コネクターを繋ぐだけである程度の検査が終わる「OBD車検」! 一見楽ちんな制度だが「バス&トラック」事業者の「経済的負担」になる可能性もあるってどういうこと?

2024.09.29 20:00
この記事をまとめると
■2024年10月から車検制度に「OBD検査」が本格導入される
■「OBD検査」導入の背景には自動運転技術の進歩などがある
■トラック業界に与える影響について解説
本格的なOBD車検の運用は2024年10月から
  いま、自動車整備業界では、車検の新たな検査導入でその対応に追われているという。それが「OBD検査」だ。国土交通省の説明では、「自動運転技術などの電子装置に搭載された、自己診断機能である車載式故障診断装置(OBD)を利用した新たな自動車検査手法」とのこと。対象となる車両は、「国産車は令和3年(2021年)10月1日以降の新型車(フルモデルチェンジ車)、輸入車は令和4年(2022年)10月1日以降の新型車(フルモデルチェンジ車)」である。
  この検査は、すでに2021年10月から陸運局の検査場でプレ運用が開始されている。これは希望者が対象であり、検査結果は車検の合否には直接関係しない。テストでは、スキャンツール、アプリ診断、サーバーとの連携などが確認され、本番までにより精度を高めているのだ。本格的な運用は、対象車が車検時期を迎える2024年10月からである。
  この検査が導入された背景は、自動車の自動運転技術導入が進んできたことにある。衝突被害軽減ブレーキなどの自動運転技術は、交通事故の防止や被害軽減に大きな効果が期待される一方、故障したときには誤作動などが生じるため、そのような場合に大きな事故につながる可能性を否定できない。しかし、従来の検査方法や検査項目では、電子化しているそれらの装置の状況を、正確に確認するのは難しいのだ。そこで、スキャンツールを使うなどした新たな検査方法が追加されることになったのである。
  このベースになっているのが、検査名にもなっているOBD(On Board Diagnostics)だ。これは、自動車のコンピュータに設置されている自己診断機能のこと。もともと自動車は、機械が物理的に動くことで稼働する装置であったから、人の目や物理的な検査機器で状況を把握することが可能であった。しかし、燃料噴射や点火時期などが電子的にコントロールされるようになったため、それらのチェックをコンピュータで行なう必要性が出てきたのだ。この機能は、1970年ごろに海外のメーカーが最初に導入したといわれている。
専用ツール導入で運輸業界の新たな経済的負担になる可能性もある
  現在運用されているのはOBD IIで、いわばバージョン2.0にあたる。各自動車メーカーの枠を超えて、共通の接続コネクターや共通の故障コードを使用。故障発生時には、同じように警告灯を点灯させる機能を実現した。これにより、どの車両をどの整備工場に入庫させても、同じように診断することが可能になったのだ。
  トラック、バスといった営業車を扱う運輸業界でも、新たな検査に対応するべく準備を進めている。とはいえ、現実的には対象車両の確認・対象車両の車検スケジュール調整、OBD検査が可能な車検工場の確保といったところで、大きな負担にはなっていないようだ。この検査は車検工場で検査車両に専用のスキャンツールを接続し、専用サイトにつなげば自動的に結果が出るというじつにシンプルなシステムなのだ。
  具体的な検査項目は、排出ガス等発散防止装置、運転支援技術(アンチロックブレーキシステム、横滑り防止装置、自動ブレーキ、ブレーキアシストシステム、車両接近通報装置)、自動運転技術である。将来的には、車線逸脱警報装置、オートライトシステム、先進ライト、ふらつき注意喚起装置、視界情報提供装置、車両周辺障害物注意喚起装置、運転者異常時対応システムなども、対象になってくる可能性が考えられる。トラックやバスは、カメラやミリ波をセンサーとしてさまざまな先進安全装置が組み込まれているから、こういった検査でより安全な運行ができるようになるわけだ。
  多くの場合、これまでも車検前整備の段階でOBD IIによるスキャンは行なわれていたのだから、それが制度化されるとより安心感が増したことになる。ただ、車検を行なう整備工場は専用ツールなどが必要になるため、相応の初期投資が求められる。このことが車検費用のアップにつながれば、運輸事業者の新たな負担になりかねないという懸念がある。
  また、マイナンバーカードにもみられるように、新規導入されるシステムにはエラーがつきものだ。計画的に車両を運用している運輸事業者にとって、エラーによる混乱で車両運用に支障が出るのは避けたいところだ。「OBD検査」の本番まであとわずか。制度がスムースに導入されることを期待したい。

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