かつての路線バスの運転士は鉄拳制裁アリの体育会系社会だった! いまや穏やかな業界になるも「なり手」不足に悩むワケ

2024.09.20 06:20
この記事をまとめると
■昔のバス運転手はベテラン運転士からの徹底したスパルタ教育で腕を磨いていた
■現在は「生活のため」と割り切ってバス運転士となる人が目立ってきている
■労働環境がいいとはいえずバス運転士を目指す人が減った
昔と今でバス運転士の意識が変わった
  大型二種免許を取得し、大きなバスを颯爽と運転するバス運転士のその姿は「職人」といっていいものであった。職場環境もまさに「職人気質」そのもの。入りたての新人運転士はベテラン運転士からの徹底したスパルタ教育で腕を磨いていた。「さすがに冗談だと信じたいのですが、下手な運転をすると指導教官役のベテラン運転士からスパナなどによる『鉄拳制裁』が当たり前だったとも聞いております」とは事情通。
  同じ旅客輸送業界であってもタクシー運転士ではクルマにそれほど興味もなく、割り切って乗務している運転士が目立つなか、バス運転士には「バスが大好き」という運転士が大半であった。一子相伝とまではいわないが、親子で同じバス事業者で運転士として働くといったことは、いまでもそんなに珍しくないようである。
  時代が昭和から平成、そして令和となるとそんなバス運転士の世界も変化を見せるようになる。いまどきのバスといえば、最新型では路線バスでもエアコンやパワステ(パワーステアリング)は標準装備が当たり前、そして2ペダル自動変速機も当たり前となり、イージードライブが可能だ。もちろん「ダブルクラッチ」といった職人的な運転技能は必要とされなくなってきている。
  そんな令和のバス業界では新人運転士の教育もスパルタ式ではなくなっている。大手事業者のなかには、さまざまな計測機器を搭載したり、あと付け安全デバイスを装着し、客観的なデータに基づいた運転士教育というものを行っている。そして、そのなかで運転士の意識も大きく変わり、いまでもバス好きが高じてという理由で運転士を目指す人もいるが、タクシー同様に「生活のため」と割り切って運転士となる人が目立ってきている。
  仕事内容に対する給与水準はけっして高いものではないが、タクシー運転士も含めて正社員採用されれば社会保険など待遇面は手厚くなっており、中高年となっても正社員登用されやすいという理由が大きいようである。
バス運転士は働き手がとにかく少ない
  老舗バス事業者ほど、「バス愛」の強い人が働いているケースが目立つ傾向がある。そして、新規事業参入した高速路線バス専門事業者などはその逆で、経営陣も運転士もビジネスと割り切っている人が目立っている(もちろん全員がそうというわけではない)。老舗バス会社はその地域のまさに「顔」、長年地域の人の移動手段としてバスを運行し、公共交通機関としての社会貢献意識がかなり高い。そして、そこで運転士などで働くことはある意味「名誉」でもあるのだ。
  ここ30年、バス運転士の給与はその仕事内容に比べていわゆる「コスパ(コストパフォーマンス)の悪いもの」となってしまった。その理由にはさまざまなものがあるが、「好きな仕事だから」という意識があまりに高かったからこそ、我慢してしまったという部分も否定できないだろう。
  かつて貸切観光バスも用意していた事業者では、新人運転士として入社し、一般路線バスで運転士としての技量を高め、それが会社に認められ貸切バス運転手になるのがバス運転士のステップであったが、いまどきでは必ずしもそこをめざす運転士ばかりではないとのことである。
「聞いた話では、社員旅行を手配するときには旅行代理店の見積りには、バスガイドやバス運転士への「心づけ(チップ)」が含まれると聞いたことがあります。市内観光バスでは、利用した個々のお客からチップをもらうこともあるそうです。だからというわけではありませんが、それも貸切バス運転士の魅力のひとつともいっていいでしょう」(事情通)
  そんなバス運転士だが、ご存じのとおり働き手不足で困っている。働きたいと思う人が少ないこともあるのだろうが、事故の危険などを理由に、家族など周囲の人の反対も大きいと聞く。そのため、事業者のなかには保有車両に後付け安全装置の装着を積極的に行うなど、まず働く環境の整備を進める動きが目立ってきている。
  とくに一般路線バスでは賛否はあるものの、自動ブレーキすら標準装着されていない状態で、複雑な道路環境のなかでバスを運行している。運転士の多くがバス好きであり、そのような人の運転技術などの向上心や仕事に従事する社会的使命感などに、ある意味頼り切っていた部分もある運行事業者や我々利用者。しかしいま、サラリーマン的に仕事として割り切って運転士となる人が多くなってきていることが、バス運転士の労働環境改善を加速させている。そんな傾向は筆者の目にも映っている。

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