空前の売り手市場である新卒採用において、企業にとっても学生にとっても大事なイベントの一つが内定式です。学生が複数の内定を保持するのが当たり前の中、複数内定を保持する半数以上の学生が「内定式後に1社に絞る意向」との衝撃的な調査結果もあります。
そんな中、横浜のシステムコンサルティング企業であるシステムアイでは、24年卒採用から「おもしろ内定式」を実施し好評を得ています。
今回は新卒採用の担当者である金さんに、どんな狙いでどんな内定式を行ったのかをインタビューしました。
10月4日に行われた25卒向け内定式では、リアル脱出ゲームを行ったそうですね。
金:はい、システムアイでは昨年から「おもしろ内定式」を実施して、昨年は会場を自分たちで探すミステリー内定式を、今年はリアル脱出ゲームを行いました。
ゲームを交えた内容にすると同期間の絆も深まりますし、従来の堅苦しい内定式と違って楽しみながら参加できるので、内定者から非常に好評をいただいています。
どういう経緯で「おもしろ内定式」が始まったのでしょうか
金:3年前までは当社も伝統式な内定式を行なっていました。しかし内定式の目的が果たせてないのでは?という課題が人事部内であったのです。ただ座って役員の話を聞いてもらったり、内定証書を渡すだけでは、彼ら彼女らに対する私たちの熱量を伝えきれないのではないかと。
内定式の目的とは何ですか?
金:それまで学生だった内定者にとって、翌4月から企業で働くということは、大きな不安やプレッシャーが伴うものだと思います。
「先輩社員と仲良くやれるかな?」「オフィスはどんな雰囲気なんだろう」といった環境面の不安もあれば、「業務をきちんとこなせるか」「研修についていけるかな」といった能力面の不安もあると思います。せっかく入社前に当社に集まってもらえるのであれば、その不安を一つでも解消するものであるべきだと考えました。
内定者のマインドが「入社が不安だな」から「入社が楽しみだな」に変わることが内定式を行う意義だと考えています。
↑UVライトやアイロンなど道具を使って謎を解く様子
内定式の後も、BBQに先輩との交流会と内容が盛りだくさんだったとか。
金:はい、まず内定式では脱出ゲームのほか、事前に送付してもらった「自分を最も表している写真」を使った自己紹介を行いました。
その後は役員や人事部とBBQを行ったほか、今年入社した一期上の先輩社員たちが主導の二次会も行われました。
内定者に宿泊施設を用意していたとか?
金:すぐ帰らないといけない方も居たので全員ではないですが、それ以外の方にはホテルを用意しました。内定者の過半数は地方出身者で、首都圏出身者の方に比べ交流の機会が狭まってしまうのが嫌でした。東京在住者は二次会に行けて、地方在住者は終電の問題で行けないという不平等さを解決したかったんです。
結果、内定者の方達からは大変好評でした。交流会なのでお酒や雰囲気の力を借りながらも、内定者たちが徐々に距離を縮め、最終的には自身のことや価値観を語り合う姿を見ることができました。
【内定式で行ったコンテンツ】
1. 脱出ゲーム
2.「自分を最も表している写真」を使った自己紹介
3. 内定証書授与
4. 役員や人事部とのBBQ
5. 一期上の先輩による歓迎会
昨年のミステリー内定式に参加した、24卒生からはどの様な声があがっていますか?
金:24卒生からはかなり前向きな感想をもらえました。
「10社ほど内定をもらっていた状況でしたが、システムアイの内定式はワクワクして面白く、この会社を選んでよかったと強く思った」
「参加前は、偉い人の話をただ聞く内定式は真っ平ごめんだと思っていたが、実際参加したらフランクで働きやすそうで安心した」
こういった声は励みになりますし、内定者に魅力づけが出来ているという点で社内でも高く評価されています。
スーツ禁止&髪型自由で「自分らしい」を実現できる内定式へ
今回の内定式から「スーツ禁止」になったそうですが、どんな狙いがあったのでしょうか?
金:システムアイでは「個性」を重要視しており、社長もライブTシャツにキャップで出勤するスタイルです。またバンドマン採用、シニア・インターンなど、多様性を尊重した経営を心がけおり、内定式においても「自分らしさ」を表現できる場にしたいと思ったのがその理由です。実は今年から一部私服での採用面接も開始しており、そちらにおいても学生から良い反応をもらっています。
髪の色も自由でしたね!
金:はい、髪の毛を緑色に染めている内定者もいて、まさに「自分らしさ」が表現された内定式だったのではないかと思います。
内定者も多国籍で、より「多様性」が体現されているように感じました。
金:10名中4名が外国籍と、本当に多様な内定者が集まってくれました。当社は既存の社員も日本だけでなく海外23カ国から集まってくれており、色んな文化や価値観が交わっている職場になっています。
謎を考えたりといった準備等は大変ではなかったですか?
金:謎自体はインターネットで調べると、仕掛けや考え方のコツみたいなものが載っていて思ったより苦戦せず考えることができました。狙った仕掛けが起きるか実際に試してみたりもして、楽しみながら準備できましたね。
他に工夫した点でいうと、なるべくオープンなスペースで行うことで、社員と内定者がお互いの目に触れるようにしました。日常的に業務をしている姿を目にしてもらうことで、自由な働き方やそれに伴う自律性・責任を感じ取ってもらう狙いです。
内定式や採用における今後の展望などありますか?
金:26卒新卒採用では、謂わゆるインターンシップを初めて開催予定です。内容は「キャリア教育」に力を入れてみようと考えています。現役のキャリアコンサルタントが参加者一人ひとりに専属で付き、当社で30年間蓄積された、ITエンジニア育成のノウハウやキャリア観を伝えることで、参加者が自身のキャリアについて向き合い、成長できる場にしたいと考えています。
内定式においては、より「自分らしさ」を体現できるイベントにするにはどうしたらいいか、今後も試行錯誤を続けていきたいです。