横3人乗りのV16エンジンって90年前の怪物を蘇らせた! グッドウッドで爆走した「アウトウニオン52」に世界が驚愕

2024.09.05 17:30
この記事をまとめると
■アウトウニオン・タイプ52がグッドウッド・フェスティバルに登場
■タイプ52はアウトウニオンによって設計されるもプロトタイプすら作られなかった
■現実となったタイプ52は横3人乗りのファットなボディに200馬力のV16を搭載する
90年前のスポーツカーがグッドウッドをヒルクライム
  今年のグッドウッド・フェスティバルは、このアウトウニオン・タイプ52がヒルクライムを走るという話題でもちきりだったそうです。なにが凄いって、このタイプ52は、アウディのご先祖様となるアウトウニオンが90年も前に設計したスポーツカー。そんな大昔にもかかわらず、搭載するエンジンは4.4リッターのV16! しかもミッドシップで最高速は200km/hというハイスペックなのです。
「タイプ52なんて聞いたことない」というのもごもっともで、当時は設計だけに終わってしまい、この世にあるのはグッドウッドのために再現されたこの1台のみ。そんな化け物マシンですから、グッドウッドを、そして世界のクルマ好きを驚かせたのも大いに納得です。
  そもそも、アウトウニオンといえば1932年にアウディ、ホルヒ、DKW、ヴァンダラーの4社が統合された、ドイツのドリームチームかのようなメーカー。メルセデス・ベンツとともにヒトラーの後ろ盾を得て、それぞれ銀色のマシン〈シルバーアロー〉でグランプリレースを席巻したことはご存じのとおり。
  また、アウトウニオンのグランプリマシンはタイプA/B/Cとあったのですが、いずれもフェルディナンド・ポルシェ博士による設計。搭載エンジンは排気量4.4〜6.0リッターのスーパーチャージャー付きV16エンジンで、最高出力はマックス200馬力だったといいますから、とても90年前のクルマとは思えません。
  そして、グッドウッドを走ったタイプ52は、前述のタイプAをベースにアレンジされたのですが、当初ミッレ・ミリアやスパ・フランコルシャンなどスポーツカーレースへの参戦が意図されていたとのこと。それゆえ、クローズドボディ、3人乗り、スペアタイヤ搭載スペースなど、グランプリマシンとはまったく違ったトリミングとなった模様。
  同時に、エンジンチューンも圧縮を抑えてレギュラーガソリンに対応させたり、スーパーチャージャーのギヤ比を変更して中高回転域にパワーゾーンを設定するなど、公道走行すら見据えられています。もしかすると、ファクトリーレースだけでなく、顧客への販売も視野に入っていた可能性もありますね。
  そんなチューニングの結果、現代に蘇ったタイプ52は520馬力/4500rpmというパフォーマンスとなり、わりと低回転からパワーを発揮する乗りやすそうなマシンであることがわかります。
数枚の図面とメモを頼りに再現されたタイプ52
「シュネル・シュポルト(速いスポーツカーの意)」と呼ばれたタイプ52ですが、スポーツカーレースへの参戦どころか、プロトタイプすら作られませんでした。1935年にプロジェクトはゴミ箱行きになったようですが、これは各リソースをF1(グランプリ)に注ぐことが上から命じられたという説もあります。
  いずれにしろ、アウディやポルシェに残されていたタイプ52の資料は、数枚の図面とメモ書き程度だったとか。
  この少ない資料から「再現してよ」と無茶ぶりされたのがイギリスのレストアファクトリー「クロスウェイト&ガードナー」。彼らはブガッティT51の完全レストアやノートンマンクスのデスモドロミックをゼロから再現するなど、世界に名の知れた技術集団。むろん、すべてのコンポーネントはカスタムメイドで、ほとんどが手作り。
  横に3人乗りとしたからか、それまでのシルバーアローよりもいくらかファットなボディは、残されていた簡単なスケッチをもとに、アルミ板金職人がイメージを最大限に膨らませたとか。
  もっとも、エンジン、トランスミッション、そしてギヤボックスはアウディ自身がリプロダクトしたグランプリカーからの流用で、足まわりはクロスウェイト&ガードナーの提案により、タイプ22のような横方向のリーフスプリングとフリクションダンパーの組み合わせの代わりに、縦方向のトーションスプリングサスペンションと油圧ダンパーを組み合わせたといいます。サーキットよりも、公道レースを想定した設計といえるでしょう。
  全長は軽く5mを越えていますが、車両の総重量は1750kg、無負荷重量(乗員、ガソリン、スペアタイヤなし)が1300kgと、アルミボディとはいえ驚くほどの軽量です。
  なお、グッドウッドでステアリングを握ったハンス・ヨアヒム・シュトゥックはレジェンドとも評されるドイツのレーシングドライバーですが、彼の父親、ハンス・シュトゥックもまた現役時代にシルバーアローを駆って何度も優勝をした伝説的ドライバー。親子二世代にわたって、化け物のようなマシンを操ってきたわけで、グッドウッドの観客はそんな感慨もあわせてタイプ52の疾走に見入っていたのではないでしょうか。

あわせて読みたい

1000馬力オーバーの純エンジン量産車も存在! じつは1リッターで1000馬力のエンジンも作れるってマジ!?
WEB CARTOP
まさにポルシェの”ファーストレディ”! ルイーゼ・ピエヒが愛した「911 ターボ」
CARSMEET WEB
あなたの動画を自然に翻訳!「AI動画翻訳くん」とは?
antenna
連載:アナログ時代のクルマたち|Vol.37 ジャガーDタイプ
octane.jp
実用性にはほど遠いけどロマンの塊! バケモノみたいな「16気筒エンジン」を積んだクルマはやっぱり見た目も強烈だった
WEB CARTOP
ロキソニンにまつわる素朴な疑問を薬の作り手が解決! 小さな錠剤に込められた想いとは
antenna
連載:アナログ時代のクルマたち|Vol.35 クーパーマセラティT61M モナコ
octane.jp
V型16気筒の怪物エンジンを積んだBMW! 「ゴールドフィッシュ」なんてあだ名が付けられた7シリーズの正体とは
WEB CARTOP
【BAREFOOT DREAMS】スタイリスト金子綾氏とのコラボレーションボックス発売
PR TIMES Topics
当代随一のマシンデザイナー「エイドリアン・ニューウェイ」の本気! 12億円の2人乗りF1のようなRB17の全容
WEB CARTOP
ニッチな存在?でもその魅力は無限大!V10エンジンを搭載した名車たち
octane.jp
mitera organicsシリーズ第三弾フェミニンオイル「mitera organics feminine oil」誕生
PR TIMES Topics
見るからにバカッ速! グッドウッドを駆け抜けた漆黒の「スバル WRX」の正体はメーカー自ら本気で作った怪物だった
WEB CARTOP
2000馬力超えのバンをメーカーが作るとか正気か! パイクスピークで1位に輝くフォードの「魔改造バン」がガチすぎて笑う
WEB CARTOP
立体で並べて楽しむことができる「小さな森のクッキー缶」発売
PR TIMES Topics
コブラと同じ手法でアメリカンV8をぶち込んだ英国車! なのにコブラに比べて激マイナーな「サンビーム・タイガー」ってナニモノ?
WEB CARTOP
世界最速の「芝刈り機」を作ったホンダが速さを求めて新型まで作った! 最高時速240km超えなのにガチで芝も刈れるってもはやおバカを超えて尊敬しかない!!
WEB CARTOP
約36年ぶりの新商品!歳時菓子「おはぎ新嘗(にいなめ)」新発売
PR TIMES Topics
あぁ、我が魅惑のターボ! ポルシェのエキスパートたちが語る、”自分だけの物語”
CARSMEET WEB
FFなんてロータスじゃない! 最後は韓国車になったんでしょ? 乗ればめちゃくちゃロータスっぷりを味わえるのに正当評価が得られなかった「2代目エラン」の悲劇
WEB CARTOP
山形県初のプリン専門店「山形プリン」開業6周年を記念した特別ギフトセット数量限定販売
PR TIMES Topics