「インフラ×教育」産学連携のユニークな発想で「インフラメンテナンス大賞特別賞」を受賞

2025.03.19 11:30
<写真:表彰式の写真>


学校法人「玉川学園」(東京都町田市)はこのほど、国土交通省を中心に8つの省が参画する「第8回インフラメンテナンス大賞」の文部科学省特別賞を受賞しました。初めての応募にして大臣賞に次ぐ、特別賞受賞という快挙。「教育現場とインフラメンテナンスの連携による技術力向上」という、ユニークな取り組みが評価されたようです。
インフラ、そして教育という、一見、相異なるような概念を結び付けた取り組みとはどんなものなのでしょうか。玉川学園総務部管財課の北川昭一次長、岩内久敬課長補佐、学園の電気設備を管理するSEC株式会社の高橋瑛二・常駐管理三課課長にお話を伺いました。
<写真:北川さん、岩内さん、高橋さん(SEC)>


 幼稚部から大学院までが同じキャンパス内にあり、町田市のほか、神奈川県横浜市、川崎市にもまたがる面積61万平方メートルという広い緑豊かなキャンパスの玉川学園内には「特別高圧受電設備」があります。これは、変電所から送られる大量の電気を、専用の送電線で学内に取り込むためには欠かせない設備です。2023年に、この高圧受電設備を研修用として活用できるようになったことが、今回の受賞の第一歩となりました。


「1929年の創立以来、玉川学園の教育理念には全人教育というものがあります。その中には一番大きな労作教育がありますが、その他に緑豊かな地での自然の教育もあり、さらに本物に触れる教育というものがあります。まさにこの本物の『高圧受電設備』を使った教育という形になります」
<写真:研修用高圧受電設備>


北川次長や岩内課長補佐によると、学園内に特別高圧受電設備ができたのは1990年のこと。6万6千ボルトという特別高圧で、学園の敷地内に電気を送る元になるのが、この特別高圧受電設備です。そこから6600ボルトという電圧に落としたうえで、さらに各変電所をまたいで100ボルトまで落とし、実際に学内や家庭などで使える電気の容量になるという仕組みです。


「玉川学園の教育の基本である労作教育は本来、キャンパス整備も含め、自分たちで学び舎を整備し、維持していくという、創立時からある伝統です。とはいえ、現在は建物も木造から鉄筋コンクリートになるなど、維持管理の方法も高度化しており、学生や子どもたちだけでは管理しきれないところがどうしてもあります。そういった部分は協力会社と連携して行っていくことになりますが、特別高圧受電設備については、メンテナンス会社のSECさんの協力を仰いで管理しています」(北川次長)
<写真:北川さん>


 もちろん、稼働中の高圧受電設備は、高圧の数字を持ち出さなくても分かるように、厳重な管理が必要なため、実際に触れたりすることはできません。そのため、これまでは図などを使って、仕組みや形の説明などに時間が費やされていましたが、2023年度に、外からも中の構造や配置が見える開放型の高圧受電設備を、解体した、大学2号館から「ELF Study Hall 2015」のある建物へ移築したのです。本来は大学2号館の建物解体にあたって廃棄される予定だったのですが、これをそのまま利用して研修用の施設としました。現在は通電していないので、学生や子どもたちが近くに寄って、実物を見られるようになったといいます。
<写真:岩内さん>


玉川学園がこうした特徴的な設備を教育に活用しはじめてからおよそ35年。これまでにおよそ7000人の子どもたちが見学をしてきたそう。学外からの見学者はこれまでのところないということですが、幼稚園児・小学生から大学生までが、授業の1コマとして、あたかも「学園内社会見学」のような形で、高圧受電設備について学びを得てきました。

 このような玉川学園の教育姿勢が、今回の「インフラメンテナンス大賞」文部科学省特別賞の受賞につながったと言えます。応募案件は「教育現場とインフラメンテナンスの連携による技術力向上」というタイトル。実は、玉川学園にとって、同賞への応募自体が初めてでしたが、馴染みの薄そうなインフラと教育という部分をきっちりと結びつけた上での活動を、35年あまり続けてきたことが評価されたようです。
<写真:表彰状>


「応募する際に、3つの項目があったのです。1番目と3番目はどちらかというと技術的な面が多くて、こういう製品や技術開発をしましたという部分が大きくものをいうのですが、2番目は『メンテナンスを支える活動部門』というもので、そこにエントリーをさせていただきました。まさにわれわれが行ってきた活動に合致するよね、と私たち総務部としても意見が一致しました。逆にいうと、こういう活動自体が、特別賞に推薦してくださった文部科学省や、主催の国土交通省の中でも珍しかったのではないかと思いますね」(北川次長)


 それだけではありません。製品づくりや技術開発は当然のように資金を伴うものですが、玉川学園が受賞したこの活動には”お金がかかっていない”のです。


 「もちろん、日々のメンテナンスなどに当然お金はかかるわけですが、教育との連携という意味においては、特別な費用は発生していません。今後、大学などの教育部門との連携によって、研究技術者の意識向上などを図れるというところで応募しましたので」(同)
<写真:学生/生徒の見学風景の写真>

実際に管理を行うSECも、教育との連携に対する意識は高いものがあります。


「見に来てくれる子どもや学生さんに、やはり興味を持ってもらいたいという思いがあります。以前であれば、電気室の中の部分は見られませんでしたが、大学2号館から高圧設備が移築されたことで実際に間近で見られるようになって、そこにもすごく興味を持ってもらえていますね。まだ、今のところはこちらが実演しているのを見学してもらう形ですが、今後は子どもたちにも触ってもらえる機会なども、時間があれば作って見たら良いかと考えています。
 今は技術者不足が深刻になっています。それはこうしたメンテナンスの業界でも同様で人がなかなか入ってこない状況でもあります。実際のところ、最近の建物は電気室が『開放型』になっておらず内部が見えない『キュービクル型』の設備しか見たことのない弊社の若い従業員も多くいます。そのため高圧機器のつながりや動作が見られる『開放型』の設備で研修できることはとても分かり易く、見学に来る子どもたちにも少しでも興味を持ってもらえるとうれしいですね」

 一度の見学に数十人単位などでの見学者があるため、限られた時間の中では、全員が全員、操作するというわけにはいきませんが、家庭などで目にできる設備と違う部分で、興味深そうに見学している子どもたちも多いそうです。
 また、実際に管理する側のSECにとっても、この高圧受電設備(研修施設)は貴重な研修ができる設備としても考えられているといいます。
<写真:研修用高圧受電設備>


 「ご家庭のブレーカはとても小さいと思いますが、高圧設備になるとブレーカは一つだけでなくて、それを作動させるために複数の機器が必要と説明すると、興味を持って見ている生徒や学生は多いですね。実際にSECさんでも、常駐されている7人のかたは、みなさん資格を持っていますが、事故が起きた際に実際に操作し対応したことがある人も少ないのが実情です。不慮の事故が起きた際の処置の仕方を知り、きちんとした手順を踏み自信を持って復電操作を行なえるようにしないと、学園のインフラが停止してしまい、学校全体として安全・安心に対する不安定要素となってしまいます。なので、SECさんにとっても、こちらの研修設備を有効に活用していただき技術力をあげてもらいたいと思っております。また、学園に常駐されているかただけでなく、社員のかた全体としても利用していただけるようにしています」(岩内課長補佐)
<写真:高橋さん>


SECの高橋課長によると、半年に1回程度、高圧受電設備の講習会として、電気の単結図面を使い、「事故点を想定し決めた上でどのように対処をするか」という点について、実際に単結図面を確認しながら高圧絶縁抵抗測定器をどこに当てるか、もしくは家庭でいうブレーカに当たるVCB(遮断機)やDS(断路器)をどこで操作するかといった実地研修を行っています。普段使われている現役の設備だと、実際に停電させることが出来ないため、実際に使われていた設備(研修施設)の高圧機器を操作できることはとても貴重だということです。
<写真:設備点検作業の準備>


 学ぶ側の生徒や学生にとっても、そして従事するメンテナンス会社の従業員にとっても、実に貴重といえる玉川学園内の高圧受電設備研修施設。インフラメンテナンス大賞の概要に挙げられているように、「教育現場と企業が連携し技術力向上を図る取り組み」が、玉川学園を特色づける一つの教育として、今後も連綿と続けられていきそうです。
<写真:本件の関係者>


<関連情報>
■文部科学省:第8回インフラメンテナンス大賞の受賞者の決定!

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