日産サクラの売れ行きを見れば日本でBEVが売れないなんてことはない! ただし大ヒットの裏で必要な「次の一手」とは

2024.04.16 06:20
この記事をまとめると
■日産の軽BEV「サクラ」は、車名別販売ランキングで上位に食い込めるほど売れている
■サクラは都市部よりも路線バスやガソリンスタンドが少ない地方でよく売れている
■サクラのデメリットを解決した次に繋がるBEVが不足しているのが日本市場の実情だ
じつは日産サクラが売れまくってる!
  世間では日本メーカーのBEV(バッテリー電気自動車)への取り組みが遅れているとの報道が目立っている。そのなかで日産の軽規格BEVとなるサクラの販売が好調に推移している。
  日産サクラは2022年6月より正式発売されている。全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の統計によると、2022暦年(2022年1月~12月)締めでの年間新車販売台数は2万1887台(5月より統計数字が出るようになったので、5月から12月での月販平均台数は約2700台)、2023暦年締め年間販売台数は3万7140台(月販平均販売台数約3000台となっている。2024年2月までの累計販売台数は6万3950台となり、月販平均台数は約2900台で、軽自動車のみで増販期でもなければ、車名(通称名)別販売ランキングで上位10位以内入りしてもおかしくない台数となっている。
  マーケット規模の大小があるものの、サクラの売れ方で特徴的なのは、東京などの大都市部よりも地方部でよく売れている点が挙げられる。4月1日からは2024年問題の影響がより深刻となり、大都市部でも路線バスの減便や路線廃止が顕著になるともいわれているが、地方部ではすでに公共交通機関に頼った移動が難しい地域が多く、「マイカー」がないと日常生活で移動することが困難な地域が日本国内ではかなりの数にのぼっているのが実情だ。そのような状況ながら、山間部などの過疎地域では「ガソリンスタンド空白地帯(廃業が多い)」も目立ち、給油するのに隣町まで行かなければならないケースも目立ってきている。
  さらに、ガソリン価格も高値傾向で安定化してしまっている。そのようななか、わずかな年金をメインに生活している高齢世帯では、マイカーを手放すことはなかなかできない。高齢世帯はマイカーで遠出といったシチュエーションは限定的で、買い物や通院など生活圏内の移動がほぼすべてとなるので、ガソリンよりは電気代が安いこともあり、地方在住の高齢世帯を中心にサクラのニーズが大都市より高いことが大きく影響しているとされている。
日産からサクラ+αのBEVを出してほしいところ
  それではよく売れているサクラを、「日本メーカーを代表するBEV」といっていいかとすると、筆者は少し考えてしまう。まず使用にあたって航続距離が短いこともあり、他車と比較して制限があること。実際ディーラーでも「サクラでの遠出は考えないでください」といわれることも多い。実際試乗してみると、すぐに「充電してください」といった表示が計器盤に出てしまう。
  BEVの普及が進む中国では、BEVの航続距離は600kmも珍しくないので、サクラは物足りないといわざるを得ないだろう。また、日本の軽自動車は衝突安全性能の関係もあり、広く海外で正規にラインアップすることが難しいとも聞いている(日本から軽自動車が個人輸出されていることもあるが)。
  筆者としては、そろそろ日産としてサクラよりやや使用範囲の広い「サクラ+α」的なBEVを出してもいいように感じている。サクラは前述したような地方を中心とした一定のニーズをつかんでヒットしている。しかし一方で、現状のスペックでは物足りないと、静観している人も多いだろうし、すでに所有しているサクラオーナーのなかにもそう思っている人はいるだろう。
「ネクストサクラ」として、ノートサイズぐらいのBEV(コンパクトクロスオーバーSUVスタイルでもいい)が出てもいいのではないだろうか。このカテゴリーに近いBEVとしては中国BYD(比亜迪汽車)オートが日本国内でドルフィンをラインアップしている。2024年の年央には供給体制が強化されるそうだ。
  現状BEV購入への政府補助金の交付を受けると、4年間名義変更はできないので、2026年あたりまでに日産が用意できれば、サクラからの上級移行ないし乗り換え需要にスムースに対応できるが、それができなければ、ドルフィンに流れていくケースもあり得ない話ではない。いずれにしろ、サクラの意志を継いだ新たなモデルが登場すれば、海外でも積極的に展開できる可能性を持つことになるだろう。ちなみに韓国では、韓国の軽自動車規格車両(ICE)ベースのBEVの開発が進んでいるとの情報もある。
  サクラのようにスペックをある程度抑えて、買い求めやすくした「ローコストBEV」は、中国系各メーカーがこぞってラインアップしているので間違ったものではないが、サクラがデビュー当初から日本でヒットしていたことが、中国系メーカーの動きを後押ししたのではないかとも見ている。
  もっとも懸念すべきは、サクラがこのまま単独でよく売れる状況が続くと、日本の消費者の間で、「所詮BEVは制約の多い乗り物なんだ」という意識が定着してしまう可能性が高いということ。BEVがベストな選択というつもりはないが、正当な価値判断がされないなか、選択肢から除外されてしまうのは健全とはいえないだろう。
  サクラがよく売れているということは、それだけBEVに興味をもっていた人が多かったともいえる。ただこのままでは、サクラみたいなBEVを欲しがっていた人があらかた購入してしまうと、サクラも一時の「ブーム車」みたいな存在に陥ってしまうことも十分に考えられる。
  軽自動車をラインアップするメーカーすべてがBEVをラインアップするほど需要があるのかといえば、現状ではそこまでの需要は「軽自動車」という規格に限っていえばあるとも思えない。ただし、優秀なHEV(ハイブリッド車)を世界で販売している日本メーカーだからこそ、日本車らしいBEVというものが提案できるものと筆者は考えているので、もう少しBEVのラインアップを増やして市場の反応を見てもいいのではないかと考えている。

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