昔は晩ご飯をごちそうになって一人前! 「営業マンの腕」がみせられなくなった令和の新車ディーラー事情

2024.01.04 06:20
この記事をまとめると
■イマドキの新車セールススタッフは「売り子」になったといわれる
■現在の新車セールススタッフは購入希望客が来るのを待って売ることがメインになっている
■かつてのようにお客をその気にさせる営業は時代的に厳しい面もある
昔はディーラーに来た日の夜にお客の家に訪問するのが当たり前
  新車販売の世界に詳しい人からよく聞くのは、「いまどきのセールススタッフは売り子になってしまった」というもの。“売り子”というのは、例えばデパートなどの店頭でお客がくるのを待っていて、“欲しい”と思っているお客がやってきたら希望商品を販売する人といったようなイメージをしてもらいたい。
  “売り子”といえども、“欲しい人にただ商品を売る”という流れに終わらず、商品情報を提供しながら、その場で購入してもらうように話しかけることになるのだが、基本的には欲しくて店頭まで足を運んできた人が相手となることには変わりはない。
  令和のいまでは、店頭にきたお客に“アンケート”として住所や氏名、連絡先などを記入してもらえても、これをベースにDM(ダイレクトメール)などを送ることはできるが、直接自宅を訪れ販売促進活動を行うことは、個人情報保護法に触れたるとしてNGとされている(店頭イベントなどの案内以外には使わないとの注意書きが記されている)。“お客さまアンケート”への記載要請は、それこそ30年ほど前のバブル景気のころでも存在していた。ただし、そのときは昼間に店にきてアンケートに記入してもらえたら、その日の夜になると記載された住所へ出かけ、「その後いかがですか?」と販売促進するのが当たり前であった。
「昼間に相手をした感触で、“新車を買いそうだ”という可能性でランク付けして訪問先を絞り込むこともあったそうです。当時は“アンケートに記載すれば夜にはセールススタッフがやってくる”というのは、客側もある程度覚悟して記入していたとも聞いています」とは事情通。
  令和のいまでは、“働き方改革”もあり、18時ぐらいにディーラーは閉店となり、残業は厳しく禁じられているので、当然、夜間にお客の家を訪問して歩くことなどはできなくなっているので、やりたくてもできないのである。
  いまどきの“売り子”といわれるセールススタッフと過去のセールススタッフの大きな違いは、昭和や平成初期では“買う気のなかったお客をその気にさせて買ってもらう”というのがおもな仕事であったのである。自分が過去に新車を売ったお客のなかから、「この人はそろそろ買い換えそうだな」とか、「この人に売り込んでみよう」と“アタリ”をつけて売り込みに行っていたのだ。
  昭和のころのように、お客の家での商談が当たり前だったころは、「お茶菓子が出てきたら半人前」、「晩御飯をごちそうになったら一人前」とよくいわれていた。それだけお客との距離を縮めることができると、前述したように“そろそろ”と、そのようなお客の家に新車を売りに行くと、スンナリ入れ替えてくれたりしたのである。単にお茶菓子やご飯をごちそうになるだけではなく、そこまでの仲になれば自ずとその家の家族構成を把握したり、なんとなく財務状況などもわかってしまうのである。そこで「息子さん、大学生ですよね、運転免許取ったならどうですか?」と増車を勧めることも可能だったのである。
かつてはお客の希望どおり「じゃない」車種を推す技術もあった
  いつくるかわからない、新車購入を希望している人の来店を待っているだけでは、ノルマを消化することなどはできない。新車を買ってもらうのではなく、売りに行くのが昔のセールススタッフのおもな仕事だったのである。さらに、明確に「●●さんにはこのクルマを売ろう」と、販売予定車種も絞り込んで、バランスの良い販売も心がけていたのである。
  いまでもトヨタ系ディーラーのセールススタッフは、販売マージン支給基準などでバランスの良い販売を誘導するようにしていることもあり、高収益の見込める大型高級ミニバンから、コンパクトカーまでバランスよく販売している。しかし、そのほかのメーカー系ディーラーセールススタッフでは、扱う車種のなかで量販の見込める車種が限定的なこともあるが、とくに軽自動車を主軸に据えている傾向も否めない。軽自動車メインなど、販売車種が売りやすいモデルに偏っている傾向が目立っている。
  ただし、それをいまの若手セールススタッフにやれといっても、社会背景が当時と明らかに異なっており、若い世代ほど前述したようなお客との人間関係構築はかなり難しいので、昔話程度に聞き留めておいて欲しい(買う側も若い世代ほど、セールススタッフとの距離は一定以上保ちたいと考えているように見える)。
  いまどきの新車販売現場を見ていて、売り子といわれるのは別の意味もある。それはお客の希望どおり新車を売ってしまうところが売り子と表現されてしまうのである。
  自販連(日本自動車販売協会連合会)や全軽自協(全国軽自動車協会連合会)が毎月発表している販売台数統計をみると、トヨタ車が多く上位にランクインするだけではなく、コンパクトカー、大型ミニバン、SUVなどバランスよく上位にランクインしてくる。
  そもそも圧倒的なシェアで国内販売ナンバー1ブランドとして君臨しているのだからという見方もあるが、トヨタのセールススタッフは、自分が過去に売ってきたお客に対してきちんと売り分けて継続的に乗り替えてもらえていることがランキングを見ても伝わってくる。ユーザー年齢層が高めにも見えるのだが、それもあり「●●さん(セールススタッフ)がいうなら」といったノリで新車に乗り替える人がまだまだ多いこともある。
  ほかのメーカーでは多くのラインアップを持っていても、結果的に量販できるモデルが数台しかないということもあり、売り分けることもできずに言われるがまま新車を販売してしまっていることも目立つのか、販売台数ランキング上位に入ってくるモデルは限定的となっている。
「お客さま、こちらのクルマはどうですか?」と勧めるには、やはり膨大な商品知識など情報を多く持つことはマストとなる。つまり、勧めるだけの理論武装が必要なのである。そのため、新車を多く売る敏腕セールススタッフはトーク上手というよりは、相手を納得させる豊富な情報を提供できるセールススタッフのほうが多い。
  筆者は仕事柄、ひんぱんに新車ディーラーに出入りしているが、「この人は情報量も豊富だし説得力もあるなぁ」というセールスマンに出会うことは少なくなった。購入者側が決め打ち(購入希望車を絞り込んでくる)していることも多いようなので、そこまでセールススタッフに求めなくなってきているのかもしれないが、やはり膨大な知識に裏打ちされたトークには説得力というものがある。

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