「自分たちが一番心動くものを」。発酵性食物繊維に着目した「Fibee」のブランド構築に奔走したミツカン社員の苦労と挑戦

2025.04.22 11:00
大手食品メーカーである「ミツカン」が2024年3月にローンチした新ブランド「Fibee(ファイビー)」。発酵性食物繊維に着目した同ブランドでは、美味しさ・手軽さ・健康感・手頃感の4つを大切にし、これまでにワッフルやカレー、飲料など、日々の食事に手軽に取り入れられる商品を展開してきた。


「Fibee」の立ち上げは、同社の「医食同源プロジェクト」に参画した社員によって行われ、その後、イノベーション開発部にジョインしたメンバーによってブランドが形作られた。そのメンバーのひとりが、2016年にミツカンに入社し商品企画部などを経てイノベーション開発部に加入した掛田実穂(かけだ・みほ)だ。
掛田実穂(かけだ・みほ)。2016年入社。


ブランド構築はゼロからのスタートだった。商品開発・設計をはじめ、生活者とブランドを繋ぐコミュニケーション施策など、決めるべきことは数え切れないほどあったという。


今回は、「Fibee」ブランド構築に携わったメンバーのひとりである掛田に当時を振り返ってもらい、ブランド構築の裏側やブランドを形づくる上で大切にしていることなどを聞いた。
発酵性食物繊維に着目。「Fibee」を通して実現したい新たな“医食同源”とは
掛田がミツカンに入社したのは2016年のこと。大学では薬学を学んでおり「食で病気を未然に防ぐ」という考えに合致する、お酢や納豆などを主力事業として扱うミツカンに入社した。
開発技術部に4年間、商品企画部に3年間ほど在籍し、原料や商品の開発を行った後、2022年中頃にイノベーション開発部に異動した。掛田が異動した時点では、新規事業の内容はほとんどゼロの状態に近く、ブランドの方向性を決めるところからスタートする必要があった。その時の心境について掛田は「漠然とした不安はゼロではなかった」と話す。


「ただ、新しいことにチャレンジするのは好きなので、自分の性格には合っているかもしれないなとは思いました。自分が元々思い描いていた、食で病気を未然に防ぐというやりたかったことを実現できるかもとワクワクした気持ちも大きかったです」


大きな枠組みとして「新たな医食同源」というテーマが決まった後も、何を作るのか具体的な内容に落とし込むまでには長い道のりがあった。その状態をイノベーション開発部では「振り子のように」と表現し、試作品の開発と出口調査を繰り返し、最終的には「発酵性食物繊維」に着目して新規事業を立ち上げることとなった。これが「Fibee」ブランドの始まりである。


医食同源とは、「医薬品も食物も共に人間の生命を養い、健康を保つ上で欠くことができないもので、その源は同じ」という古くから伝わる考えのこと。ミツカンは「やがて、いのちにかわるもの」というコーポレートスローガンを掲げ、医食同源に繋がる「発酵」を得意とする会社だ。イノベーション開発部では、この発酵を新解釈することで「新たな医食同源」の実現に繋がるのではないかと考えた。
しかし、「発酵」について実施した市場調査では、思わぬ結果が待っていた。掛田は「そもそも、発酵自体があまり理解されていなかった。その意味や発酵がもたらす影響を知っている生活者が少なかったんです」と話す。


「生活者インタビューで発酵について聞くと、味噌だったり納豆だったり具体的なモノを回答される方が多くいました。発酵を新解釈するどころか、そもそも発酵そのものが解釈されていないというのは新しい気づきでしたね」


そこで着目したのが発酵性食物繊維だ。発酵性食物繊維は近年研究が進んでいる栄養素のひとつで、メディアでも取り上げられるようになってきているなど、世界的に注目されている。


また、世界で医食同源として認識されているような食事は、豆類や全粒穀物など発酵性食物繊維を多く含む食材を積極的に取り入れる傾向にあることから、発酵食物繊維をキーコンセプトとして、「Fibee」の開発を進めることとなった。
かわいく、美味しく、そして健康に──。商品設計で大切にしたこと
商品開発や商品クリエイティブの製作、プロモーション活動など、ブランド立ち上げに向けてするべきことは多くある。掛田は主にプロモーション業務を担当しているが、「Fibee」においては商品のクリエイティブ周りや営業活動にも携わっているという。
「Fibee」のグッズ開発も担当しているという。


「Fibee」のメインターゲットは20〜30代の女性で、現在10種類の商品を展開している(※取材時)。「Fibee むぎゅっとワッフル アールグレイ」や「Fibee ひとくちビスキュイ オレンジとカカオニブ」など、特徴的なフレーバーの商品が多いのが特徴だ。


フレーバーへのこだわりについて掛田は「女性をターゲットとした時に、同性である私達が欲しくないものや心が動かないものはやりたくなかった」と話す。「ブランドCOOの石垣(現 CINO)からみんなに任せるよと言ってもらったこともあり、商品ひとつとっても、フレーバーひとつとっても、自分たちの思いを重要視して決めていきました」


例えば、「Fibee むぎゅっとワッフル」のアールグレイ。紅茶の茶葉に柑橘系の香り付けがされているため、独特な香りがするが女性人気は高い。石垣を含め上層部からは普通の紅茶味で良いのではと言われたが、社内試食の実施や何度も議論を重ね、アールグレイ味を実現した。


「すごく特別感があるものではなく、ちょっと良いかもと思ってもらえるものを目指してました。それはフレーバーもそうですし、食感や食後の感覚とか、20〜30代の女性のツボにハマるポイントを意識して商品設計を考えていきました」


こうした考えは「Fibee」のブランドパーソナリティに基づいている。「Frank(気軽)」「Take it Easy(気楽)」「No Worries(信頼できる)」の3つを軸として、「『楽しくて頼もしい、最高のともだち』のような善玉菌ブランド」として社内で共通認識を持っているのだという。


また、「Fibee」の商品はパッケージデザインにも特徴がある。食品には珍しく緑を採用している他、中央にシズル感のある商品の写真を大きく配置している。これは「かわいい」「美味しそう」「健康」の順番で認識してもらうことを意識した設計だという。


「「Fibee」の大きな特徴は健康食品らしくないことなんですが、とはいえ健康食品の要素を全て排除するのも違うよねと。なので、まずは見た目でかわいい、美味しそうと思ってもらい、最後によく見たら健康食品っぽいと思ってもらえるようなバランスを考えました」


柔らかなイメージの緑には、「Fibee」用に開発した特色を使っている。食品にはあまり使われない色味だが、調整を重ね、かわいさや美味しさ、ポップさを表現できる緑が完成した。結果としてこの緑が生活者の目に止まりやすく、記憶にも残りやすいようで、「Fibee」ブランドの認知を広げるひとつのポイントとしてうまく機能している。
「Fibees」誕生とアンバサダープログラム立ち上げは「発酵性食物繊維への理解を深めるため」
発酵性食物繊維への理解を促進するために、コミュニケーションの部分にもいくつか仕掛けを用意した。そのひとつがブランドキャラクターである「Fibees(ファイビーズ)」だ。
「おなかの中で暮らす腸内細菌のお友達。」とキャッチコピーが付けられており、現在のキャラクター数は、善玉菌/ビフィズス菌をモチーフにした「ビーさん」や善玉菌/酪酸菌をモチーフにした「ラクさん」など9体。通常は目に見えない善玉菌をデフォルメし、キャラクターとして表現することで、かわいく、ポップに発酵性食物繊維について学ぶ機会になるのではないかと考えた。


「Fibees」は、一つひとつのキャラクターに性格や口癖などの設定が設けられているのも特徴的だ。「見た目がかわいいことは大前提として、キャラクター好きの方のツボにハマる要素として、性格や口癖、相関図などの設定を入れました。将来的には商品と切り離して、キャラクターが人気になるということもあると思っています」
今後は、ぬいぐるみなど「Fibees」グッズの製作・販売も視野に入れているという。健康食品に挑戦するハードルを下げる役割を果たし、発酵性食物繊維の理解も促進するきっかけにも繋がるキーとなる取り組みだ。


また、もうひとつのコミュニケーション施策として、アンバサダープログラム「
」も立ち上げた。「腸内」と「町内」を掛け合わせて「腸内会」と名付けられており、こちらも親しみやすさを意識している。


通常、アンバサダーやファンクラブはある程度ブランド認知が高まった状態で始められることが多い。しかし、「Fibee」はブランドローンチ前にアンバサダー募集を開始した。それについて掛田は「ブランドを押し付けるようなことはしたくなかった」と話す。


「我々メーカーが生活者に対して買って欲しい、食べて欲しいと押し付けるのは「Fibee」のブランドパーソナリティに反するところがあるなと思いました。そうではなく、本当にブランドを好きになってくれる方を仲間にして双方向のやり取りができれば、それがブランドの成長にも繋がるのではないかと考え、ブランドローンチ前にアンバサダーを募集しました」


「Fibee腸内会」のメンバー向けに「Fibee腸内会ルールブック」も用意した。このルールブックには、薬機法観点でのOK表現・NG表現やハッシュタグの付け方などが記載されている。「Fibee」は商品特性上、体への効果・効能を謳うことができない。商品への理解だけでなく、「Fibee」というブランドのあり方も知ってもらうための重要なコミュニケーション施策となっている。
ブランドローンチまでの期間は「ただがむしゃらだった」
主体的に事業を進めてきた掛田。「Fibee」への熱い思いを抱えて奔走してきた彼女に、これまでの取り組みを振り返って改めて大変だったことを聞くと「色々ありますね」という答えが返ってきた。


「ほとんど何もない状態からブランドを立ち上げていくというのは、今振り返ってみてもなかなかに大変なことだったなと思いますね。私だけでなく部長も含めて初めての挑戦だったので、チーム内に経験者がいない、さらには正解もない中で事業を形にしなければならないというのは、なかなかにハードでしたね」


経験がない中では、とにかく色んなことをやってみないとわからない。例えば、ブランドのローンチイベントでは、時間が限られている中で量も質も求められた。


また、薬機法観点での苦労も多い。健康食品ブランドと謳ってはいるものの、健康効果を具体的に表現することはできない。しかし、生活者の多くは効果・効能を求める上、ブランド側としても発酵性食物繊維が体に与える良い影響を伝える啓蒙活動をしたいと考えている。
現在もブランドの見せ方、伝え方にはかなり工夫をしているが、今後の課題だと感じている部分だという。
「Fibee」を食生活の一部となるブランドに
最後に、「Fibee」の今後の展望を聞いた。


「日々の食事を考える上で、常にある選択肢として認知してもらいたいと思っています。最終的にはライフスタイルブランドと言えるまで成長するのが目標ですね」


その目標に向け、直近では発酵性食物繊維と「Fibee」を知ってもらうためのコミュニケーション施策を実施する予定だという。
皆さんの生活の一部となるブランドにしたい──。掛田を含む「Fibee」チームの従来のミツカンにはなかった取り組みが、健康食品の新たな当たり前を作り出すかもしれない。

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