壊れて当然のノリだけど現代のクルマにはない楽しさがある! 沼る可能性しかないハチマルイタフラ車

2024.05.22 17:30
この記事をまとめると
■1980年代に一世を風靡したイタフラ車はシンプルで楽しいモデルが多かった
■ハチマル系ラテン車はいまや絶滅に瀕している
■現在もギリギリ入手できそうな1980年代のイタフラ車を紹介する
理由もなく楽しそうでお洒落に見えた1980年代のイタフラ車
  コンピュータを多用した最近のポップミュージックが嫌いなわけでは決してない。だが、アレをずっと聴いていると心と身体が少し疲れてくるため、気がつけば1960~70年代のシンプルな楽器でシンプルに録音されたロックミュージックに選曲し直し、「やっぱこういうのが落ち着くよなぁ……」などと独りつぶやいている中年各位は、決して少なくないはず。
  それと同様にクルマ生活においても、近年のコンピュータ仕かけ的なクルマが嫌いなわけではないのだが、「でもやっぱり1980年代のラテン車(フランス・イタリア車)みたいな“シンプルで楽しいやつ”に、そろそろ戻ってみたいよなぁ……」と心のなかでつぶやいている中年各位も多そうだ。というか、筆者自身がそのケースに該当する。
  確かに1980年代に一世を風靡した(正確には世の中の一部を風靡した)当時のラテン車たちは、かなりゴキゲンだった。シンプルかつ軽量ゆえに、大したエンジンは積んでいなくても妙にスポーティで、そしてデザイン的にもハイカラで。
  まぁ「ハイカラ」という単語がそもそも若い世代的には死語なのかもしれないが、そんなことはどうでもいいのである。中年としてはとにかく80’sラテン車のことを思い出すだけで甘酸っぱい気持ちになれるし、できることならいま一度それらを所有し、最近のクルマでは絶対に味わうことができない「あの感じ」を堪能したいのだ。
  とはいえ多くのハチマル系ラテン車は、最近の中古車市場においては絶滅傾向にあるわけだが、そのなかでも比較的入手しやすいのは「フィアット・パンダ」だろうか。ご承知のとおり現在は3代目(の在庫車)が新車として販売されているフィアット・パンダだが、ここでいうパンダは1980年から2003年まで製造販売された初代モデルである。
  イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロ巨匠によりデザインされた初代フィアット・パンダは、製造コストを抑えるためにすべての窓を平滑な板ガラスとし、ボディにもひたすら直線と平面が続くデザインが採用された、安価な大衆実用車だった。
  しかし、“そこ”が逆に味となったというか何というかで、イタリア本国では先述したとおり「安価な実用大衆車。小さいけど、車内はけっこう広い」というニュアンスで受け入れられたわけだが、遠く離れた1980~90年代の日本では、「おしゃれな輸入コンパクト!」としてスマッシュヒット。いわゆるカタカナ職業の人々や、懐かしの「オリーブ少女」的な女性たちがこぞって買い求めた。
  日本市場には1982年に上陸した初代フィアット・パンダは、初期モデルであるセリエ1は空冷直2 OHVと水冷直4OHVというエンジンラインアップで、グリルの片側にスリットの入ったデザイン。1983年には横置きFF乗用車ベースとしては世界初の4WDモデルとなる「パンダ4×4」が登場し、1986年からのセリエ2では直4SOHCのFIREエンジンを搭載した。
  筆者は遺憾ながらセリエ2の運転経験しかないが、「CLX」の場合でも最高出力50馬力でしかない1.1リッターFIREエンジンは非力といえば非力なのだが、その走りは──車重が軽いゆえに──意外と活発。そして、キャンバストップ仕様の場合は走行中「車内と車外の境目」があいまいになり、まるで夏の日の夕方、古い和風家屋の縁側でたたずんでいるかのような感覚を味わうことができた。
  そんな初代フィアット・パンダの中古車は、現在でも20台以上が全国で流通しており、相場は80万~200万円といったところ。「4×4」とCVTの「セレクタ」はやや微妙かもしれないが、5速MTの「ホビー」や「CLX」は、2024年のいまだからこそ乗ってみたい“シンプル名車”である。
  初代パンダ以外のハチマル系ラテン車は、前述のとおり絶滅傾向にあるわけだが、それでもいちおう入手可能なのは「シトロエンBX」だろうか。とりあえず全国で5台ほどが、総額100万~190万円付近で流通している。
  1982年のパリサロンで発表され、日本には1984年に上陸したシトロエンBXは、大柄な「CX」と小ぶりな「GSA」の間を埋めるべく開発された5ドアハッチバックおよびステーションワゴン。デザインは今年3月に死去したマルチェロ・ガンディーニ巨匠が担当した。
  それまでは曲線を多用していたシトロエン車のデザインだったが、BXでは直線基調へと大胆に変更。足まわりは当然ながら金属スプリングの代わりに油圧とガス圧で車高を支えるハイドロニューマティックで、1986年までの前期型はなんともソフトな雲上感が味わえる乗り味だった。そして、前期型はボビン型スピードメーターを初めとする超絶個性的なインテリアも「超おしゃれ!」としかいいようのないものだった。
  現在、中古車市場で流通しているのは残念ながら(?)ほぼすべてが1987年以降の後期型だが、それでも(完調な個体であれば)ハイドロシトロエンならではの乗り味と、前期型ほどではないが超絶おしゃれな内外装デザインを堪能できるだろう。
  1980年代に新車として販売されていた頃は、「とにかく壊れまくるクルマ」として有名だったBXだが、とあるシトロエン専門店は「あれは当時の正規輸入元がハイドロシトロエンのマトモな整備知識を有してなかっただけ。ハイドロシトロエンもちゃんと正しく直せば、普通に普段づかいできるんですよ」という。
  もちろん「蛇の道は蛇」的な専門店で全面的な納車整備をビシッと行うのはマストだが、2024年にシトロエンBXを普段づかいするのは相当シブい。車両代と完全納車整備代を合わせて300万円ぐらい投じれば、けっこうイケるのかも……?
ハチマル系ラテン車を実際に買うのはなかなかに難しい
  ここまでにご紹介した初代フィアット・パンダとシトロエンBX以外のハチマル系ラテン車の中古車は、それぞれいずれも「3台」とかしか流通していないのが直近の状況。それゆえ実際に購入するのはなかなか難しいかもしれないが、いちおう3台がしぶとく流通している「プジョー205」にはぜひ注目したいところだ。
  ご承知のとおりプジョー205は、本国では1983年に登場したコンパクトハッチバック。日本へはバブル初期の1986年に初上陸し、そのしゃれた雰囲気とGTIのホットな走りでいきなりスマッシュヒットを記録。それまで日本の一般的な自動車ユーザーの間ではほぼ無名だった「プジョー」の名を一躍有名にした。
  日本におけるメイン販売グレードだった「GTI」は、1986年の導入当初は最高出力105馬力の1.6リッター直4SOHCエンジンを搭載していたが、後期型では同120馬力の1.9リッターに。
  筆者が若かりしころ(といってもすでに1990年代)に幾度も試乗したプジョー205GTIは後期1.9リッターバージョンであり、当時の中古車マーケットで流通していたのもほとんどが1.9リッター版であった。そのため、初期の1.6リッター版GTIは「素晴らしい!」という噂は聞いていたものの、まったく運転したことがなかった。
  だが数年前、ご縁があって初めて運転した「テンロク」のプジョー205GTIは──本当に素晴らしかった。すべての動きが軽快で、なおかつ鋭く、そして力強くもあるため、普通に運転しているだけで楽しくて仕方ない。「……軽い風邪程度なら、これに乗るだけで治るのでは?」などと思ってしまったぐらいだ。
  また1.9リッターエンジンながら最高出力を100馬力に抑えた後期型である「205 SI」にも、記憶によれば1992年に試乗した。SIもまたきわめて軽快であるため(車重は1.9リッターのGTIより60kgほど軽く、タイヤサイズも後期GTIの185/55R15に対してSIは165/70 R13)、わざわざGTIを買わずともコレで十分なんじゃないか? と本気で思ったものだ。
  とはいえ、いまやプジョー205の中古車はグレードを選べる状況ではなく、「後期GTIだろうがSIだろうが、はたまたカブリオレのCTIであろうが、あればラッキー」ぐらいの勢いである。もちろんテンロクの前期型はまったく流通していない。
  だが本稿執筆日現在、某県にて走行1.1万kmの205SI(ガレージ保管車)が売りに出ているようではある。「ASK(価格応談)」であるためいくらで買えるのかはわからないが、もしもなんとかなりそうな額であるならば、ぜひ入手してみたいものだ。当該物件は5速MTではなく4速ATだが、まあいいじゃないか。そういえば筆者が1992年に試乗したSIもATだったが、それでも「このクルマは本当に素晴らしい!」と心底感じたものだ。
  また、「アウトビアンキA112」も流通台数が激少ということで──ハチマル系ラテン車を「語る」のは甘酸っぱくてステキな行為だが、実際に「買う」のは、なかなか難しい部分もあるようだ。
  そのほかでは、プジョー205とおおむね同車格だった「ルノー5」もいちおう3台流通しているが、よく見ると1台は普通のサンクではなく「GTターボ」で、残る2台はミッドシップの「5ターボ」であるため、そう簡単に買って維持できる代物ではない。

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