EVバスもEVトラックも100年前には日本で運用されていた! それでも現代まで広まらなかった理由とは?

2024.10.08 20:00
この記事をまとめると
■EVトラック・バスの歴史を振り返る
■1923年にEVトラック「タウンスター運搬車」が登場
■現在活躍している車両は拠点が近くにある小型や路線用が多い
石油の供給が安定し新たな開発は見送られるように
  電気モーターによってトラックやバスが走行した歴史は意外に古い。日本では1923年に「タウンスター運搬車」というトラックが登場している。これはトラックというより電動自転車のような位置づけ(当時の交通取り締まり区分が自転車と同じで、運転免許が不要だった)で、速度は8~19km /h、全長2424mm/全幅1187mm/全高1000mm/車重300kg/積載量187.5kgという超コンパクトな車両であった。
  バスは1930年に名古屋市内の公共交通として、実験的な営業運転が約1年間行われており、それが最初だといわれている。このバスは16人乗りの小さなものであったが、そのあとに本格的な運用が開始されたときの車両は、定員が19~40人程度で、最高速度は42~48km/h程度と、十分実用に耐える仕様であった。
  しかし、バッテリーは充電したものを交換する方式で、1回の走行距離は50km程度であったため、3時間ごとに営業所に戻っていたという。その後、川崎市など大都市でも順次運行されるようになり、1950年代ごろまで活躍していた。
  バスが実験運用を開始したころ、トラック・バス共用のシャシーが発表された。トラック仕様であれば積載量が1.25トン、バス仕様であれば定員が25人で、1回の充電で走れる距離は40~64km程度であった。その後、1940年頃にかけて積載量1トン未満、いまでいうなら軽トラックのような小型のタイプが複数開発されている。最高速度が30~40km/h程度、1回の充電で走れる距離は60km程度だったようだ。
  日本は石油を輸入に頼っているために、第2次世界大戦前後はその事情が芳しくない状況であった。このことが、EV(Electric Vehicle)のトラック・バス開発に拍車をかけていたと考えていい。しかし、「1回の充電で走れる距離が短いので、営業車として運用するのが難しい」、「バッテリーを大量に積載するために車両重量が重い」、「車両価格が高い」などといったことから、石油の供給が安定した高度成長期ごろには、新たな開発は見送られるようになっていったのだ。
環境問題の対策として実用化に本腰
  EVトラック・バスの実用化に本腰を入れるきっかけとなったのは、地球温暖化問題やリチウムイオン電池の登場である。すなわち、喫緊の課題である環境問題と、これまでネックになっていた技術的問題について、ほぼ同時期に解決の糸口が見つかったということなのだ。さらに、バッテリーでは次世代を担うとされる全個体電池開発にめどが立ったことが、開発を加速させるのではないかと期待とされている。
  5月に横浜で開かれた「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」には、多くの最新技術が展示されていた。そこにはEVトラック・バスに関するものもあり、なかでも目を引いたのが「東京R&D(アールアンドデー)」が開発を進めているEVバスだ。
  同社は1984年からEVの開発に着手し、2輪車、乗用車、商用車、レーシングカーなどのEV化に取り組んできた。近年では、国、自治体、運輸事業者などとタッグを組み、市販車などをベースにして小型バスのEV化を行うといった事業を進めている。
  EVのトラックやバスは、エネルギー効率が高いことや環境に優しいことなどが評価されているので、次世代車両として普及することは間違いない。ただ、解決の糸口は見つかっているものの、現実問題として「1回の充電で長距離走行を可能にする」、「車両重量を抑える」、「効率的な給電システムを構築」、「イニシャルコストを下げる」などがネックになったままだ。
  現在活躍しているEVトラック・バスは走行距離が短く、営業所などの拠点が近くにある小型や路線用の車両がほとんどで、大型トラックや観光バスはまだ実用化の段階にあるとはいえない。同展の自動車メーカーブースでも、EV技術だけではなく燃料電池など水素技術にも大きくスペースが割かれていた。当面は、クリーンディーゼル、水素内燃機関、燃料電池、ハイブリッドなどと共存しながら、最適解を模索していくことになるのかもしれない。

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