コロナ禍あたりから増えてきた「展示車」「試乗車」の販売! 潜む「リスク」と「お得に買うコツ」

2024.10.21 06:20
この記事をまとめると
■最近の自動車ディーラーではショールーム内に展示車を置いてない場合も多い
■納期遅延の影響の名残で展示車の販売に積極的な店舗も目立つ
■展示車上がりの中古車は価格面で旨味が薄い場合があるので要注意だ
即納の展示車に注目が集まる
  昔の新車ディーラーといえば、ショールーム内に展示車が複数台など、積極的に展示されていたのが一般的であった。しかし、いまどきはショールーム内に展示車が置いてあることのほうが珍しくなってきている。
  その理由のひとつが、定期点検のためにお客が自車両を店頭にもち込み、終わるまで待つという「もち込み点検整備」というスタイルが定着したことが大きい。過去にはセールスマンとメカニックの朝一番の仕事といえば、その日に点検入庫予定のクルマを手分けしてお客のもとから引き取る作業となっていた。そして、日中に作業を終えたクルマを夕方再びお客のもとへ届け終え、サービス工場の仕事は終わっていた。
  もちろんお客自らがもち込むというケースもあったが、「引き取り及び納車」が主流であった。しかし、働き手不足などさまざまな理由からそれも困難となり、いまのスタイルに落ち着いている。
  とくに引き取り&納車スタイルでの点検整備が主流だったころに建設された小規模店舗では、「商談客+点検待ち客」というキャパシティは想定しないので、商談のほかに点検待ちスペース作りのためにもショールームに展示車を置けないということもある。また、ショールーム内に車両が置いてあると「汚い」と思う人も少なからずいるといったこともあるようだ。さらには、いまや新車購入検討時に試乗車を試乗するお客も多いので、ナンバープレートをつけ、「展示&試乗車」として用意するケースも目立ち、屋外展示が主流となっているものと考えられる。
  それでも、ナンバープレートのついていない展示車が置いてあるショールームが現存する。そのようなディーラーへ行くと、その展示されている車両について納期がかかるようなケースだと、「この展示車ならすぐに納車できますよ」と、展示車を勧められることが意外なほど多い。
  それこそ昭和後期や平成初期には、現在のような販売するための展示や試乗車用として区別することなく、ディーラーはメーカーから仕入れていた。そのため自社の販売目的で仕入れた在庫車のなかから適宜セレクトして展示していた。筆者の知る限りは、展示車も販売のためのストック車両としてリストアップされており、セールスマンは受注車両の当該車が自分の手元に届いて初めて「展示車上がり」とわかるケースも多かったようだ。
  筆者もその当時「展示車では?」と思える車両が納車されたことがある。そのときはそのまま引き取ったが、それ以後は「工場出荷時のまま」ということで、車内のシートにかけられたビニールなどはそのままにして納車するように指示しており、販売用と試乗、展示車用で区別して仕入れるようになった現在でもそれを実施してもらっている。また、一部のセールスマンは注文書の特記事項に「展示車おことわり」みたいな記載をしてクレームなどを防いでいた。
展示車と試乗車上がりの中古に潜むリスク
  その後、販売用と分けて仕入れるようにするほど展示車販売に慎重だったのに、いまになって「展示車なら」ということになっている背景は、数年前の全世界的な新車の深刻な納期遅延のときに、「展示車でもいいから売ってくれ」というお客が目立ったことがまだ尾を引いていることも大きいようだ。
  販売を前提としていることもあるのか、「オーディオレス」が標準状態の車両では、展示車でもオーディオスペースが空洞のままとなっていることもかなり多い。ただし、試乗車はそういうわけにはいかないので、何かしらのカーナビが装着されている。
  すべてのディーラーがということは確認していないが、聞いている限りでは、販売用と展示及び試乗用に仕入れる際では、メーカーからの仕入れ価格に差があるとのこと。もちろん、展示・試乗用のほうが仕入れ価格は安くなるようだ。そして展示車ならば、一定期間展示後ナンバープレートをつけ、試乗車も一定期間後その役目を終えたら、自社の中古車展示場で中古車として販売するというのが一般的な流れとなっている。
  展示車の場合はとくに不動状態で長らく展示しているので、バッテリーの乗せ替えはもちろん、さまざまな部分のチェックを行ってから未使用中古車、あるいは新車として販売されるのも一般的なようで、何もしない現状販売といった体制は敷かれていないと見ていい。
  試乗車についても、セールスマンには運転させない(使い方が荒い?)、試乗車としての使用期間の走行距離の厳密な管理、車内禁煙は当たり前とするなど徹底した管理が行われているので、試乗車上がりといえど、状態は極めていいようである。いまでは、展示車や試乗車あがりの中古車をお得に乗り継ぐといった人もいるようである。
  前述したように、仕入れ価格に差があるのならば、展示車を購入する際には一般的な車両よりも目立って値引きが拡大されてしかるべきと考える。また、中古車にしても、そもそものスタート地点(新車価格)が異なるのだから、それなりに減価償却されたものをベースとした中古車価格になるべきものと考える。
  つまり、「訳あり車」なのに一般的な新車を購入するときに提示される値引きにチョイ足ししたような条件では、見た目の状態がどうのという以前に買い得感はあまりないともいえるので、展示車や元試乗車を購入するときは慎重に確認してほしい。販売する側はそのあたりは承知で売ってくるし、一般的な新車販売より利益面で「うまみ」があるのもわかっている。
  まずは展示車の場合は、「当然一般的な新車を買うよりはお得になるんでしょうね」とセールスマンに伝え、反応を見てそれほど得をしないのならば、よほど当該車種にこだわりがあり、納車を急いでいるという事情がない限り、展示車は敬遠したほうがいいのではないかと考えている。

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