされた共働き家族のリアル
【離れていても伝えたい思い】
「離れている時間が長いので、子供が寂しい思いをしていないか心配もある」「パパは平日の夜ほとんど子供と顔を合わせられない」「仕事中も、無事に習い事に行けたかな?と気になっている」「夫婦で一緒に会話する時間が取れない、事務連絡などが多く”ありがとう””ごめんね”が言えなくなっている」
インタビューから、共働き家族の一日は、慌ただしく始まり、そして終わることが分かりました。それぞれが「タスク」をこなし、あっという間に週末となるようです。また、子どもだけでなくパートナーとの事務連絡以外のコミュニケーションも必要だと感じているようです。
【家での時間は家事・育児に追われる、温度差のある関わり方】
「一番大変なのは、仕事から帰ってきて寝るまでの間」「パートナーに洗濯物を畳んでほしいから見えるようにリビングの見えるところに置いておく、それでもやっていない時は自分でやる」「子供が夕食の手伝いをしてくれるようになった」
平日の夜は、母親が中心に家事・育児をこなし、一人時間はほぼない。パートナーの家事・育児参加は、平日はサポート側、時間が取れる休日に主に行う、など夫婦間ではまだ温度差がありそうです。
【子どもの成長に伴い減っていく家族時間への思い】
「子どもが大きくなると、家族間での予定が合わせづらい。」「1週間に8日目があるとすれば、その日は家族でゆっくり過ごしたい。」
休日も子供ごとの習い事に夫婦手分けして付き添う、塾に通い始めると夕食も家族ばらばら、など家族みなが揃う機会が少ないことに不満を抱えているようです。仕方ないと割り切っているものの、子どもが本当はどのように思っているのか心配している家族もいます。
LEAFIAが約束する「Fammunity」「不動産会社の私たちの使命」
LEAFIAは住まいづくりと街づくりに特別な「4つの約束」を込めています。そのうちのひとつ『Fammunity 家族や地域のふれあいが生まれる、「ゆるやかなつながり」を創造すること』を掲げていますが、共働き家族のリアルな課題に対して「私たちに何ができるか」を次の3点を大切にして検討を開始しました。
直接または間接的に家族の”想い”や”つながり”を感じられること家族間コミュニケーションのきっかけを生むこと小さな子どもからお年寄りまで、直感的に使うことができること
不動産会社の私たちは、家事の時短につながる間取りなどの提案はできても、家族のコミュニケーション時間を増やすことは困難です。それならば、住まいに付加するソリューションで、慌ただしい日常を少しでも”ほっと”する瞬間に変換できないか?という思いを胸に開発を進めました。
リサーチ結果を基に社内のワーキングチームでアイディエーションを実施
家族のコミュニケーションの手助けと見守り、共同開発の新機能とは?
一般的なスマートホームでは、連携できるデバイスの種類が次々に増えています。しかしながら、家族構成やライフスタイルによってニーズが移り変わるものであり、そのときどきのニーズに合わせ、スマートホームにはサービスや機能をアップデートできる柔軟さも必要だと考えます。
そうしたなか、共同開発したLEAFIAが届けるスマートホームは「家族のコミュニケーションの手助けと見守り」を軸とし、ご入居後すぐに利用ができるように物件の引き渡し時に一部のIoT連携機器も実装します※1。例えば、遠隔にいても必要なタイミングで家にいる家族に言葉をかける置手紙のようなメッセージ機能や、リビングの人感センサーで家族の在宅状況を確認できたり、温湿度を管理する熱中症アラート機能でエアコンを遠隔操作できるようにすることで、子供だけでの留守番の不安感を軽くする見守りが可能になります。
また、muiボードはスマートホーム世界共通規格Matter※2を採用しています。スマートホームシステムに簡単に接続でき、照明やスピーカーなどmui ボードに接続したデバイスの情報表示や操作が可能です。接続先を限定しないプラットフォームを通じて、お客さま自身で必要な機能を選択したうえで拡張できるようになっています。
なお、新機能を搭載した住まいは、2025年春に発売を開始する予定です。
※1 一部、対象外の物件もございます
※2 アメリカのConnectivity Standards Alliance(CSA)によるスマートホーム機器間の相互利用を実現する通信統一規格。Apple、Google、Amazonの3社がデバイスの相互接続性に関して協調戦略に転換したことで誕生。異なるメーカーのスマート家電が互換性をもち、安全で信頼できるものにするための規格。さらに、Matterに対応していればインターネットに接続できないときでも、スマート家電を利用することができるようになります。
プロジェクトに対する思いを開発者にお聞きしました。
―プロジェクト立ち上げ時の経緯や背景を教えてください
千田:「LEAFIAでは、お客さまの声に耳を傾け、真に求めている「次世代の暮らし・住まい」の価値を、間取りや設備等で提案する商品開発を続けています。そのうちの「掲示ウォール」もアナログな方法でありながら家族のコミュニケーションに手助けになっていると入居後のお客さまから好評いただいているアイデアです。muiボードを知った時、家族間の情報共有もデジタルになりつつある中、リビングにある「家族共有の端末で情報を表示する」ことが意外と求められているのでは?と感じたことがきっかけでした。」
LEAFIAのリビングにある掲示ウォール
廣部氏:「近頃のライフスタイルでは、家族全員が同じ場所に集まる時間が少なくなっています。そのような中で、リビングに家族の情報が自然と集まる場所を設けることは、家族のつながりを深める上で大きな意義があると考えています。しかし、現状は、同じ空間にいても、PCやスマートフォンを通じて遠くにいる人からの通知に気を取られて、目の前にいる家族とのコミュニケーションがおろそかになってしまうことが多いと感じています。このような状況に対して、家族同士の絆を深めることができないかなと思い、私たちのmuiボードを使った提案を行いました。」
千田:「テクノロジーの良い点は、遠隔でも確認・操作ができること、自宅にいる時間が少ない共働きファミリーが不在中でも家の様子・在宅中の家族の様子を知れるのはテクノロジーだからこそのメリットと感じ、リアル・アナログのコミュニケーションに勝るものは無いけれど、その手助けになるテクノロジーを携えた住まいが寄り添えたらと、mui Lab様のカーム・テクノロジーの思想に共感し、業務提携に至りました。」
廣部氏:「おっしゃる通り、デジタルとアナログの良さが共存するような家族のコミュニケーションが大切だと思っています。muiボードは出かけた家族とコミュニケーションをとれる機能と同じくらい、プロダクトの周りに家族の絵や写真などを飾れる余白を大切にしています。LEAFIAの「掲示ボード」とmuiボードを組み合わせることで、家族が同じ場所にいるときはもちろん、離れていても情報を共有し、互いの気配を感じられる体験を提供できると考えています。」
―開発にあたり、苦労などはありましたか?
千田:「便利だからと、あれもこれも付加したくなってしまうけれど、muiボード・(仮称)mui Homeアプリでコミュニケーションを完結することがゴールではなく、あくまでも「促す」こと。例えば「ありがとう」「ごめんね」のスタンプで想いを伝えられると便利だなという発想についつい陥りがちでしたが、そこはリアルに会えた時に声を掛けたり、手書きメッセージを送ったりというコミュニケーションに繋がれば十分。よくmui Labさんに軌道修正していただきました。」
廣部氏: 「muiボードの新しい機能の開発において、生活の中で使い続けられるものであること追求しました。その中で重要視したのは、家族同士が気持ちを伝え合うための「必要最小限」の機能を載せるということです。テクノロジーが過度に介入しすぎると、人とのコミュニケーションの前に、機器の設定や確認に多くの時間を費やすことになってしまいます。あくまで人と人とのつながりが活発になるように、情報テクノロジーがサポートできることを意識しました。muiボードと(仮称)mui Homeアプリは、家族が離れていても情報を共有し、気持ちを伝え合うためのきっかけを作りますが、最終的には顔を合わせたリアルなコミュニケーションを促進するための道具であるという考えを大切にしています。」
―両社が目指す世界を教えてください
千田:「共働きファミリーが自宅で過ごす時間が減っている中でも、家族が帰る安息の地である 「すまい」を提供する小田急不動産として、LEAFIA のスマートホーム化を推進し、お客さまのウェルビーイングを実現したいと考えています。 mui ボードは OTA(Over The Air)機能を活用し、入居後も常にアップデートが可能です。常に最新の機能を維持することで、長期に渡って安全かつ安定的なスマートホーム体験を実現できるので、時を重ねても安心で、上質なやすらぎまでも感じられる暮らしに、LEAFIAが寄り添えたらと思っています。」
廣部氏: 「私たちが目指すことは、情報テクノロジーが家族の絆を深め、より温かな暮らしを支える環境を提供することです。一緒に暮らす人たちがお互いに対して思いやる気持ちを持てることが大切だと思っています。そのために、暮らしに自然と溶け込み、生活に欠かせないテクノロジーを目指しています。muiボードは、階段の手すりや窓のように、どの世代の人でも安心して使える存在を目指して設計されています。日々生活していく中で交わされるたわいもないメッセージが蓄積され、家族にとって大切な思い出となることを、私たちのテクノロジーによって提供できれば良いなと思っています。」
おわりに
世の中には多くのコミュニケーションデバイスが存在します。mui Labと開発中の新機能は、どのデバイスよりも優れた便利な機能だとは思いません。
私たちが目指すのは、何も特別ではない、いつもの日常を「かけがえのない時間」に感じてもらうことです。そのために、テクノロジーの力を借りて、LEAFIAに住み重ねた瞬間を少しでも豊かな気持ちとなる事を目指し、今後もより良い住まいを開発してまいります。