走行中の車内は灼熱! うるさすぎて会話するのにレシーバー! ジャガーXJR-15は公道を走れるようにしただけのレーシングカーだった

2024.07.27 17:30
この記事をまとめると
■グループCで常勝を誇ったXJR-9をベースとしたオンロードモデルがジャガーXJR-15だ
■6リッターV12をミッドシップに搭載し最高出力は450馬力で0-100km/h加速は3.2秒
■TWRの手によってわずか53台が製作された
レーシングカーXJR-9のロードバージョンがXJR-15
  ジャガーのブランドを掲げたスーパースポーツのなかでも特別な存在といえるXJR-15とXJ220は、いずれも1980年代の中盤から終盤に前後してその開発プログラムが立ち上がり、1990年代の初頭に少量生産が行われたモデルだ。
  今回は1990年から1992年にかけて50台の限定生産が計画され、実際には53台が販売された、より硬派なXJR-15にスポットをあて、そのスーパースポーツとしての魅力を探ってみることにする。
  XJR-15がより硬派なスーパースポーツとして多くのファンから認識されているのは、そのベースがにあることが第一の理由だろう。1988年のル・マン24時間レースを制したことを筆頭に、1989年にはWSPC(世界スポーツプロトタイプカー選手権)のメイクスタイトルを獲得する原動力となったXJR-9。
  実際にその開発を担当していたのはTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)で、それをベースとしたオンロードモデルを限定生産しようというプロジェクトは1988年にスタート。1990年には早くもそのランニングプロトタイプが完成した。このプロジェクトが驚くべき速さで進んだ理由は、すでに触れたXJR-9というベース車が存在したからにほかならない。
  そして、トム・ウォーキンショー自身、1988年のバーミンガムショーにおいて、ジャガーが自ら発表したXJ220のプロトタイプに刺激され、そこからXJR-9をベースとするロードカーというアイディア(当初それはR-9Rと呼ばれていた)を得たこともまた事実であった。
  当時、グループCカーの世界では圧倒的な性能を誇っていたXJR-9。それをベースにしたオンロードモデルを販売すれば、それは確実に人気モデルとなるだろう。このころは世界の経済状況も好景気の最中にあり、スーパースポーツはそのなかでもお金を消費するには何よりの投資対象だった。
ミッドに搭載された6リッターV12は450馬力を発生
  1990年末にはXJR-15のプロトタイプが出現するようになるのに前後して、TWRはその生産台数を50台と発表。XJR-15のプロジェクトは計画どおり始動した。
  XJR-15に使用されたシャシーは、XJR-9と完全に共通ともいえるカーボンとケブラーのコンポジット素材からなるモノコックだ。現在では多くのスーパーカーがそれを用いるが、当時このタイプのモノコックをもつモデルは希少で、それは時系列ではマクラーレンF1よりも早い。
  搭載エンジンもXJR-9用をベースとした6リッターのV型12気筒SOHC。最高出力は450馬力に抑えられていたが、それでも車重が1050kgと軽量であったため、0-100km/h加速のデータはわずかに3.2秒。のちに誕生するXJ220の同データが4秒であったことを考えると、それは比較にならないほどに早い数字ということになる。
  ジャガーとしては搭載エンジンを、V型12気筒ではなく507馬力を発揮する3.5リッターのV型6気筒ツインターボエンジンを搭載することを選択したXJ220のほうを、ジャガーのフラッグシップスポーツとして位置づけたかった思惑があったのだが、運動性能のアドバンテージがスーパースポーツの世界においては絶対的なものであるのはいうまでもないところ。
  結局XJR-15はXJ220の販売に、少なからずマイナスの影響を与えるに至ってしまったのだ。
  オンロードを走行するための保安部品やライセンスプレートを取り付けただけのグループCカーとも表現することができるXJR-15は、何もかもがスパルタンなスーパースポーツだった。走行中にはキャビンは水温の上昇から灼熱の世界へと変わり、パッセンジャーとの会話を行うには標準装備されるヘッドフォンタイプのレシーバーが必要不可欠だ。
  サスペンションは独立懸架で、全モデルがビルシュタインの非調整式ダンパーを採用。さらにエンジンはリヤフレームの応力メンバーとなるから、走行中にドライバーが感じる乗り心地は、まさにレーシングカーそのものといった印象だ。
  わずか53台がTWRスペシャルビークル・オペレーションズの手によって製作されたXJR-15。それは現在でもマニアの目を刺激して止まない。

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