ホイールの剛性は高ければいい……わけでもなかった!
街乗りレベルで実感できる『実効空力』で既成概念を覆したモデューロを展開するホンダアクセスが、またも興味深いアイディアを形にした。それがリム部とスポーク部の剛性バランスを最適化した、『しなるホイール』だ。ヴェゼルに設定されたMS-050は、ホイールもサスペンションの一部、という設計思想のもとに、ホイールをしならせることでタイヤの接地面圧を高め、タイヤのパフォーマンスを使い切ると説明されている。
しかし、クルマ好きの間では、「アルミホイールは軽量で高剛性であるほうがいい」という定説がある。それをあえて疑ったアプローチをしたホンダアクセスの狙いとはどこにあるのか。また、具体的に走りはどのように変わるのか。モデューロ開発アドバイザーの土屋圭市さんに説明していただいた。
そもそも、『しなるホイール』というコンセプトの出発点はどこにあったのだろうか。
「最初は2015年にS660用のモデューロアイテムを開発したときだね。1台作り上げていくなかで、もう少し走りの質感が上がらないかな、っていうところから、ホイールをバネみたいにしならせたらどうだろう? ってホンダアクセスの開発者がいい出してさ。やってみたら、これがけっこう乗り味が変わるってわかった。そこで、クルマの方向性まで大きく変わったんだよね。そして、その後モデューロXシリーズにもその技術を入れていって、開発レベルを上げていったよね。今ではアルミホイールが乗り味を大きく左右するくらいにまで進化しているんだよ」。
S660用のモデューロアイテムの開発では、さまざまな試作ホイールがテストされたが、ほんのわずかなリム部とスポーク部の剛性バランスの違いでも、走りや乗り心地が明らかに変わったという。そして、剛性は高いほど優れているとは限らないこともみえてきた。
「一般的にホイールは剛性が高いほうがいいって思われてるし、いままではとにかく剛性を上げることばかり考えられてきたよね。でも、そうするとちょっとしたギャップでもショックが唐突に出るし、振動がステアリングにモロ来るんだよ。かといって剛性を落としすぎると、乗り心地はよくなるけどハンドリングのレスポンスが悪くなって、気もちいい走りは犠牲になっちゃう。大事なのはバランスだよね。クルマが本来持ってるボディとシャシー剛性と周波数が合わなくちゃダメ。そういうことをキッチリ突き詰めていかないと、ワンランク上の乗り味にできないんだよね。だから、完全に車種専用になるんだよ」。
その開発は、リム部とスポーク部の剛性バランスを微妙に変えた複数の試作品を用意し、実走テストを繰り返す。まずはホンダの鷹栖プルービンググラウンドですべての仕様を試し、選抜されたものはモデューロの重要なテストコースである群サイこと群馬サイクルスポーツセンターにもち込まれる。汎用品ではないため、それが車種ごとに行われ、費やされる費用も時間も、そして労力も膨大だ。それでも、納得いく結果が得られないこともあったのだとか。
技術者の意地とプライドをかけて開発!
「肉抜きやリムの厚みを部分的にコンマ1mm以下の単位で変更したホイールを何セットもワンオフで作っちゃうんだからね。それで、1年もかけて開発するんだよ。ホイールって、そうやって作り込んでも大きな利益が見込めるアイテムじゃないから、普通はそこまでやらないかもしれない。でもモデューロの開発陣には、このクルマがもっとよくなるんじゃないか? っていうこだわりと、こういうことができるんだって証明したいホンダの技術者の意地があるから、やっちゃうんだよね」。
「しかも、必ずしも純正ホイールよりしならせればいいというわけじゃないのが難しいところで、純正のほうがバランスがいい場合もあったりするんだよ。だから、車種によってはさんざんやったのにボツ、なんてこともあったね。明らかによくなければ世に出さない、買ってくれた人に納得してもらいたい、っていう熱い思いがこもってるのはいいんだけど、採算が合うのか、オレが心配しちゃうよ、ホント」。
そうした厳しい開発テストをクリアし、商品化に漕ぎ着けたヴェゼル用の18インチアルミホイール「MS-050」。実際に標準装備されているアルミホイールが装着されたヴェゼルとMS-050が装着されているヴェゼルを乗り比べてみて、走行性能にはどのような違いがみられたのか。
「S字やワインディングでではハンドリングに違いが出るね。群サイをヴェゼルで限界走行したときには、ターンインして、クリップについて、コーナーを抜けたら、あれ? タイヤ1本分内側を走ってた、っていう感じ。あとは、クルマのボディやシャシー剛性にマッチするしなりをホイールに与えているから、ガチガチに踏ん張るんじゃなくて、乗り味がしなやかになるね」。
しかも、その差は街乗りでのステアリングフィールや乗り心地に十分に表れている。アスファルトのざらつきや継ぎ目、段差舗装などによる振動や突き上げの不快感が、純正ホイール装着車より低減しているのをはっきりと体感できるのだ。
「ワインディングに行って飛ばさなくたって、こうして街なかを走っているだけでも十分この乗り味の違いは分かってもらえるはずだよ。ステアリングフィールもドッシリしていることがわかるんじゃないかな」。
「路面のゴツゴツの吸収はぜんぜん違うね。最初に乗ったとき、オレはタイヤ替えたのかと思ったくらいだもん。それくらい、入力は穏やかになる。ホイールひとつで、走りの質感がこれだけ上がるんだからビックリだよ。同乗者にも優しいよね」。
土屋さんも太鼓判を押す、MS-050がもたらす乗り味。それを自身で確かめたい、という読者に朗報だ。来たる10月27日、富士スピードウェイで開催される「オートメッセリアル×ジャパントラックショーin 富士スピードウェイ2024」のホンダアクセスブースでは、MS-050装着車と純正ホイール装着車の比較試乗会を開催予定。抽選で選ばれた人はホンダアクセスの開発者と同乗でアルミホイールの比較試乗が体験できる。
「ホイールがしなるなんてどうなの? って思ってる人は多いだろうし、ちょっと乗ったくらいで違いは分からないでしょ? って疑ってる人もいるんじゃない? でも、乗り比べればこの違いははっきりわかるよ。オレとモデューロ開発陣の努力の結晶を、ぜひとも体感してほしいね。そうそう、オートメッセリアル×ジャパントラックショーin 富士スピードウェイ2024では、オレのトークショーもあるから、そちらもお見逃しなく!」。
10月27日 富士スピードウェイで 「しなるホイール」を比較体感できるチャンス!
交通タイムス社が富士スピードウェイを貸し切って開催するオートメッセリアル×ジャパントラックショーin 富士スピードウェイ2024のホンダアクセスブースにて、今回紹介したしなるホイール「MS-050」と、ノーマルホイールの比較試乗会を開催する。ホンダアクセスブースの場所は富士スピードウェイのAパドックで、11:00から行われるホンダアクセスブース内でのトークショーの最後にアルミホイールの比較試乗者を決める抽選会を実施。
同ブースでは開発に携わった土屋圭市さんのトークショーも開催! アルミホイール「MS-050」を試乗してみたい人はホンダアクセスのトークショーに集合!
【オートメッセリアル×ジャパントラックショーin 富士スピードウェイ2024】 開催概要
開催日:2024年10月27日(日)9:00~16:00(一部コンテンツは17:00まで) 駐車料金:普通自動車3000円/二輪車が1000円/大型車が4000円 入場:無料 会場:富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町中日向694) 主催:AMR×JTS2024実行委員会 後援:株式会社交通タイムス社、一般社団法人国際物流総合研究所 協力:富士スピードウェイ株式会社、株式会社アスプ、専門学校 中央メカニック自動車大学校 来場者数:1万5000人(見込み)