この記事をまとめると
■新型ホンダ・フリードはエアーとクロスターの2本立てで登場
■ミニバンの最重要項目であるパッケージングは先代モデルを踏襲
■電子パーキングブレーキの採用や後席の快適性などが大幅に進化を果たしている
ベストセラーコンパクトミニバンの新型フリードが発進
いま、大注目の新型車が、「ちょうどいい」をキャッチフレーズでデビューしたホンダのコンパクトミニバン、その3代目となるフリードだ。
新型は先代のプラットフォームやパッケージングを踏襲しつつ、シンプルでクリーンなスタイルのエアーと、先代以上にクロスオーバー色を強めたクロスターの2モデルが揃い、3列シートの2列目キャプテンシート6人乗りと2列目ベンチシートの7人乗りのほか、先代ではフリード+と呼ばれていた大空間コンパクトワゴンとも言える2列シート+大容量ラゲッジルームを備えた仕様をクロスターのみに用意。
グレードはエアーが、基準車のエアーと上級タイプのエアーEXがe:HEVとガソリン車で用意され、クロスターはe:HEVとガソリン車のモノグレードとなる。なお、FFの2列目ベンチシートの7人乗りはエアーのe:HEVのみ用意されている。駆動方式は最低地上高135mmのFF、および最低地上高150mmの4WDの選択が可能だ。
ボディサイズはエアーが全長4310×全幅1695×全高1755~1780mm(4WD)、ホイールベース2740mm。全長と全高は先代比+45mmとなるものの、5ナンバーサイズを維持。一方、クロスターは全長4310×全幅1720×全高1755~1780mm(4WD)、ホイールベース2740mmとなり、フリード初の3ナンバーとなる。もっとも、全幅1720mmは無塗装の樹脂製ホイールアーチプロテクターの出っ張り分であり、ボディそのもの、ミラー・トウ・ミラー幅はエアーの5ナンバーサイズと変わるところはない(車両感覚、運転のしやすさ含む)。
パワートレインは1.5リッターエンジンを基本に、ハイブリッドとガソリン車が揃うのだが、売れ筋のハイブリッド(85%の予約比率)は先代の1モーターSPORT HYBRID i-DCD(2ペダルMT)から、2モーターハイブリッドシステム、1.5リッター直4エンジン、106馬力、13.0kg-m+モーター123馬力、25.8kg-mのスペックを持つ最新のe:HEV(CVT)に刷新されている。WLTCモードによる最高燃費性能が先代最高の20.9km/Lから、新型のエアーFF 6人乗りで25.6km/Lにまで向上しているのも注目点だ。
なお、車重がハイブリッドより90kg軽くなるガソリン車のスペックは118馬力、14.5kg-m、WLTCモードによる最高燃費は16.5km/Lとなる。
インテリアも大きく変わった。よりすっきりとしたノイズのない空間となり、メーターは先代のアウトホイールからインホイールタイプの7インチTFT液晶メーターを採用。センターディスプレイは最大11.4インチのホンダコネクトナビが用意されている。
シート地と同じ撥水・撥油機能をもつ布地のFABTECT素材(ファブテクト/先代ステップワゴンのMC時にホンダとTBカワシマによる共同開発)があしらわれた助手席前にはティッシュボックスがすっぽり入るインパネアッパーボックス、その前のトレーなど、充実した収納、小物置きスペースの用意も嬉しいポイント。
なお、インテリアカラーはエアーがベージュ系のグレージュとブラックの2色で(シートはフルファブリックとEX用のファブリック×合皮の2種類がある)、クロスターはブラックのみ。クロスターのシート地は同じファブテクトでもジャージ風素材が使われている。シートは全車、撥水・撥油機能付き。
微に入り細を穿つ改良で後席の快適性MAX進化
ミニバンの最重要項目といっていいパッケージングは、すでに触れたように先代を踏襲。つまり、3列(2列)の人の座らせ方、ラゲッジルームの広さ、スライドドア開口部の寸法&乗降性など、基本的に変わっていない。
ただし、ソファ感覚のかけ心地にこだわったという2列目席ニースペースは、ステップワゴンやシビックに採用されるスタビライジングシートを奢った1列目席(前席)のシートバック背後をえぐったことで+30mmのゆとりを稼ぎ出している。
ちなみに、2列目席(後席)のスライド量は3/2列シート、駆動方式によって異なり、もっとも2列目席ニースペースが広いのは、FFの3列シートで、身長172cmの筆者のドライビングポジション背後で実測360mm(エアーで計測)という、ステップワゴンの2列目席(ロングスライド不使用時)と同等の広大なスペースが確保されているのだから驚くしかない(先代もほぼ同じ)。
新型フリードのハイライトはまだまだある。まずはついに電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能を採用したことだ(先代は足踏み式サイドブレーキだった)。おかげで運転席足もとがすっきりし、なおかつACC(アダプティブクルーズコントロール)の停止保持機能が向上し、渋滞追従機能が追加されている。
メモリー付きオートブレーキホールド機能によって走行中の一時停止などでブレーキペダルを踏み続けなくていいなどの多大なるメリットがもたらされることになる(祝!)。
コンパクトミニバンとしての空調環境は劇的に改善されている。そう、コンパクトミニバン初の後席用クーラー(前席でも調整、ON/OFF可)を天井にスマートに用意したのである。ヒーター機能はもたないものの、暑い時期の2(後席)/3列目席の快適度が格段に高まることはいうまでもない。
後席の暑がりの乗員はもちろん、1年中毛皮を着ている愛犬にとっても大歓迎されるに違いないのである。前席でもリヤクーラーのコントロールが可能だ。
フリードの3列目席は、ライバルよりシートサイズが大きく、かけ心地も優秀で、大人でも座りやすいシートだったのだが、新型では骨格から一新。具体的にはかけ心地はそのままに、薄型、軽量化を図り、ここがもっとも重要なポイントなのだが、左右跳ね上げ格納時の位置を先代より90mm下げ(上端の地上高1390mm。先代は1480mm)、ベルト固定位置もシート中央から手前に移動することで、小柄な人でも格納、復帰しやすいように配慮されている。
同時に、先代では3列目席格納時にリヤクォーターウインドウの視界が完全にふさがれていたところを、新型ではリヤクォーターウインドウの面積を1.5倍に拡大するとともに、上部に80mmの隙間を確保。車内の明るさとともに、斜め後方視界にもメリットをもたらしているのだ。
もちろん、先進運転支援機能=ホンダセンシングも最新のものを用意。ACC(アダプティブクルーズコントロール)は電子パーキングブレーキの採用もあって渋滞追従支援機能が加わり、近距離衝突軽減ブレーキ、ブラインドスポットモニター(タイプ別)の追加など、より一層充実したものになっている。もちろん、ホンダコネクトによるつながる安心、便利さも用意されている。
価格はフリードe:HEVエアー(FF)が285.78万円~、クロスターのe:HEV(FF)は316.25万円~となっている。ライバルのシエンタよりやや高めの設定だが、内容、装備を考えれば、妥当と思える。
なお、このあと、新型フリードの試乗記、乗り心地や車内の静かさの劇的進化、絶品のシートのかけ心地、各所の寸法、宿命のライバルとなるトヨタ・シエンタとの比較についても別途、お届けする。