面倒な客には「無理して売らない」が令和スタイル! お客も知っておくべきいまどきの新車販売現場

2024.07.15 06:20
この記事をまとめると
■昔から新車の販売現場には口うるさい人が一定数存在した
■新車販売現場では「口うるさそうなお客に売りこみができて初めて一人前」といわれていた
■いまどきの新車セールスマンは面倒だと感じたらあえて「売らない」という選択肢も用意している
口うるさい客への売りこみができて初めて一人前
  事情通が興味深い話を聞かせてくれた。「知り合いで新車販売のセールスマン経験のある人がいます。会食をしたあとに割り勘で清算するときなどで現金のやりとりをするのですが、その人は決まってお札の顔をそろえて渡してきます。その理由を聞くとセールスマン時代からのクセだと話してくれます」とのこと。
  その人が新人セールスマンとして営業所に配属されたばかりのころ。すでに退職したセールスマンが担当していたお客が任意保険の契約更新に訪れたそうだ(対面で毎年更新が当たり前のころ)。そこでその知人が応対することとなった。更新書類に捺印をもらうときに「三文判でいいのでハンコもらえますか?」というと、そのお客の表情が急変した、そして「三文判などというものはない。『認め印』といいなさい」と説教調でいわれたそうだ。さらに、お釣りを渡そうとしたら、「お札が何枚かある場合は、お札の顔をそろえて渡すように」とまたまた“お説教”され、その後もセールスマンとはなんたるかみたいなことを延々と1時間以上聞かされたとのこと。
  あとで聞くと、その店舗では名物のお客のようで、毎回のように新人が「生け贄」として担当してきているとのことであった。「そのお客は不動産関係の仕事をしているのではないかといわれていて、真偽はわかりませんが、少なくとも当時の不動産業界は新車販売より厳しい所作が要求される業界のようでした。そのときの印象があまりにも強く残っているとともに、セールスマンの所作としては有効と判断して、「それ以降30年以上どんなときでもお札の顔をそろえるようにしている」とその知人は語ったそうである。
  いまどきは「カスタマーハラスメント(カスハラ)」というものが猛威を振るい、その対策として自治体での条例制定や、政府が法制化へ向け動き出している。はるか昔の「小うるさい客」といまの「カスハラ客」は根本の部分では異なるとしても、昔から新車の販売現場ではクレーマー客レベルの管理顧客はそれほど珍しくはなく、セールスマン個々がそれぞれ複数の「問題客」を抱えていることも珍しくなかった。クレーマーと、口うるさい客の中間ぐらいのお客については、不思議なことでそのようなお客とはつきあいが長続きすることも多かったようだ。
  販売現場では「一般的に口うるさそうで苦手とされるお客に売りこみができて初めて一人前」ともいわれていたそうだ。受注に至らない商談件数も含めれば、セールスマンが接する人はかなりの数にのぼる。もちろん職業もさまざまで価値観もさまざま。そこで「苦手だから」とするのではなく、果敢にチャレンジして受注にもち込む。当時のセールスマンのアグレッシブさを示す話のように感じる。
  ただ、社会に余裕がなくなり「口うるさい」という表現では許容できない案件も目立つようになってきた。筆者と筆者の愛車を担当するセールスマンはすでに30年以上のつきあいのある間柄でもあり、法定点検の際は自宅までクルマを取りに来てもらい、終わったら届けてもらうようにしている。
  過去には点検・整備車両の引き取り及び点検・整備終了後の納車はメカニックとセールスマンなどでコンビを組んで車両の回送を行うのが当たり前であったが、いまでは働き手不足などもあって原則行わないようになり、店頭にお客が車両を持ち込むスタイルが一般的となっている。ただ、「いまどきのお客さまでは怖くて引き取り、そして納車はできない」とも話してくれた。「車両回送時に傷をつけられた」といいがかりをつけられ、トラブルになる可能性が高いというのである。
面倒なことになる前に商談を強制終了するセールスマンもいる
  昭和や平成初期のように、お客の自宅での商談が当たり前だったとか、いまよりお客とのかかわりが深かったころに比べると、お客とは希薄な関係になりやすい。治安なども含めて社会環境の変化もあり仕方のないことなのだが、そのためあまり余計なこともできなくなっているようである。
  少し前に新車の納期がかなり乱れ、納車まで長期間を要したときがあった。そのようなときだからこそ、フラッと店頭にやってくるフリーのお客はトラブルになりやすいので極力避けるようにしていたといった話も聞いている。下取り予定車の車検有効期限にかなりの余裕があり、納期遅延についても納得してもらえる関係を構築している得意客を中心に販売促進活動を行ったというのだ。
  経験の少ない新人ならともかく、ある程度経験を積んでいればファーストインプレッションで自分との相性やクレームになりやすい客かどうかは見極めができるとも聞いたことがある。さらに、いまどきでは商談中に話していくなかで、「この人に売るとのちのちもめそうだ」と感じると、遠まわしに「ほかで買われたほうがいいですよ」といったアプローチをかけて商談を強制終了するセールスマンもいると聞いたことがある。
「現場で話を聞くと、面倒そうだと半ば厄介払いされていくなかで、最終的にどこかのディーラーが面倒くさがられるお客の受注を取ることになるそうです。店舗責任者の判断もありますが、ノルマがどうしても足りないなど、その後トラブルを抱えるリスクの高そうな客とわかっていても受注してしまうことがどの店舗でもあるそうなのです」とは事情通。
  ただし、いまは闇雲に台数だけを追いかけるだけがセールスマンの仕事ではない。多少口うるさいくらいでも、のちのち折り合いをつけてつきあいが続きそうだと判断すれば売ることはあっても、それ以上のリスクがあればあえて「売らない」という選択肢を選ぶのがいまどきの新車販売の世界となっている。それでも前述したように、慎重に見極めているのに結果的に「トラブル客」となり、それを抱えるセールスマンはそんなに珍しくないのも現状となっている。
  買う側が自分とセールスマンの相性を気にすることがあるが、セールスマン側もお客との相性を見極めているのも確かな話。ただ総合判断して、相性がよくなくてもぜひ売りたいとなることもあるのだ。そして、その相性は買う側と売る側の組み合わせにより、まさに無限に存在するといっていい。
「新車販売セールスマンの名刺なんて世のなかでは軽くて仕方ない存在」と上司から聞かされた新人セールスマンの話も聞いたことがあり、タクシー運転士などともに、悲しいことだが理由が定かではないなか、世の中には見下して見ている人が多い職業のひとつとなっているのも間違いのない事実。ただ、「受注が欲しいんだろ」と高圧な態度をとっても、すべてのセールスマンが平身低頭の姿勢でそれに従うのは令和のスタイルとはいえない。リスクの高さを感じたら、すぐ手を引いて相手にしない、こちらが令和スタイルという表現としてふさわしいだろう。
  本命車種だったのに担当セールスマンとソリが合わないといったときには、無理して話を進めてもそれこそ感情が先走り、自らカスハラ客扱いされる道をたどることにもなりかねないし、クルマ自体への愛着も薄れていってしまう。「そもそも本命車とのめぐりあわせがよくないのかもしれないので、購入希望車種を変えてみてはどうか」というのは、昔から新車販売ではいわれ続けていることでもあるようだ。

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