アメリカじゃけっこう見かける自動運転タクシーの実証実験車! 日本とは違う「無人化」の目的とは

2024.11.03 07:00
この記事をまとめると
■ラスベガスでは「自動運転タクシー」の実証実験車両が走行していた
■自動運転タクシーといっても「安全運転手」と呼ばれる人間が車内にいる
■日本での自動運転タクシーは「事業者支援」の意味合いが大きい
アメリカのいたるところで見かける自動運転タクシー
  ラスベガスの街なかを歩いていると、仰々しい装置がつけられたトヨタのクロスオーバーSUVである「トヨタ・ハイランダー」が走っていた。ボディにカラフルな模様が入っているところからも、この車両が「自動運転タクシー」であることがすぐわかった。
  筆者が見かけたのは、ラスベガスで2019年より実証実験を行っている「ZOOX」というアマゾンの子会社の自動運転タクシー(ラスベガスでは複数の企業が実証実験に取り組んでいるとのこと)。
  2020年と2021年は新型コロナウイルス感染拡大で渡航できなかったものの、それ以外は毎年ラスベガスを訪れている。これまでと同様の頻度で街なかを歩いていたのだが、今回ほど実証実験車両を見かけることはなかった。実証実験車両が増えたのか、それともいままでは筆者の視界に入っていなかっただけなのだろうか。
  自動運転タクシーといっても完全無人運転というわけではなく、運転席には緊急時に備えて、日本語訳すると「安全運転手」と呼ばれる人間が座っている。外から見ていると、タクシーにしては交差点を曲がるときの様子などがやや荒っぽい運転をしているようにも見えるが、これがアメリカ流のプログラムというものなのだろうか。
  なお、ZOOXはすでに運転席をもたない、完全無人となる自動運転タクシー車両の公道テストの許可を得ているとの報道がある。今後、ラスベガスへ行くと既存車ベースではない専用車両での自動運転タクシーを見かけることになりそうだ。
アメリカの自動運転タクシーはIT企業が主導する
  ラスベガスを数日グルグルまわり、ロサンゼルス地域に戻ってきて、空港近くのいつものホテルにチェックインした。そのあと近所を散歩していると、筆者が初めてロサンゼルス地域を訪れた35年前からあった自動車修理工場跡地にBEV(バッテリー電気自動車)の充電ステーションができていた。
  そこはパブリックなものではく、契約者限定との看板があった。散歩からホテルへ戻るときに再び充電ステーションを訪れると、ジャガー Iペース(BEV)ベースの自動運転タクシーが多数停車して充電していた。
  車両にあった「Waymo」というロゴを頼りに調べてみると、グーグル系の自動運転タクシーサービスということがわかった。Waymoは2024年3月からロサンゼルス地域でサービスの提供をスタートさせている。ただし、車両をみると完全無人というわけではなく、運転席にはやはり「安全運転手」と思われるスタッフが乗っていた。
  前出の充電ステーションも単に充電器が置いてあるだけではなく、安全運転手の休憩室のようなものも用意されていた。さすがに広大なロサンゼルス地区全体をカバーすることはいまのところ行わず、サービスエリアはまだ限定されているとのことであった。
  日本でニュースを見ていると、アメリカでの自動運転タクシーサービスでは、事故などのトラブルが頻発しているという話題が目立っている。しかし、全米単位では、実証実験開始や正式サービス開始などは拡大の一途を辿っている。
  公道での実証実験についても、日本のように「失敗は許されない」というような価値観ではなく、「ある程度のリスクは想定内」という価値観の違いがあるようだが、中国でも自動運転タクシーの運行は急速に進んでいるので、その意味でも実証実験など、普及が足踏みしないのかもしれない。アメリカではアマゾンやグーグルなど、自動運転タクシーの開発を進める企業が子会社などを立ち上げ、直接実証実験や実験的ともいえる正式運行を行っているところも注目できる。
  日本では「日本式ライドシェア」のように、自動運転タクシーについても既存のタクシー事業者を絡ませて自動運転タクシー正式導入へ向けたプロセスで進められることになるだろう。
  日本では自動運転タクシーやバスというと、「働き手不足対策」などとなるが、アメリカではタクシー業界とは関係ない、いまをときめくIT系企業などが「こんな未来になれば便利だろう」というワクワク感というものが開発の背景に強くあるように思える(見えてしまう)。
  日本とは異なり、タクシーにせよ、ライドシェアにせよ、「有人(運転士)の公共移動手段ではなんらかの犯罪に巻き込まれるかも」というリスクがかなり高いのも事実で、そのリスクを排除してより使いやすい移動手段にしたいという思いもあるのは間違いない。日本でも働き手不足対策は利用者の利便性維持のためともとれるが、主語としては「事業者支援」というものが優先しているようで、その意味では筆者個人は違和感を覚えている。

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