ライオン株式会社は、2025年4月1日より歯科医院を通じて口腔ケアの習慣化をサポートする新サービス『OraCo(オラコ)』の提供を開始しました。「歯医者さんで教えてもらった歯みがき、気づけば自己流に・・・」そんな誰もが抱える“習慣化”のお悩みにアプローチする新サービスです。
どのような想いでこのサービスが生まれたのか?今回は開発を主導したライオンの新規事業開発担当者、高安(たかやす)さんにお話を聞きました。
新サービス『OraCo』とは?
──『OraCo』について教えてください。
『OraCo』は歯科医院を受診した患者さん向けのサービスです。スマートフォンアプリを通じて、歯科医院で教わったケアの習慣化をサポートします。
──利用の流れは?
まず、 歯科医院で受診した患者さんが、医院から渡された登録証をアプリにアップロードします。すると、ライオンの歯科衛生士からチャットでフォローが始まります。
登録証には、お口の状態や課題などが記載されており、それに応じて歯科衛生士が用具の使い方や続けるコツなどをアドバイスしていきます。
歯科医院との連携がもたらすメリット
──歯科医院と連携することで、どのような課題を解決できるのでしょうか?
生活者一人一人の口腔状態に応じたサポートが提供でき、より確実に習慣化へ繋げられるようになると考えています。
──歯科医院と患者さん、双方に意義があるサービスなのですね。
その通りです。患者さんが継続的に口腔ケアを行うことで、健康な口腔環境を維持できるようになりますし、歯科医院にとっても患者さんの口腔衛生指導がより効果的に行えるようになります。
──『OraCo』アプリを利用することで、どのような効果が期待できるのでしょうか?
臨床試験では『OraCo』のサポートによる口腔ケア習慣化の可能性を確認しています。
『OraCo』アプリを利用した群は、未利用群と比べて、受診後の歯科医院での指導内容の継続度が向上しました(各群25名)。
患者さんが継続的にフォローを受けることで、口腔ケアの習慣が身につきやすくなり、結果的に予防歯科の効果を高めることができると考えます。
サービス立ち上げの背景とビジョン
──この新しいサービスを立ち上げる背景にはどのようなビジョンがあったのでしょうか?
「全ての人々にとって予防歯科をもっと身近なものにしたい」というビジョンで開発を進めてきました。生活者も歯科医院も予防歯科の重要性は認識しているものの、“続けること”、“続けてもらうこと”の難しさを感じているという声を多くいただいていました。
その課題に対して、これまで口腔ケアグッズを生活者に広く届けてきた私たちだからこそ、身近な専門家として貢献できる余地がまだまだあると考えました。
立ち上げまでの課題
──サービス開発の中で、一番苦労した点は何でしたか。
アプリの開発にはとても苦労しました。当社には製剤の開発や啓発のノウハウはあるものの、ITサービスの構築経験は多くありません。そんな中、新しい体験を届けるアプリの開発という、さらに高いレベルに挑戦していたので、開発当初は計画通りに進めることができなかったんですよね。
──なるほど。その課題をどう乗り越えたのでしょうか?
とにかくシンプルな設計で開発し、現場で試しながら即改善する方法で完成度を高めていきました。
計6医院のご協力のもと実証実験を行い、毎週のようにメンバー全員で現場を観察し、その学びをアプリの体験にも反映させました。もちろん、まだ改善すべき点は多くあります。発売後もこの姿勢を大切にし、サービスを進化させ続けたいですね。
1to1コミュニケーションの提供
──サービスの中で特に力を入れている部分はどこですか?
AIでなく歯科衛生士が受診後に患者さんをチャットでフォローする形にしており、そのチャットでのコミュニケーション内容には特に力を入れています。アプリの体験をより身近に、そして前向きに続けてもらえるよう設計しました。
──チャットでのコミュニケーションで具体的にどのような工夫をしていますか?
一方的な指導や啓発ではなく、生活者に寄り添うことをテーマにコミュニケーションを展開しています。歯科衛生士からのアドバイスは、生活者の行動に合わせて届けられるように工夫しました。
提供する動画も、忙しい日常の中で見やすいよう短尺化し、画像は大きくわかりやすくするなど配慮しています。
──コミュニケーションの内容はご自身でされているのですか?
チームメンバーが歯科衛生士と相談しながら制作しています。当社は本サービスに限らず、多方面で啓発活動を行っているので、社内には多くの歯科衛生士が常駐しています。そういった歯科衛生士と連携し、スピーディかつ柔軟に取り組めることも強みですね。
──現状、コンテンツの種類はどのくらいの数がありますか?
画像も含めて100以上ですね。
──そんなに!送ってもらえるのが楽しみですね。このサービスには習慣化の理論が応用されているとか。
そうなんです。習慣化には実行のハードルを下げて、少しずつ取り組んでいくことが大切だと言われています。そこで、例えば歯みがきやフロスも、最初は課題の歯を1本だけ、週1回からスタートし、徐々にハードルを上げていく形にしました。その中で、歯科衛生士が褒めたりモチベーションを上げる言葉をかけたりすることで、成功体験を積み重ねられるようにしています。
また、チャットに投稿することで、「自分が宣言した手前やらなくては」という適度な強制感も生まれ、習慣化に繋がると考えています。
──習慣化にこだわったサービス、ライオンならではですね。
はい。当社のパーパスにも掲げられているように、人々の行動を前向きに変容させることが大切だと思っています。『OraCo』を通じて、オーラルヘルスケア習慣を広めていき、人々のより良い習慣づくりに貢献していきたいです。
未来への展望
──4月にサービス提供開始ですが、そこからさらにアップデートされる点はありますか?
新規事業なので、サービスを出してみないとわからない部分もあります。習慣化は簡単ではないので、サービス運用する中で出てきた課題を一つ一つ解決していきたいですね。
また、口腔ケアにはむし歯や歯周病、口腔機能など様々な分野がありますが、歯科医院からもサポート内容の拡張を求める声をいただいているので、今後もそういった部分を強化していく予定です。
──今後、挑戦してみたい仕事や目標は何ですか?
短期的には、始まったばかりの『OraCo』サービスの進化を加速させていきたいですね。中長期的には、デジタル治療アプリやモバイルヘルスの分野に注目しています。
今回のサービスで構築するコア技術を活かし、グローバル市場への展開も視野に入れています。日本で完成したものを輸出していく形ですと、スピード感が課題になってくるので、アジアの国々と並行して開発を進めるなど、スピーディかつダイナミックな事業開発をリードしていきたいです。
──最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
“日々の歯みがきをしっかり行い、歯医者さんに褒められる”――この瞬間はとても自信になりますし、日々の暮らしを前向きにしてくれます。
私たちは、この体験を全ての人々に届けたいという想いで開発を進めてきました。まずは関東圏の歯科医院を通じてのサービス展開となりますが、今後の拡大にもぜひご期待ください。多くの方に使っていただき、予防歯科をもっと身近に感じてもらえたら嬉しいです。
▼『OraCo』歯科医院向けサービスサイト
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