において目指すべき方向性として「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化を掲げ、グループの各事業・サービスがテクノロジー活用の取り組みを加速させています。
今回は、
や採用・経営支援を手がけるパーソルキャリアでCTO(Chief Technology Officer)を務める岡本にインタビュー。これまでの経験やCTOとして担うミッション、そしてパーソルキャリアやパーソルグループにおけるテクノロジー活用の現在地と展望について、詳しく話を聞きました。
パーソルホールディングスが運営するWebメディア「
」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。
テクノロジー活用で生産性を高め、顧客とのタッチポイントをより良くできる―“可能性”と“勝ち筋”を見据えてHR業界へ
―まずは、岡本さんのこれまでの経歴から聞かせてください。
通信事業を手がける会社で、エンジニアとしてキャリアをスタートさせました。25歳の頃にオーストラリアに渡り、自らプロダクトを開発し会社を設立する経験を経て、日本に帰国。その後は、さまざまな業界でCTOとしてベンチャーの立ち上げやグロースに携わったほか、複数社の技術顧問なども経験し、2020年7月にパーソルキャリアに入社しました。2022年4月にCTOに就任し、現在に至ります。
―海外での経験にはじまり、さまざまな業界においてCTOや技術顧問を歴任されてきた岡本さんが、新たな活躍の場としてHR業界を選んだのはなぜですか?
日本ならではのレガシーな商流、商慣習があるところにこそ、日本の勝ち筋があると考えており、HR業界はまさにそれに当てはまるものだと思えました。
入社して5年が経とうとする今でもレガシーなオペレーションはまだ垣間見られますし、テクノロジー活用が着実に進展しているものの「まだまだ生産性を高められる」「顧客とのタッチポイントをさらに良くして満足度を高めていける」という余地と可能性をたくさん感じますね。まだこうしたテクノロジー活用による顧客満足度の向上をどの会社も達成できていない、可能性と勝ち筋が見える業界であったことが、当時の私には魅力に映りました。
―HR業界の中でもパーソルキャリアを選んだ決め手とはどのようなものでしたか?
テクノロジー活用の推進・浸透の途上にある組織だからこそ、さまざまな手法を考えて自分が会社を変えていけるはずだと、挑戦する意義を感じました。
そして改革に挑戦するにあたって、グループに幅広い領域のプロダクトやサービスがあり豊富なデータがあること、新手法・新領域に進出するきっかけとなる組織もあること、自分の強みであるデータベースエンジニアとしてのスキルを活かせること、なども後押しになると思えたのです。
実は初めからHR業界を見ていたわけではありませんでしたが、偶然お会いした経営層の方々が熱心に口説いてくれて、対話を重ねる中でこうした業界や組織の魅力を感じられたことが入社の決め手になりました。
―自覚しているミッションや、パーソルキャリアでのこれまでの経験についても教えてください。
私たちのビジネスを伸長させるのに不可欠と言えるテクノロジーを活用し、圧倒的な生産性を実現する「テクノロジードリブンの人材サービス企業」を目指すこと、そしてそのためにエンジニアとしての技術やテクノロジー責任者としての目線だけでなく、管理会計まで理解した経営者の目線をも持って、戦略を立て仲間を巻き込んでいくことが私の役割だと自覚しています。
入社以来、内製比率を高めることを目標として取り組み、当初は数十人だった内製エンジニア組織を700人規模にまで育ててきました。またベトナムを拠点とする子会社(PERSOL CAREER TECH STUDIO VIETNAM COMPANY LIMITED)の設立にも携わり、こちらも150人ほどの組織規模までの成長を見据えて人材育成や組織づくりに取り組んでいます。
顧客・利用者・オペレーターの三者にテクノロジー活用による“心地よさ”を届ける
―パーソルグループでは中期経営計画2026で「テクノロジードリブンの人材サービス企業への進化」を掲げています。岡本さんはこの “テクノロジードリブン” とはどのようなものだと捉えていますか?
「すごく便利!」「楽になった」というフィーリングが大切であり、テクノロジー活用を通じて顧客・利用者・オペレーター(従業員)の三者にこのフィーリング、“心地よさ” を提供できている状態こそがテクノロジードリブンだと考えています。
率直な言葉に言い換えれば、いかにテクノロジーで楽な状態や仕組みを実現して「このサービスから離れられない」「もう元の不便な状態に戻りたくない」と思ってもらえるかがポイントになると思っています。
―その実現に向け、テクノロジー活用の現在地としてはいかがですか?
パーソルキャリアとして、私たちが手がける
においてAIやデータを活用していく方針へ舵を切り、数年後にこの方針を実現できる見通しが立ってきたという手応えを感じています。
具体的には、社内版ChatGPT(名称:ChatPCA)の普及率が70%超(2025年1月実績) にまで高まっているほか、サービスを提供する中で蓄積された独自データを活用する方法として、独自LLM(大規模言語モデル)の開発なども進んでいます。
―現在パーソルキャリアでテクノロジー活用が着実に推進されている要因を、どのように分析していますか?
やはり、経営陣が非常に高いフレキシビリティを持っていることが大きいのではないでしょうか。「テクノロジードリブンの人材サービス企業への進化」の実現に向けて、一人ひとりがテクノロジーについてとても熱心に勉強している姿勢が印象的です。
そうした姿勢から、「こうした方がいいのでは」という提案も柔軟に受け入れてもらえること、理解を示してもらえることが多く、コンプライアンスやセキュリティの領域でも「情報を守るためにここまでは線を引く必要があるけれど、ここだけオープン化したら実現できますか?」と目線を合わせやすいことも、取り組みを前進させているのだと思います。
また個人的には、「未来を見据えて、限られたリソースの中でとにかく今やる」という姿勢が求められるこの立場に、かつてオーストラリアでお金がない中なんとかプロダクトをつくり、売り歩いて会社を軌道に乗せるまでに至った経験が活きているような感覚もありますね(笑)。
―反対に、パーソルキャリア、ひいてはパーソルグループのテクノロジー活用において、課題だと思うのはどういった点ですか?
経営陣のテクノロジー活用に対する理解が高い点や、会社として大きな力を注いではいても、やはり意思決定のスピードはまだパーソルキャリアもパーソルホールディングスも決して速いとは言えません。このままでは競合他社に差をつけられてしまうのではないかという危機感は、正直あります。
まずはオペレーション設計の中にAIを組み込んで活用した実績を、スピード感を持ってつくっていくことが喫緊の課題であり、パーソルキャリアでの成功事例をパーソルテンプスタッフをはじめ国内外のグループ各社に展開し、底上げを図りたいと考えています。
また、いかに5年先、10年先のAsia Pacific SBU*連携を見据えてオペレーションを設計するかも、今後考えるべき課題になると思っています。
他に課題としてよく言及されるのは「技術負債」でしょうか。解消に向けて取り組み続けてはいるものの、完全になくすことはできませんし、開発を続ける中で負債は今後も新たに生まれていくものです。
そのことをふまえ、検索性・可読性の担保されたドキュメントを整備し、新たにジョインした方がいち早く情報に辿り着きやすい仕組みや、はやくパフォーマンスを発揮できるような環境をつくることも大切な課題の一つとして認識しています。現場の皆さんにしっかりと裁量や権限を与えることも含めて、一人ひとりの活躍を後押ししていくことが、結果新たに生まれる技術負債を減らすことに繋がっていくはずです。
*SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位
「一人ひとりのキャリアや人生をどれだけ輝かせられるか」―圧倒的に難しく、複雑で、でも可能性に満ちた問いに挑戦する
―HR業界におけるテクノロジー活用にどのような可能性を感じますか? またパーソルキャリア、パーソルグループとして今後どのようなことに挑戦していきたいですか?未来に向けた岡本さんの思いを聞かせてください。
まず現在パーソルキャリアとして人材紹介事業におけるAIの活用を進めていますが、“AIによるマッチング” と “キャリアアドバイザーによるマッチング” という二つのプラットフォームを、どちらも用意できている状態をつくることが理想だと考えています。そのいずれも快適で心地よい状態に整えておき、スピード感をとりたい方は前者を、じっくり対話して考えたい方は後者を、とそれぞれが自分に合った選択肢をとることができる世界観を目指していきたいですね。
もう少し広く長期的な視点では、「自分たちの力で人のキャリアや人生をどれだけ輝かせられるか」という問いに向き合い、テクノロジー活用を通じて「ああよかった、私の人生」と多くの人に言ってもらえるような「テクノロジードリブンの人材サービス企業」を目指したいと思っています。
我々が扱うのは、人のスキルやキャリアパス、ひいては人生という無形資産ですから、この問いはとても複雑で圧倒的な難しさがありますが、その一方で無限の可能性があり、まだ誰もなし得ていないという意味で非常にやりがいのあるテーマだと感じます。人は悩むもので、往々にして誤った選択をするものである。その前提に立って、キャリアパスを描く過程をテクノロジーを活用して、いかにスムーズに、スピーディーに、そしてより正しい判断への支援ができるかを考えていきたいところです。
パーソルキャリアにも、他のグループ会社にも取り組むべき課題やハードルはさまざまあると思いますが、テクノロジー活用に意欲的なメンバーがたくさんジョインしてくれているので、着実に変化が生まれています。今後も、経営層とメンバーとでしっかりと目線や言葉の定義を合わせて、現場の課題感を改善するという取り組みをアジリティ高く進めていければと思います。
―岡本さん個人としての展望や目指す像はありますか?
私は、この先もずっとテクノロジーと関わりながらはたらき続けていくだろうと思います。もっとさまざまな経験をして、パーソルキャリアのCTOという役割にとどまらず、もっと幅広いところで求められて価値を発揮し続けていける人でありたいですね。
※2025年2月時点の情報です。
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