アイシンは、従業員一人ひとりが価値創造の源泉と位置付けており、「働く仲間」こそが強みであると考えています。働きがいと人生の幸せを感じながら仕事に取り組み、社会のニーズや変化を先読みした新たな価値を創出できる人材として活躍してもらうことにより、事業戦略の実現と、その先にある経営理念の実現につながると考えています。
2030年にめざす姿は、「グループ・グローバル連結でチャレンジ推進」「どこよりも人が育ち、全員が活躍」です。それを達成するため、「風通しの良い職場風土づくり」を基盤として、以下の方向性を定めています。
① プロ人材の活躍・成長
めざす人材像を「全体最適で持ち場・立場でなすべきことを自発的に考え行動する人」と定義し、これを「プロ人材」と呼んでいます。従業員一人ひとりが、自分自身の活躍する姿を思い描き、着実にプロ人材となれるよう、個々の能力を引き出し、伸ばす人事制度の改定や、重点領域へのリソーセスシフト、リスキルを進めています。
② チャレンジの促進
「チャレンジする人・職場づくり」をキーワードに、どこよりも人が育つ会社をめざし、育成体系の強化を推進しています。また、定期的に行っている社員意識調査において、従業員エンゲージメント設問への肯定回答率75%以上を目標とし、企業風土そのものの変革とともに個々のキャリア支援を進めています。
③ グループ総合力の強化
多様な人材の価値観を最大限に活かすことで、グループの総合力強化をめざしています。組織や人材配置の最適化、グループ・グローバルでの意図的・計画的なリーダー育成のほか、ダイバーシティ&インクルージョン推進では、2030年までに女性管理職比率6%を目標としています。女性・シニア従業員など多様な人材の活躍推進により、性別や年齢を問わず「全員活躍」できる環境づくりを進めています。
プロ人材の育成と自律的なキャリア形成の促進
アイシンでは、従業員一人ひとりがプロ人材のイメージを思い描き、キャリアの舵取りを行えるような「キャリア自律」をめざしています。毎年実施しているキャリア面談では、中長期的な視点でのキャリア&ライフプランを作成し上司と面談することで、キャリア目標についての認識合わせや、計画的なキャリア形成を促しています。それに合わせて、部下の能力を適切に伸ばす管理職の育成や、キャリアについて学ぶことのできる機会も拡充しています。
■部下の個を活かしプロ人材に導く管理職の育成
2023年に始めたのが、管理職の必須研修である「個を活かすコミュニケーション研修」です。それぞれの持ち場・立場でメンバーが持つ多様な個の力を活かし、組織の成果を最大化するためには、上司の関わり方が重要になってきます。「個を活かすコミュニケーション研修」は、社外の講師によるグループディスカッションをメインとした研修で、周囲の共感や協力を得るリーダーシップを学び、個を活かし育てるコミュニケーションを習得することをめざしています。
■キャリアについて学び、相談できる機会の充実
2022年から導入した「年代別キャリアデザイン研修」は、それぞれの年代に合ったキャリア目標の立て方を学ぶ研修で、2023年度は400名以上の従業員が受講しました。年代ごとで異なる経験や立場によるキャリアの悩みを解消し、能力を発揮できるよう、グループディスカッションや課題を通して学ぶことができます。
また、社外のキャリア支援専門家にアドバイスを受けることのできる、「オンラインキャリア相談窓口」も設置しています。自分自身のキャリアの描き方だけでなく、管理職が部下のキャリア実現のサポートに関して相談することもあり、多くの従業員が制度を利用しています。
多様な人材の能力を活かし、チャレンジを引き出す
アイシングループの全従業員数は約11万人に及び、さまざまな年齢、性別、環境の人材が集まっています。その価値観を最大限に活かすため、多様な人材の能力を引き出し、チャレンジを促す職場環境づくりを行っています。
■年齢や性別を問わず全員が活躍できる環境づくり
アイシングループでは、現在2万人を超える女性従業員が活躍しており、今後も増加が見込まれています。女性が働く上で抱えるさまざまな課題や悩みを軽減し、キャリア実現に向けてチャレンジを続けてもらうための取り組みが、「キャリアメンター制度」です。
キャリアメンターと面談する様子
「キャリアメンター制度」とは、自身のキャリアや、仕事と家庭の両立などの悩みを先輩従業員に相談できる制度で、管理職以上の女性従業員がメンターとして登録しています。部署間異動や海外赴任経験などのキャリア相談から、子育ての悩みや今感じていることを気軽に相談する場として活用でき、従業員同士のネットワーク構築にも役立っています。
また、今後シニア従業員の割合も増加することが見込まれており、これまでの経験を活かしたベテラン層の活躍が期待されています。定年後もチャレンジし続けてもらうために、今年度の再雇用制度改定では、年齢を問わず活躍・能力発揮し続ける従業員が公平に評価され、評価に基づいた処遇を受けることのできる仕組みへと、制度を見直しました。
「誰でも・いつからでも・いつまでも」チャレンジし続けられる会社風土づくりを進め、会社としての総合力強化をめざします。
■生産現場がめざす全員活躍、チャレンジを続けられる環境づくりを
2021年度から本格的に生産領域のダイバーシティ&インクルージョンの活動を開始し、2023年度には、全社的に生産領域のダイバーシティ&インクルージョンを促進する組織を設立。2024年度には、アイシンの全17工場にダイバーシティ&インクルージョン担当者を配置しました。定期的に意見交換会を設けるほか、各工場で取り組んだ好事例の共有会の実施など、各工場がアイデアを出し合い全員が活躍できる環境づくりに向けた取り組みを加速しています。
生産領域のダイバーシティ&インクルージョン推進部署と工場の担当者で相談する様子
子育て世代の女性技能職はもちろんのこと、育児参加する男性技能職の増加や、介護事由により柔軟な働き方を希望する場合など、短時間勤務制度の活用がさらに活発になることが見込まれています。そこでアイシンでは、夜勤やフルタイム勤務が難しい場合でもキャリアを継続しチャレンジできるよう生産ラインの工夫を行っています。これまで短時間勤務者は、工場内の事務的な作業を担うことが多く、技能職としてのキャリアが閉ざされてしまうことも少なくありませんでした。そこで、短時間勤務者とフルタイム勤務者を柔軟に組み合わせ、その時間帯に出勤できる人数に応じて生産のサイクルタイムを変動させることで、短時間勤務者が活躍できる生産ラインを増やしています。産休・育休前に培ってきた技能や知識を復帰後もしっかりと活かすことができ、継続的なスキルアップやモチベーション向上につながっています。
55歳以上のシニアと呼ばれる層についても、今後割合が大きくなることが予想され、シニア従業員が力を発揮できる環境づくりは急務となっています。
そんな中で始めたのが、一定年齢以上の生産現場で働く従業員に体力測定を実施し、自身の体力を把握してもらう取り組みです。現在、試験的に一部の工場で取り組みを開始し、2025年度以降では40歳以上を対象に全工場で実施することをめざしています。体力測定の結果から、体力や体の悩みに適したストレッチなどのトレーニング方法をアドバイスすることで、疲労回復や体力の低下を緩やかにする狙いがあります。従来から推進している生産ラインの工程改善と合わせて、従業員自らが体を見直し体力の向上をしてもらうことで、生き生きと働き続けられる自信にも繋がり、全員が活躍できる生産現場を実現していきます。
働く仲間が価値創造の源泉
時代の変化に合わせて従業員が生き生きと働けるよう変えていくことは、会社の人的資本戦略を推進する上で必要不可欠です。アイシンでは、働きやすさの追求や家庭との両立支援を充実させながら、面談や研修などのキャリア支援により一人ひとりが自発的にキャリアを考え、プロ人材として一歩踏み出せるような環境づくりを行っています。これからも、アイシンがめざす人材マネジメントを通じて働く仲間へ働きがいと人生の幸せを提供し、新たな価値を創出することによって、事業戦略とその先にある経営理念を実現していきます。