カーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの活用が拡大する中、バイオガス※という可燃性ガスへの注目が高まっています。バイオガスは、生物由来の資源(製材時の廃材、未利用の間伐材、家畜の排せつ物などの農業残渣(ざんさ)など)であるバイオマスを原料として、微生物の力(メタン発酵)によって発生するガスのことです。バイオガスは天然ガスと同様、メタンガスを主成分としていることから、ボイラーやガスエンジン、ガスタービンなどに利用可能なエネルギーです。これまで廃棄物として捨てられてきた未利用の資源を活用することから、廃棄物を減らすことにもつながるだけでなく、再生可能な資源であることから、エネルギー問題の解決にもつながる可能性があります。
※ご参考:
は、パナソニック設備商品の販売・施工と、内装や建築の一式工事を担う建築ソリューション事業のほかに、再生可能エネルギーなどのトータルサポートを行う環境ソリューション事業をもう一つの柱としており、同社において、10年ほど前から食品メーカーや食品スーパー向けにバイオガス発電設備の導入を進めてきた、環境特建事業部 副事業部長の野川剛史に取り組み経緯や、カーボンニュートラルへの効果について話を聞きました。
収益面でもメリットが出やすいバイオガス発電
野川はパナソニック建設エンジニアリングにおいて非住宅セグメント分野を担当し、もとは技術職だったところから営業職に転じ、工場、ビル、病院、学校、高齢者施設などの設備を中心とした改修工事のほか、太陽光発電・バイオガス発電などの再生可能エネルギーを中心としたエナジー事業にも携わってきました。バイオガス発電設備に関しては10年ほど前、あるお客様からご依頼を受けたことをきっかけに事業に携わっています。
バイオマス発電には3つの方式があり、木材などの燃焼で水を沸騰させて水蒸気でタービンを回す直接燃焼方式、木材などを高温で蒸し焼きにした際に発生するガスを燃料にタービンを回す熱分解ガス化方式、そして醗酵しやすい食品残渣や家畜糞尿を醗酵させてメタンガスを発生させ、そのメタンガスを燃料にタービンを回す生物化学的ガス化方式の3つがありますが、同社が手掛けたのはこのうちメタンガスを燃料にする方式です。
「3つの方式の中でメタン発酵バイオガスは比較的一般的です。大手プラント会社はもっと大型のプラント施設(100t規模以上)を手掛けておりますが、当社が取り組む中規模(20t未満)~小規模(5t規模)クラスのバイオガスプラントには、大手は参入されていません。中小の食品加工業界の食品残渣の処理に、お悩みになっている企業が想像以上におられる事に気づき、そこに着目をいたしました。太陽光発電設備の工事と比べて競争が少なく、設備を導入する会社にとってCO2削減だけでなく収益面でもメリットが出やすい設備であり、手掛ける価値があると感じました」と野川。
パナソニック建設エンジニアリング㈱ 環境特建事業部 副事業部長 野川剛史
食品加工会社や食品スーパーなどをターゲットに
設備導入のターゲットとなるのは日々の事業を通じて大量の食品残渣などが発生する食品加工会社や食品スーパーなどです。こうした事業者にとっては、設備の導入によって食品残渣の収集・運搬費用を削減できるだけでなく、売電収入も生じるため金銭的なメリットもあります。特にバイオマス由来のメタン発酵ガスの場合、固定価格買取制度(FIT)※による電力の買取価格は35円/kWh(20年間)で、太陽光発電に比べて買取価格の単価が高いというメリットもあります。
※固定価格買取制度は、再生可能エネルギーで発電した電気の普及を促すために、国が定める価格で一定期間、電気事業者が買い取ることを義務付けた制度です。
また発電機にバッテリーを搭載していることから災害などによる停電時でもエネルギー供給が可能なためBCP(事業継続計画)への対応にもつながります。そして何よりバイオガスは動植物に由来する資源(化石資源を除く)であり、燃焼などによりCO2を発生しても生物の成長過程で光合成により吸収し、大気中にCO2を増加させないことからカーボンニュートラルにつながり、企業からのバイオガス発電への関心はますます高まっています。野川は、「昨今のカーボンニュートラルが世の中に浸透してきたころから急激にご相談案件が増えてきている傾向があります」と機運の高まりを感じています。
エンジニアリングの経験とノウハウを生かして
メタン発酵のためのシステムは、食品系のバイオマスを破砕する破砕装置、水分量を調整する水分調整槽、メタン発酵槽、有害な硫化水素を取り除く脱硫塔、発電するガスコージェネレーション設備などで構成されます。また、発酵を終えた原料(消化液)は、消化液処理設備で浄化してから下水道に放流、余剰汚泥は「脱水汚泥」として廃棄物処理します。これにより、廃棄物の排出量は原料の食品残渣と比べて90%の削減を実現します。
同社では、エンジニアリングの経験とノウハウを生かし、国産設備を使ってシステムの構築にこぎつけました。「メタン発酵層に食品残渣と種菌を入れて3カ月ほどメタン菌を培養して増やすのですが、当初はその培養がうまくいかず大変でした」と当初の苦労を語る野川。2013年以降、メタン菌を作り出し発酵させる技術を磨く中で、すでに納入実績は食品会社、スーパーの総菜工場など6件に達しています。
大手スーパー様に納入、脱炭素への貢献が表彰対象に
最も直近の納入実績は、スーパー大手の株式会社ライフコーポレーション様の大阪市内の総菜工場向け案件です。「ライフコーポレーション様では2021年度の食品廃棄量が1万3千tに達し、その処理額は数億円にも上っており、店舗数の拡大により、さらに処理費用が増えることが予想されていました。バイオガス発電を利用することでカーボンニュートラルを実現することにもつながることから導入に踏み切られました」。
2022年3月に稼働した「ライフ天保山バイオガス発電設備」には日量10tを処理できるバイオガス発酵槽を2基、出力25kWのガス発電機を4台設置しました。大阪市内にある二つのプロセスセンター(生鮮食品の仕入・加工・配送を一括して行う拠点)から野菜系、総菜系の残渣が集められ、年間で4,380tの生ごみを処理し、年間発電量は一般家庭約160世帯分に相当する約70万kWhに達します。その規模は小売業では日本最大規模で、発電した電力は社内で利用されているほか、一部は固定価格買取制度(FIT)に基づいて売電しています。
また、設備投入に伴うCO2排出削減効果は年間5,672tに達します。ライフコーポレーション様は、環境への負荷低減のアクションプランとして「2030年に、売上当たり最終食品廃棄量の半減(2017年度比)と、CO2排出量を半減(2013年度比)させる」という目標を掲げており、その目標達成にも寄与しています。
※ご参考:ライフコーポレーション様 環境への負荷低減ページ
㈱ライフコーポレーション 総菜工場(大阪市内)2022年稼働(20t/d処理)
ライフコーポレーション様のこの取り組みは、農林水産省、消費者庁、環境省が連携したプロジェクトである「あふの環2030プロジェクト」が主催する「サステナアワード2022 伝えたい日本の“サステナブル”」の「脱炭素賞」を受賞しました。食品スーパーにおける資源循環の取り組みとして注目されています。同社の受賞を受けて野川は「大変名誉なことであり、バイオガスが世の中に認められたと感じました。ライフコーポレーション様が受賞されてから、当社へのお問い合わせも多く寄せられるようになりました」と喜びを語ります。
*ご参考:サステナアワード2022受賞関連ページ(消費者庁)
バイオガス事業普及による環境貢献効果について
野川に改めてバイオガス事業のメリットや付加価値について尋ねると、「お客様の最大のメリットは生ごみ処理費用(産業廃棄物処理費用)の削減です。年間数千万円から1億円ほどの産廃費用を要している会社も多く、食品業界の大きな悩みであることが分かりました。バイオガス導入により、CO2削減にも取り組め、企業価値も向上します。お客様にとってのサーキュラーエコノミー、そしてカーボンニュートラルに貢献できる設備としてバイオガス発電設備の普及をさらに図っていきたいです」と意気込みを語ります。
さらに、「当部署はカーボンニュートラル社会の実現とお客様へのお役立ちができる専門集団を目指しております。ここ数年でのカーボンニュートラルへの意識変革は目まぐるしいものがあり、世の中が環境配慮第一主義へ転換していることが日常的になってきている事を感じます。これからも当社が牽引していけるような取り組みをしていかなければならないと考えております」と社会貢献という面からも企業の責務に向き合い、自分を奮い立たせていました。
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プライム ライフ テクノロジーズグループは、カーボンニュートラル達成に向けて事業で使用する電力の再生可能エネルギー化による「RE100」を目指すなど、あらゆる可能性を探り、取り組みを進めていきます。
*プライム ライフ テクノロジーズグループ社員によるカーボンニュートラル宣言*
パナソニック建設エンジニアリング㈱ 環境特建事業部 副事業部長 野川剛史
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◎プライム ライフ テクノロジーズ株式会社
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