かつては日本が輝いていたころは3扉だった! いま2扉が主流の「路線バス」は利用者も運転士も不足して今後は1扉がメインになる可能性もある

2024.10.04 06:20
この記事をまとめると
■路線バスは一般的に前扉と中扉の「2ドア」が多いが昔は「3扉車」が配備されていた
■地方都市では中扉を使用せずに前扉を「出入口」として使用している
■ドアの配置や使い方によって動線や床の高さが課題になる
バスの扉も時代とともに進化
  一般的な市内路線バスといえば、前扉と中扉のある「2ドア」が一般的。バブル経済のころには、都市化がどんどん郊外に広がり、日本経済もいまよりも断然元気で、少子高齢化もいまほど社会問題化しておらず、朝夕の通勤時間帯の路線バスの混雑がハンパではないところが続出した。そのため、合計で3扉車を用意し、降車用として2扉を使用し、駅などの終点での効率的な降車をめざした。そういった背景もあり、3扉車は日本がいまよりも輝いていたころを象徴しているバスで、一部では車両保存する動きも出てきている。
  日本では「観光バス」とも呼ばれる貸切バス車両では前扉ひとつのみで、運転士もその扉から乗降するのだが、新興国のバスでは、運転士専用の乗降ドアがあるのが当たり前となっている。日本でのトヨタ・コースターや三菱ローザなど、マイクロバスも同じく運転士用の乗降ドアを備えている。
  ところが、ここのところ地方都市などで目立つのだが、前扉と中扉があるのに前扉に「出入口」といった案内を表示し、混雑時以外は中扉を使用しないといった路線が増えてきている。理由としては、朝夕の通勤時間帯を除けば極端に利用者が少ないということもあり、より確実に乗降の安全確認もできるとのことから、いまは全国的に「1ドア運行」というものが目立ってきているようである。
  少し前に、某所の路線バスで中扉を開けてまま運行していたというのがニュースとなっていたが、これも普段は前扉を乗降兼用として使っていたことも原因としては大きいとの話も聞いている。
  1ドア車両といえば遠い昔、まだワンマンではなく車掌さんが乗っていたツーマン運行のころを思い出してしまう。とはいっても、全体では利用者が少ないとはいえ、通勤・通学時間帯には結構な需要が見込める状況では、1ドア車両のみを運行するわけにはいかない(そもそも新車で入れ換えのできない事業者が多いので2ドアの中古車というのは続きそう)。
  ご存じのとおり、いまどきの路線バスは「ノンステップ低床」タイプとなっているが、それでも地上からバス車両の床までは結構な段差がある。筆者もかなり前であるが、足を怪我して3カ月ほど松葉杖のお世話になっていたことがあったのだが、そのときはノンステップ低床といってもかなり乗降に苦労したことをいまも覚えている。
  現状では、たとえば都バスのように前扉乗車したときに運賃を払うタイプと、中扉から乗車して交通系ICカードをタップもしくは整理券を受け取り、降車時に前扉で精算するタイプが存在する。前者は「均一料金区間」、たとえば都バスならば、東京23区内の一般系統での大人運賃は210円で均一となっている。
「日本国内での、とくに均一バス運賃は諸外国に比べても安いのではないかといわれています。そこで、中扉から乗車し、利用区間に応じて運賃が変わっていく(上がっていく)方式へそろそろ全面移行すべきではないかとの話も出てきています」とは事情通。
扉の問題に付きまとうのは車内の段差
  ただし、中扉乗車ではある問題も指摘されている。それは、バス停に停車したときの車内における乗車する人と降車する人の「動線の交錯」である。混雑する場合など、運転士によっては自己判断で、降車する人がある程度いなくなってから中扉を開けるケースもあるが、降車扉となる前扉と乗車扉となる中扉を同時に開けると、車内後部から降車しようとする人と、中扉から乗車しようとしてくる人とが車内で交錯してしまうのである。
  そのためか、過去には同じ2ドアバスでも前扉(降車)のほか、車体最後部に「後ろ扉(乗車)」をもつタイプもあった。しかし、これは低床タイプではなく数段の階段をあがる必要のある高床タイプのバスであった。
  現状の低床タイプの場合は、乗降では高床タイプより楽になったものの、中扉を挟んで前部と後部で床面に段差ができており、現状の低床タイプでは後ろ扉の設置は現実的なものではなくなってきている。
  ところが、いすゞのBEV(バッテリー電気自動車)路線バスとなる「エルガEV」では、低床でありながら完全なフルフラットフロアを実現しているのである。
「理論的には後ろ扉車両というものは可能です。バリアフリーの観点ではリヤタイヤのホイールハウスが邪魔をしますので、中扉を車いす乗降専用に設置した新世代の3ドアバスにするのが理想的ともいえますね」(事情通)
  しかし、それだとただでさえ少ないように見える客席をさらに減らすことになりかねない。乗客数の少ない地方の事業者では、車内転倒事故防止の観点や利用距離数(バス停とバス停の間が長かったりそもそも路線距離が長い)から、現状でも都市部運行のバスより客席数は多めのレイアウトになっている。
  日本の路線バスの現状は減り続ける利用者、さらに深刻な働き手不足が慢性的となっており、現状維持もままならない状況となっている。そのなかで、現実的な変化としては、とくに東日本で顕著ともいわれているが、大型車両から中型車両への変更があるようだ。
  中型路線バスでは2枚ドアがいまは主流だが、今後も利用者数の減少が続けば、中型だけではなく大型すら1ドア路線バスの運行というものの本格的導入も進むかもしれない。そもそも物流センターと最寄り駅間の従業員の送迎需要もあるのだが、1ドア路線バスの本格化もにらみ、海外BEVバスメーカーでは、1ドア車両や中型(それに近い)車両など、日本市場に合わせたBEVバスも用意しようとしているように見える。

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