路線バスに乗りまくるマニアライターが感じる異変! 最近のドライバーに感じる「運転の荒さ」の原因とは

2024.07.16 06:20
この記事をまとめると
■二種免許の所有ドライバーはさまざまな技をもっている
■最近は人手不足も目立つせいかバスやトラックは運転が荒いドライバーが増えた印象がある
■タクシー業界でもかつては独特な技が存在していた
職業ドライバーはまさに技術職人たちの集まり
  二種免許をもつプロドライバー、とくにタクシーやバスといった旅客輸送業界の運転士には独特の運転テクニックがある。それは乗客をいい意味で欺く運転技術である。
  たとえば、二種免許を取得する際の技能教習時には、「信号のある交差点通過時には正面のクルマ用ではなく、交差する道路側の歩行者信号をより注意して見なさい」という教えがある。それ以前に二種免許を取得するためには、より広い危険予測視野の確保が求められる。一種免許よりも幅広いだけではなく、より前方を意識するだけではなく、後方確認もより求められる。前方とルームミラーによる後方確認の割合は「6:4(前:後)」ともいわれている。
  交差点通過時の話に戻すと、たとえ正面のクルマ用の信号が青であっても、交差する道路側の歩行者信号が青点滅になっていたら減速し、正面の信号が黄色になるのを待ってさらに減速して停車することを心がけるように指導されているとも聞いている。もちろん、すべての場合においてこのような処置をしろというわけではない。無理に黄色で突破するのはよろしくないが、そこは円滑な交通確保というものも二種だけでなく一種では求められている。ただ、二種免許を持って営業運行する際にはさらに求められるのである。
  先日ネット上で路線バスの乗客が「バスがわざとノロノロ運転して信号が青から赤になるのを待って停車していて迷惑だ」といった投稿を寄せていたことが話題となっていた。筆者は「バスオタク」を自称しており、前扉すぐ近くにあり、運転席のほぼ真横にある「オタシート」に座ることを楽しみにしている(新車のバスほどオタシートがないことを悲しんでいる)。運転士を「ガン見(じっくり見ること)」しているわけではないが、信号のある交差点では交差道路側の歩行者信号を気にしているのはよく伝わってくる。たまに、そこを過剰に意識し、「結構無理しているなぁ」という感じで減速して調整し、赤信号になって停車させていることも見かける。
  バスの車内放送でよく、「やむを得ない場合、急ブレーキをかける場合があります」として、立ったまま乗車している乗客へつり革などにつかまるように注意を促しているのを覚えている人も多いだろう。たとえば「いけるかな」と思い加速したものの、間に合わずに信号が赤になってしまい、慌ててブレーキをかけた際にバスでは車内転倒事故の発生リスクが極めて高くなってしまう。そのため、急制動回避のためにも信号のある交差点通過には細心の注意を払っているのである。乗用車にはない補助ブレーキとも呼べるものが装着されているのもそのためといってもいいだろう。
運転が荒いドライバーが多いのは教育不足?
  前述したような投稿をされないためにも、いかに「さりげない」動作で安心・安全な運行を維持できるかが、運転士の技量として要求されているのである。ただし、キャリアを積めばそのようなノウハウを誰もが会得しているのかといえば個人差が生じる。新人であっても、二種免許保有者に必要な心構えなどをよく理解し、そもそも高いスキルの運転技術をもっていれば体現することはできるだろう。逆に悪い意味で「我流」を押し通したままキャリアだけ長くなる運転士もいるようだ。
「一刻も早く目的地に着きたい」。これは多くの乗客が思っていることだろう。都市部ではただでさえ道路混雑などでバス停の時刻表に書かれている「予定通過時間」から大幅に遅延してしまうことが顕著となることも多いので、乗車時にすでにイライラしている乗客も多いのも事実。
  また、バスやトラックは乗用車よりも急制動時のリスクが高い(トラックでは荷崩れなどが発生してしまう)し、そもそも急には停まれない。また、車体が大きいので万が一事故を起こしたときに周辺に与える被害も甚大なものとなりやすいのである。そのためにもより慎重な運転が求められているのである。
  ただ、あくまで筆者の私見となるのだが、ここのところ結構無理に交差点を通過する路線バスに乗ることが多くなった。信号が赤になる瞬間ぐらいのタイミングでそのまま交差点を通過することもそんなに珍しく感じないほど体験している。
「急制動気味に停車するよりは通過したほうがマシ」という判断なのかと筆者は思っている。その一方で、「危険予測視野が一種免許モードのままなのでは?」とか、「2024年問題で乗務に余裕がなくなってきているのか?」などとも感じている。
  働き手不足のなか、運転士の新規募集を行っているがなかなか集まらない。応募してきても多くが大型二種免許を持っていない場合が多く、「養成乗務員」として免許取得費用なども含めて採用した事業者も多い。バス事業者としては、短期間で二種免許を取得して独り立ちしてほしいと思っているのは当たり前。
  乗務員の養成は免許取得後も自社の研修施設で腕を磨かせるところもあるが、免許を取得したら簡単な路上研修のみで終わってしまうところなどもあり、個々で「最後の詰め」が異なっている。「働き手不足が元凶」と簡単にいうつもりはないが、運行現場に余裕がないのかなとは感じている。
  タクシー利用客のなかでは、「バスや鉄道よりも確実に速く目的地につきたい」と思って利用している人が目立つ。しかし、それだからといってタクシーを暴走させるわけにもいかない。いまどきはデジタコ(デジタルタコグラフ)など、デジタル系運行管理ツールも普及しており、各運転士がどのような運転をしているのかを可視化できるようになっているし、何よりも「法令順守」が大前提となる。そこでタクシーでは「速く走っているように見せる」というものを新人研修時に教えることもあるようだ。
  いま都市部でタクシー車両としてメインとなるトヨタJPNタクシーは、トランスミッションがCVT(カタログ諸元表では電気式無段変速)となっているが、まだまだ多く残っているクラウンコンフォートやクラウン・セダン、そしてかなり貴重となってきているY31日産セドリックタクシーでは4速ATとなっている。
  このような車種が全盛だったころには、時間にうるさそうな乗客だったら、OD(オーバードライブ)をオフにしてエンジン回転数を高めにして走るように指導していると聞いたことがある。後席の乗客からすればエンジンがブンまわっているような音がすれば、「ああ運転士さんも飛ばしてくれているんだ」となり、クレームもつきにくいというわけである。
  JPNタクシーはそれまでのクラウン系やセドリックが2リッターエンジンなのに対し、ハイブリッドとはいえ1.5リッターなのでそのようなことを意識しなくても、やはり非力感は否めないようで、かなり高回転までまわして運転する運転士も多い。なので、エンジンをまわすことを意識して運転する必要もなさそうだなと筆者は見ている。
  マイカーを実際に運転する人がバスやタクシーを利用することも多い。となると、当然日ごろの自分の運転に対し、過剰に安全運転を意識しているのではないかとの不満をもつ人も出てくるだろう(法令順守を心がけているだけなのだが)。そのような乗客からも不平不満が出ないように、安全運転を心がけるのもプロドライバーの腕の見せどころなのである。

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