ハッキリいって遅かった……それでもミッドシップらしい走りは最高! 値段も手頃で乗るひとを幸せにした「フィアットX1/9」はやっぱり名車

2024.09.22 13:50
この記事をまとめると
■フィアットのライトウエイトスポーツカーとして登場した「X1/9」
■マルチェロ・ガンディーニが手がけたデザイン案が受け入れられてベルトーネが生産を担当
■軽快なターンインと抜群のスタイリングは「マイクロスーパーカー」といえた
1970年代のライトウェイトスポーツカー
  ライトウエイトスポーツカーというと、昔も今もフロントエンジンリヤドライブが定番と考える人が多い。しかし1970〜80年代は、手頃な価格で楽しめるミッドシップのライトウエイトスポーツがいくつかあった。その代表格がフィアットX1/9だ。
  X1/9は、グループ内のアウトビアンキ・プリムラで初めて実用化し、フィアットでは128で初採用した横置き前輪駆動のパワートレインを、そのままコクピットの後ろに移動させることで生まれた。
  フィアットは、128の前任車であるリヤエンジンの850に、クーペやスパイダーを用意していた。その流れで128にもふたつのボディを設定することになり、クーペは前輪駆動のまま作られたが、スパイダーはミッドシップ化が決まった。これがX1/9だ。
  ではなぜミッドシップかというと、エンジンとトランスミッションを直列配置のまま横置きした前輪駆動方式を発明したフィアットのエンジニア、ダンテ・ジアコーザが、当初から考えていたアイディアだったからだという。
  開発は、グループ内のシンクタンクとして設立されていたSIRAで、G.31のコードネームとともに始まった。GはSIRAの代表を務めていたジアコーザの頭文字で、SIRAで31番目のプロジェクトだった。
  設計が始まったのはプリムラが発表された1964年で、社内でデザインしたボディをカロッツェリアOSIが架装して、4年後にアウトビアンキG.31として公開された。
  すると翌年、850スパイダーのデザインと生産を担当したベルトーネが、アウトビアンキA112 ラナバウトというミッドシップスポーツのコンセプトカーを発表した。フォルムを描いたのは、当時のチーフデザイナーだったマルチェロ・ガンディーニだった。
  結果的にはこのデザイン案が受け入れられ、X1/9は850スパイダーに続き、ベルトーネの造形および生産で、1972年に発表された。車名は開発コードをそのまま使用。ちなみにX1/2はA112になっている。
軽快なターンインと安定したロードホールディングが魅力
  エンジンは128セダンが1.1リッター直列4気筒SOHCだったのに対し、X1/9にはこれの拡大版で128クーペと同じ1.3リッターが積まれた。
  サスペンションは前後ともマクファーソンストラットで128と同じだったが、実際はワイドスパンのV字型ウィッシュボーンをリヤに採用するなど、ほとんど新設計だった。
  ガンディーニらしい明快なウエッジシェイプと脱着可能なルーフが特徴のボディは、実用車顔負けのスペース効率の高さも自慢。コクピットの背後に燃料タンクとスペアタイヤを並べて置くことで、前後にトランクを用意。外したルーフは前側に格納できた。
  ただ、スチールモノコックでこの凝った構造を実現したために、車両重量は当初から900kg近くあった。対する日本仕様のエンジンは、北米仕様がベースでわずか61馬力。途中で1.5リッターに拡大しても66馬力で、ベルトーネブランドになった最終型でようやく欧州仕様になったものの、それでも85馬力だった。
  若き日の僕も、中古で1.5リッター版を買おうとしたものの、刺激がいまひとつだと感じて、アウトビアンキA112アバルトにしてしまったという経験がある。
  でも過給機をつけたりしなかったからこそ、ミッドシップならではの軽快なターンイン、凝ったリヤサスペンションによる安定したロードホールディングを楽しめたし、ガンディーニのフォルムはマイクロスーパーカーといえた。
  それが新車でも200万円台、中古なら100万円以下でも買えたのは、いま思えば幸せだったといえるかもしれない。

あわせて読みたい

ヒントは現場にあり!【プロトコンサルティング】Unitが見つめる未来
antenna*
イギリスに数多あるバックヤードビルダーのなかでも一歩抜きんでた「ノーブル」! 最近話を聞かないと思ったら元気に活動していた
WEB CARTOP
1000馬力オーバーの純エンジン量産車も存在! じつは1リッターで1000馬力のエンジンも作れるってマジ!?
WEB CARTOP
【SPECIAL】“LE LABO” City Exclusive Collection
Lula JAPAN
横3人乗りのV16エンジンって90年前の怪物を蘇らせた! グッドウッドで爆走した「アウトウニオン52」に世界が驚愕
WEB CARTOP
メルセデス・ベンツCLE200カブリオレ スポーツ(FR/9AT)【試乗記】
webCG
「track」よりホリデーシーズンにピッタリなブランド初のホリデーコフレを発売
PR TIMES Topics
ガンディーニとスタンツァーニが作ったのに……アレ? 期待度MAXだったランボルギーニ・ウラッコが鳴かず飛ばずで消えたワケ
WEB CARTOP
「パンテーラ」は知ってるけど「グアラ」「ビグア」って? デ・トマソのパンテーラ後を支えたクルマとは
WEB CARTOP
「手わたし」のシーンにしっくりと馴染む形を目指した新商品「わたしものふくさ」登場
PR TIMES Topics
紆余曲折を経たランボルギーニの未来を懸けた野望。手頃なサイズの2+2シーター「ウラッコ」(後編)
MEN'S EX
第869回:アウトビアンキ&イノチェンティ復活か? イタリア政府の思惑と地元の反応を探る[マッキナ あらモーダ!]
webCG
「物流人に休息を」をテーマにしたドリンク「LOGI RECOVERY SHOT」開発
PR TIMES Topics
スーパーカー世代にはたまらない!ペブルビーチに集った「ウェッジシェイプ・モデル」21選
octane.jp
【試乗】オープンのハイブリッドでも1.5トン切り! 軽量ハイパワーなマクラーレン・アルトゥーラ・スパイダーが示す至高の走り
WEB CARTOP
<CheeseTable>林檎・梨・巨峰など旬のフルーツを使ったスイーツ・ドリンク期間限定販売
PR TIMES Topics
かのヘップバーンも映画で乗った! アウトビアンキの「ビアンキーナ」がどこを切り取っても可愛すぎて悶絶必至
WEB CARTOP
マクラーレンの超軽量ハイブリッド・スーパーカー、新型「アルトゥーラ スパイダー」の実力とは
GOETHE
【知られざるクルマ】Vol. 32 70’s フィアット・ベルリーナストーリー(2)「130」「131」「132」……地味だけど、これぞフィアットという佳作セダンたち
CARSMEET WEB
紆余曲折を経たランボルギーニの未来を懸けた野望。手頃なサイズの2+2シーター「ウラッコ」(前編)
MEN'S EX